予想されていたとはいえ、新型コロナ感染第3波の襲来が現実化しつつあります。といって、特に成す術がある訳でもなく、これまで通りの予防策の徹底に努めるしかありません。しかし、もしもですよ、もしも、今朝の新聞報道のように、アメリカの1日の感染者数15万人なんてことがこの日本で起こったらどうなるのか、どうするのか、これまで通りでいいとはとても思えない。そこが問題です。
もう一つ気になるのがウイルスの変異。オランダではミンクが1700万匹殺処分されたとか。報道によれば、これは人のコロナウイルスがミンクに感染伝播、それが変異して人に再び感染伝播したとのこと。こうなれば切りがない。ウイルス→ワクチン→ウイルスの変異→ワクチンのまさにイタチごっこです。そういう時代に我々は生きている、そういうことなんでしょうか。ともかくこのコロナ大騒動、終息はまだまだずっと先のようです。
11月は奇数月のためテレ句会。兼題は『落葉』。コロナ禍とかアメリカ大統領選とか、俳句づくりに中々集中できない環境の中、9名の会員から45句の投句がありました。その出来栄えは以下ご覧いただくとして、まずは投句そのものに感謝。この月刊花火句会が廃刊にならぬよう、今後ともよろしくお願い申し上げます。
(2020年11月14日 月刊花火句会事務局)
そんな月刊花火句会、気がつけば今号で222号、よく続いたものです。ただ続ければいいという訳ではありませんが、継続は力なりの言葉もあります。222号、誰れも言ってくれないから、自分で、アッパレ! と言っておきます。ウ~ン、ぞろ目かぁ。今日は土曜日、メインレースの買い目は2番か2枠でいきます。結果が楽しみ。
一席
日の暮れて秋刀魚の似合ふ町となる/U太
二席
剪定の庭に落ち葉の山そびえ/一筋
三席
籾殻の枕に父の在りし日々/信史
今月の入点句(◎は特選句)
山口勝行
綿虫の雨を誘(いざな)ひゐる夕べ◎
音立てて落葉追ひ越しゆく落葉
中谷U太
日の暮れて秋刀魚の似合ふ町となる◎
着ぶくれて生きてゐることのうれしい◎◎
風の出て綿虫帰る術のなし
何もかも忘れちまつた林檎剥く
御酒一筋
剪定の庭に落ち葉の山そびえ◎
月面をつついてみたり夜半の宴◎
腐葉土となるは落ち葉の心意気
強風は落葉の山を均らしけり
梶原信史
籾殻の枕に父の在りし日々◎
咳払ひ響かせ会の始りぬ
泣きながらここに来たのだ濡落葉
来た道を誰とも会へぬ神無月
摺り足を銀杏落葉に残しけり
原藻六
いざ軍手買ひに勤労感謝の日
元師に深き敬礼冬の山
一羽来て寂しさ募る冬鷗
老いらくの恋の思案や懐手
河村仁誠
寄鍋や数多ひび入る時代物
本堂へ銀杏落葉を踏みしめて
わが名読む祝詞にハイと七五三
托鉢僧喜捨へ読む経息白し
高津按庵
無人屋に枯れあじさいの木曽路かな
みてくれの悪き蜜柑の甘さかな
掃くを止め路上アートのごと落葉◎
加藤小麦
落ちてこそ旅人となる落葉かな
雨予報聴くや急いで落葉掃く
落葉降る古き駅前喫茶店
仲野カモメ
大根の面取り上手と任せらる
疫病の不安抱きて冬に入る
山口勝行選評
〈特選〉
掃くを止め路上アートのごと落葉/按庵
廃(無人)屋に枯れあじさいの木曽路かな/按庵
ドライフラワーめく木曽路に哀愁深し。
みてくれの悪き蜜柑の甘さかな/按庵
外見だけでは何事も、その良し悪しが判らないものである。
本堂へ銀杏落葉を踏みしめて/仁誠
火伏せの銀杏大樹の山道を月参り。
托鉢僧喜捨へ読む経息白し/仁誠
吐く白い息に御報謝への礼意がこもる。
わが名読む祝詞にハイと七五三/仁誠
難語の祝詞の中に我が名が鮮明に聞こえ、思わず返事をする児がいとおしい。
雨予報聴くや急いで落葉掃く/小麦
雨後の落葉掃除は難儀なことよ。
落葉降る古き駅前喫茶店/小麦
曾ては賑った駅前に残る昭和のロマン。
強風は落葉の山を均らしけり/一筋
折角掃き集めたのに強風の意地悪。
疫病の不安抱きて冬に入る/カモメ
世界中の脅威年間に亘る、人間は社会を求めている。
からからと駆ける落葉を追ひかけり/カモメ
からからと駆ける落葉を追ふ児かな
※「児」として情景を明示する。
大根の面取り上手と任せらる/カモメ
大根の面取り上手(うま)しと任さるる
※中七の読ませ方と下五の活用法の表現。
沢庵や葉入りの土産伊勢路かな/カモメ
かぶ漬の葉入りの土産買ふ伊勢路
※切れ字「や」「かな」の使用を避けることと「沢庵」では季感が薄い。
着ぶくれて生きてゐることのうれしい/U太
着ぶくれて生きゐることのうれしかり
※中七から下五の句跨りをなくしリズムを整える。
剪定の庭に落ち葉の山そびえ/一筋
刈り込みの庭に落葉の山を成し
※「剪定」(春季)は果樹の生育や結実を均等にする為の刈り込みを言う。
〈雑評〉
俳句は短詩系文芸であり、一句にそれほど多くを詠み込む事が出来ません。叙事や叙景の一片を切り取り、そこで得た感動をいかに平明な措辞で余韻を生み出す表現が出来るかであります。理屈を説いたり、捻りを巻き戻して句柄を理解する事は私は好みません。
主観的叙情を前に出すより客観的叙景を詠みたいものです。
「咳払い」「月面」「籾殻」「沢庵」等は季題(季語)として扱い難いと思われます。
信史さんのご質問の「ホ句の秋」の件
お説の通り「秋」の傍題としてホトトギス新歳時記に掲載されています。元来は和歌の初句、頭句、連歌、俳諧の第一句、発句(ほっく、ほく)を言い、それが独立して一つの詩として詠まれるようになり、子規らによって俳句となったもので、発句を「ほく」と読ませるには敢えてカタカナの「ホ」で用いたとの説もある。また、「ホ句」が一人歩きをして「ホ句の旅」「ホ句の友」などの用い方も散見されるが、矢張り秋の傍題として「ホ句の秋」と用いたい。「ホ句の春」などは見られないが、更に詳しく調べてみたいと思っています。
句会を終えてひと言
(按庵)
入選
日の暮れて秋刀魚の似合う町となる/U太
元帥に深く敬礼冬の山/藻六
一羽来て寂しさ募る冬鴎/藻六
摺り足を銀杏落葉に残しけり/信史
特選句
着ぶくれて生きていることのうれしい/U太
コロナ禍のおり、何気ないちょっとユーモラスな生活に感謝の念が湧く!作者の感性に共感。散文的だが、うれしき
ではなく うれしい がいいです。
私の自信句?
本陣を偲ぶかのごと花梨の実
久々に妻籠を歩いた。復元された家屋の縁側にかりんの木があった。私にはそれが江戸時代の本陣を護っているような、懐かしんでるように見えた。
花梨の実は、秋の季語らしいが、11月1日の実風景なので仕方がない。
(仁誠)
入選
音立てて落葉追ひ越しゆく落葉/山口勝行
咳払い響かせ会の始まりぬ/信史
いざ軍手買ひに勤労感謝の日/藻六
腐葉土となるは落ち葉の心意気/一筋
特選
綿虫の雨を誘ひゐる夕べ/山口勝行
どんよりと曇った空にふわふわと浮かぶ綿虫、綿虫は雪虫とも言われ初雪の振る頃現れるそうです。
最近は割と暖かく今日の夕方には雨が降りそうな雰囲気の日に、あたかも綿虫が雨を連れてきているかに
思えるみたいだとちょっと視点を変えて詠んだ一句。
今月の自信句
わが名読む祝詞にハイと七五三
自信句というより孫の七五三に参加した嬉しかった気持ちを詠んだ句です。
神主さんが住所氏名を読み上げていきますが、自分の名前が読まれたとたん小さな声でハイと返事が出来ました。
わずか三歳されど三歳、子供の成長は本当に早いものです、いつまでもじいじ大好きでいて欲しいと思います。
(藻六)
◎を打ったのは「日の暮れて秋刀魚の似合ふ町となる/U太」。う~ん、いい句だなぁ。こういう句はわてのように、まず季語があり、そこから無理矢理一句捻り出す、それも急造りというのじゃなく、何かこう独特の美意識というか価値観というか、そんなものを感じさせます。でなければ「秋刀魚の似合ふ町」なんて言葉は浮かばない。夕暮れと秋刀魚と、それが似合ふ街への深い愛が感じられます。作者は誰かなぁ、分かりません。小麦かU太あたりか(事務局より、当たり、U太です)。すんません、自信句はありません。
(カモメ)
特選句 「籾殻の枕に父の在りし日々/信史」
11月は38年前父が死去した月である。
高野山奥の院に献燈をしてあるのだが先日参詣した。
この句で幼い頃、父の腕の力こぶを枕にしていたその感覚と枕の籾殻の音が甦った。
来年自分も父の享年の年を迎える。
自信句 なし
感想
コロナも大三波襲来と言われる。
実に悩ましいし、年を越してもしばらくは振り回されそうだ。
考えもしなかった行動制限や生活を強いられることになったが、自然は人間に何を問いかけているのだろうか。
その筋に一度伺ってみます。
(小麦)
●入選句
泣きながらここに来たのだ濡落葉/信史
来た道を誰とも会へぬ神無月/信史
大根の面取り上手と任せらる/カモメ
寄鍋や数多ひび入る時代物/仁誠
●特選句
月面をつついてみたり夜半の宴/一筋
夜半の宴といっても、こういうご時世ですから、大人数ではないと思われます。夫婦二人、あるいは少人数の静かな宴。
そんな静かな宴だからこそ、窓から見える月を見たりして。
しかし月面をつつくというのは、どういうことなんでしょうか。つついてみたくなった、のではなく、つついたのですね。
よっぽど長い洗濯竿かなんかで?
面白い句ですね。
●自信句
落葉道逆三角のマッチョマン
環状線の桜本町から瑞穂区役所あたりまで、街路樹が見事に紅葉していて、きれいです。
そんな落葉舞い散る中、スーツ姿なんだけど、ものすごくマッチョな男の人がゆっくりした歩調で歩いていました。
落葉とマッチョ・・・。映画のワンシーンというよりは、マンガの一コマのようで、そこはかとなく面白いのでした。
●感想
暖かい日々が続いていて、冬がなかなかやってきませんね。
四季がちゃんとあってこその俳句。カン狂っちゃって、なかなかピタッとくる俳句ができない今日この頃です。
(信史)
「五句選」
強風は落葉の山を均らしけり/一筋
大根の面取り上手と任せらる/カモメ
風の出て綿虫帰る術のなし/U太
いざ軍手買ひに勤労感謝の日/藻六
「特選句」
剪定の庭に落ち葉の山そびえ/一筋
ここ数カ月、健康保持のための散歩を日課とするようになった。そんなある日、掲句にある「落ち葉の山」の光景を目にした。一つは天王川公園内の楠、小楢などの広葉樹を寄せ集めた落ち葉の山であり、今一つは津島神社内の大銀杏のそれである。まさに落ち葉が山のようにそびえていたのである。寄せ集めた落ち葉を「山そびえ」と捉えた作者の観察力、表現力に敬服する。
「自信句」
籾殻の枕に父の在りし日々
昨年11月、「断捨離を済ませぬうちに冬構」を花火句会で詠んだものの、一年を経て尚、多くのものを捨てられずにいる。未練たらしい己に辟易すること度々である。先日押入れの奥から父愛用の枕を見つけ、暫し感傷的になってしまった。一度感傷的になるといよいよ在りし日々が思い出されてくる。匂いが残っているような枕を未だに捨てられずにいるのである。
(一筋)
●入選
日の暮れて秋刀魚の似合ふ町となる/U太
風の出て綿虫帰る術のなし/U太
何もかも忘れちまつた林檎剥く/U太
老いらくの恋の思案や懐手/藻六
●特選
着ぶくれて生きてゐることのうれしい/U太
生きていることは無論うれしいのだけど、着ぶくれてくれていることがもう一つうれしいやら楽しい
●今回の自信句
剪定の庭の落ち葉の山そびえ
伝言板
その①花火句会、これからの兼題
2020年
12月 年の市
2021年
1月(テレ句会) 初句会
2月 いぬふぐり
3月(テレ句会) 芹
4月 春眠
5月(テレ句会) 鯉幟
6月 あめんぼう
その② 12月句会兼忘年会のお知らせ!
恒例の句会兼忘年会。花火句会、今年一年の締めくくりです。会員の皆さんは奮ってご参加ください。
2020年12月12日(第二土曜日)
第1部:句会 名古屋市短歌会館 PM5:00~6:45
第2部:忘年会 会場未定 PM7:00~
〈特注〉
●句会の開始時間が5:00となっています。ご注意ください。
●予約の都合上、参加される方は12月5日までに小麦までご連絡ください。
●句会、忘年会、どちらか一方のみの参加も可です。
その③ 年末増刊号、原稿提出のお願い!
月刊花火句会12月増刊号は、例年通り、年末特集「2020年花火句会この一年」です。会員・投句者の皆さんは、
①この一年を振り返っての感想(500字以内)
②今年の自選句(10句以内~自註も可~)
を12月25日までに、事務局までメール(またはFAX)にてお送りください。
よろしくお願いいたします。
(事務局より)
句会の予定
【日時】 2020年12月12日(土) 17:00~
【会場】 名古屋市短歌会館
【兼題】 『年の市』を含む当季雑詠5句
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