2022題字


昨年は大変お世話になりありがとうございました。

本年もよろしくお願いいたします。

さて、今年最初のメール句会ですが、全員にほぼ平均に点が入るという、幸先の良いスタートとなりました。

皆さまの益々のご活躍を祈念しております。

 





一席 

一列に着ぶくれてをり屋台酒/小麦


 

二席 

ホース干す火の見櫓や日脚伸ぶ/仁誠

返信を待つ間の無聊炭をつぐ/藻六

まな板の音聞く寝床七日粥/信史




( )は点数 は特選句

 

山口勝行

鼓舞(こぶ)せんと寒紅を引く老女将(3)

寒詣甘味処に寄り道す(1)

春著とも知らずに燥(はしゃ)ぐ曾孫かな

初泣の嬰にひいじじ梃摺(てこず)れる

緞子(どんす)のカバー外しピアノの弾初す

 

加藤小麦

一列に着ぶくれてをり屋台酒(5)

柚子風呂の柚子の間に間にほっぺかな(2)

正月に見られてるよなお正月(2)

看板は降ろさぬと決め初鏡

寒紅の女芸人声澄みて

 

河村仁誠

ホース干す火の見櫓や日脚伸ぶ(3)

寒紅の番待つカフェの化粧室(1)

笹鳴や出女監視の関所跡(1)

雀ゐて猫の動かぬ小六月(1)

長調に鳴く夜は楽し虎落笛

 

原藻六

返信を待つ間の無聊炭をつぐ(3)

疾風来て落葉のロンド始まりぬ(1)

初空に号砲一発駅伝走(1)

ヒロインの寒紅を刷く最終日(1)

せわしなく歩いてこその年の暮れ

 

梶原信史

まな板の音聞く寝床七日粥(2)

幕間に寒紅さして二幕待つ(2)

托鉢の辻ゆく雨の寒念仏(1)

軟膏を指に塗り込む寒の入り(1)

初日の出遮る雲もなき岬

 

高津按庵

思い切り走り転んで凧揚がる(2)

山茶花の紅極まりて雪の中(1)

寒紅や出羽の地思い付ける人(1)

新聞の切り抜き捨てて年新た(1)

冬桜うっすら隠し大師堂

 

中谷U太
冬に病み電子レンジの目玉焼(3)

悔恨にいちばん近い雪の唄(1)

少年の背中に投げる雪の玉

ドーナツを食ひたきやうな雪だるま

山の端に忘れて来しや冬の月

 

御酒一筋

初詣願いを持って生きたいか(2)

ふぐ食って福が来るなら世話ないね(2)

極寒の微笑み返し千社札

大嚔ねじり鉢巻すっ飛んだ

寒紅や曇天模様の空のした

 

深井沓九郎

ひとり居に寒紅を引く暮らしなる(2)

着ぶくれが着ぶくれに寄り空くる席(1)

凍鶴の動くまで吾も動かざる(1)

カヌレなる菓子喰ふテラス冬ぬくし

築城の往時やいかに豪雪地




〈特選〉

托鉢の辻ゆく雨の寒念仏/信史

厳寒の雨にも怯まず念仏を唱えつつ寒行の托鉢僧の姿は尊い

 

〈入選〉

幕間に寒紅さして二幕待つ/信史

幕間に食した口元を整える。

まな板の音聞く寝床七日粥/信史

新春の慣わしの細り行くことを憂う。

軟膏を指に塗り込む寒の入り/信史

水仕事の厳しさ募る寒の入りに春待つこころ頻り。

ホース干す火の見櫓や日脚伸ぶ/仁誠

出初式に頑張った後の名残りの景。

笹鳴や出女監視の関所跡/仁誠

木々の枝をくぐり鳴く笹子に、くの一を連想する。

ヒロインの寒紅を刷く最終日/藻六

千秋楽に引く紅は格別の意気込み。

初空に号砲一発駅伝走/藻六

新年の風物詩、矢張り駅伝は冬が宜しいようで。

凍鶴の動くまで吾も動かざる/沓九郎

厳しい寒さの中、鶴と対峙する姿、「見る」から「観る」へは俳句の世界

看板は降ろさぬと決め初鏡/小麦

老舗を守る老女将の心意気。

 

〈添削句〉

ひとり居に寒紅を引く暮らしなる/沓九郎

ひとり居にも寒紅を引く暮しあり

雀ゐて猫の動かぬ小六月/仁誠

雀ゐて猫も動かず縁小春

冬桜うっすら隠し大師堂/按庵

大師堂をうっすら隠し冬桜

 

〈所感〉

 疫病間の失せぬままに年が立ちましたが、コロ・フル病(コロナとインフルエンザの併存化)の中での暮しとなるのであろうか?七度目の年男にとって甚だ心配なことである。

 早く吟行がしやすい日々の来る事が待たれてならない。





 

本年もよろしくお願いいたします。

今日1月15日は、新春早々良きことがありました。

「落葉掻大樹押し込む一袋」が中日俳壇高柳先生の第一席となりました。

リアル句会への出席がどれだけできるか分かりませんが今年も頑張ります。

仁誠5句選

疾風来て落葉のロンド始まりぬ/藻六

鼓舞せんと寒紅を引く老女将/山口勝行

一列に着ぶくれてをり屋台酒/小麦

軟膏を指に塗り込む寒の入り/信史

仁誠特選

返信を待つ間の無聊炭をつぐ/藻六

さて誰からの返信を待っていたのだろうか? 無聊とあるからには心配事があって気が晴れない悩み事でもあったのか。

作者のみならず早く返事が欲しい時ほど返信が遅くなるのが常である。その手持無沙汰を癒すのに火鉢の炭を継いだという、

炭を継ぐのはこれが結構むつかしい。そんなこんなで期待した返事は来たのだろうか、一時空想を巡らさせてくれた一句。

仁誠自信句

寒紅の番待つカフェの化粧室

 よく映画やテレビで目にする光景、紅を引くくらいなら小さなコンパクトでも良さそうなものだが何故か化粧室の大きな鏡を待っている女性。

自信句でもないがこれで真実を詠めているのか知りたかった一句。


●小麦入選句

ひとり居に寒紅を引く暮らしなる/沓九郎

着ぶくれが着ぶくれに寄り空くる席/沓九郎

幕間に寒紅さして二幕待つ/信史

冬に病み電子レンジの目玉焼/U太

●小麦特選句

ホース干す火の見櫓や日脚伸ぶ/仁誠

●特選の理由

日も長くなって、今日は天気も良いので、ホース干し日和。どうか、このホースを使わない日が続きますように。祈りを込めてホースを干す消防団の人たち・・・見たことのない光景ですが、容易にイメージできますね。江戸時代の火消し衆の精神も感じられる句ですね。

●自信句

柚子風呂の柚子の間に間にほっぺかな

銭湯にぷかぷか浮かぶ柚子の合間に、小さな姉妹のほっぺが赤く上気して浮かんでいます。かわいいお風呂屋さんの景を詠んでみました。

●感想

寒紅という季語、今回初めて知りました。

かっこいいような、色っぽいような・・・。

なので、自分には縁遠い言葉な気もしますが、臆せず、使っていきたいと思った次第です。

どうぞ今年もよろしくお願いいたします。


 

選句

ひとり居に寒紅を引く暮らしなる/沓九郎

鼓舞せんと寒紅を引く老女将/山口勝行

一列に着ぶくれてをり屋台酒/小麦

托鉢の辻ゆく雨の寒念仏/信史

寒紅というのは分かりませんが、要するにここぞという勝負処で引くものらしい。あくまでも自分自身のため。ひとり居だっていいんですよね。

特選の◎を打ったのは、

ふぐ食って福が来るなら世話ないね/一筋

それ言っちゃおしまいよと思いつつも面白さについ、特選にしました。招福といわれるものはこの世にたくさんあるけど、実際に福に出会ったことはない。それでもついつい手が出てしまう、不思議である。ま、騙されやすいってことか。

自信句はなし、これではイケません。来月こそは文句なしの一句を提出したい。

花火句会のみなさん、本年もよろしくお願い申し上げます。


 

並選

寒紅の番待つカフェの化粧室/仁誠

雀ゐて猫の動かぬ小六月/仁誠

悔恨にいちばん近い雪の唄/U太

正月に見られてるよなお正月/小麦

特選

思い切り走り転んで凧揚がる/按庵

たいがい転んだら凧は揚がらんやろ。これは、たとえ今はつまずきころんでもいつかはきっとええことあるよねぇという暗喩!?

自信句

極寒の微笑み返し千社札

以上です。

本年もよろしくおねがいします。


 

<入選>

鼓舞せんと寒紅を引く老女将/山口勝行

寒詣甘味処に寄り道す/山口勝行

山茶花の紅極まりて雪の中/按庵

初空に号砲一発駅伝走/藻六

特選

一列に着ぶくれてをり屋台酒/小麦

<特選の理由>

冬の屋台はちょっときつい。情景が目に浮かぶ。なんか微笑ましい。

<自信句と背景>

カヌレなる菓子喰ふテラス冬ぬくし

先日ちょっと前に流行ったカヌレを多分初めて食べました。

これまで見た目がイマイチと思っていたのですが、何が何がうまかった。

あの食感が最高。

<感想>

もちろんまだ寒いのですが、春が少しずつ近づいてくる

今くらいの季節が好きです。

コロナも減少傾向になってきたし、来月はリアル句会できそうですね。

みなさんお元気でお過ごしください。


 

按庵選

幕間に寒紅さして二幕待つ/信史

笹鳴や出女監視の関所跡/仁誠

柚子風呂の柚子の間に間にほっぺかな/小麦

凍鶴の動くまで吾も動かざる/沓九郎

特選

まな板の音聞く寝床七日粥/信史

年新た、決意、ケジメの年にしようと思ったが、やはりだらだら寝正月!という私の姿と重なり痛く共感です。

自信句?

思い切り走り転んで凧揚がる

大晦日の空いている天王川公園での五才の孫の姿です。あえて口語にしました。

山茶花の紅極まりて雪の中

事実なので、あえて、季重なりにしました。

寒紅や出羽の地思い付ける人

昔読んだ事のある、水上勉の名作、紅花物語を思い出しました。

その他、春着(春著)の句、新年の季語と知り勉強になりました。


 

「五句選」

ヒロインの寒紅を刷く最終日/藻六

返信を待つ間の無聊炭をつぐ/藻六

新聞の切り抜き捨てて年新た/按庵

ホース干す火の見櫓や日脚伸ぶ/仁誠

「特選句」

冬に病み電子レンジの目玉焼/U太

我が身が体験した句に出会うと忽ち「正にその通り」と独り居の私には大いに評価したくなる。体調を崩したり、患ったりすれば動きは鈍く、ましてや台所に立つなど億劫である。とは言え栄養を摂取しなければとレンジの力を頼りに卵を手にするのである。掲句は正に過日の私である。

「自信句」

托鉢の辻ゆく雨の寒念仏

私の住まいする津島市に宝泉寺という浄土宗の古刹がある。毎年寒に入ると市内を一件毎にお経を唱えながら、寒中托鉢行をされる僧侶がみえるが、今年はそのお姿を見ることがない。どうやら体調を崩され一時中断のようである。何十年も続けられてきた冬の風物詩とも言える行、その托鉢僧に敬意を払いつつ作句した。


 

【選句結果】

正月に見られてるよなお正月/小麦

一列に着ぶくれてをり屋台酒/小麦

柚子風呂の柚子の間に間にほつぺかな/小麦

寒紅や出羽の地思い付ける人/按庵

特選

初詣願いを持つて生きたいか/一筋

【特選の理由】

いいえ、願いなんてもう、この歳になって、とてもとても。そんなものは、必要ありません!後期高齢者にいろいろと考えさせてくれる奥の深い後期高齢者俳句。

【自信句】

少年の背中に投げる雪の玉

少女には好きな男の子がいるんですね。でも、好きなんてとても言えないので、少年が向こうを向いている隙に、その背中に雪玉を投げるんです。でも、それがちっとも当たらなくて、少女は涙目になっているんです。




増補版

前回の句集にその後の句を追加した増補版です。
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2月はメール句会となりました。奮ってご投句ください。

【締切】 2023年2月11日(土)

【兼題】 『冴返る』を含む当季雑詠5句

haiku_hanabikukai@yahoo.co.jp