花火句会①

新型コロナ感染再拡大中での句会。当然、今回もテレ句会にするという選択肢もありました。しかし決行! 理由は、前回の顔を会わせた句会から半年も経過したこと。それに、一説に、秋以降、より大きな第3波(?)が襲来するという予測があり、そうなったら次の10月句会、12月句会兼忘年会も危ない、そう判断したからです。もしそうなれば一年間のブランク、さすがにそれはきつい。ここいらで一度集っておかねばという判断でした。よって決行! その代わり出来る限りの対策はとろうと。

それでまず会場を変更しました。『名古屋市短歌会館』。ここならこれまでの金山より広い。ソーシャルディスタンス、それも充分にとれます。事実その会館では十八人用の部屋が9人使用になっていました。「9人ですか、ひょっとして10人になったら、一名くらいはいいですよね」と聞いたら「ダメです、おひとり様には帰っていただきます」。それに入館時に検温、これもオーバーしていたら「お帰り願います」。あと利用者には全員連絡先の提出を義務化。もし感染者が出たら全員にPCR検査をするためだそうです。勿論アルコールは厳禁。給水所、トイレの使用にも気をつけるようにとのことでした。実に面倒臭い。でもコロナ相手では文句のいい様もない。仕方ありません。

 

そこで気になるのは実際の参加者。こんな状況で何人が参加してくれるのか、皆目見当がつきません。津島の会員などは「今の名古屋は恐い、よって欠席」。もし参加者が三、四人どまりなら句会はさっと15分ほどで済ませ、あとは近くの飲み屋で二、三杯さっと飲んでさっと解散、そんなシナリオです。が本心としては最低六、七名は欲しいと思っていました。それなら何とか恰好が付きます。

 

当日午後5時30分、まず藻六が来ました。キョロキョロとあたりを見回し中へ。続いて40分頃按庵と先生、その次が沓九郎、50分過ぎに小麦と一筋、以上六名、これでジエンドでした。しかしこの状況下では上々といえます。今回の句会、最大の目的は会員の生存確認。少なくともこの六人はたしかに生きていました。よかった、よかった!

投句者はU太、仁誠、カモメ、信史の四名。この人たち、目視はできませんでしたが、成済ましがないとすれば生きているんでありませう。その他では二、三名が消息不明、ま、コロナに負けず生きていると信じたい。

 

句会後、今日は懇親会無しと決めていましたが、やっぱり顔を合わせると、少しは、という気になりました。ゆったりとした店で軽~く一杯ということで。そこで会場近くの店を三,四店あたってみたのですが、どこもガラガラ。う~ん、これが続いたら閉店する居酒屋が続出するだろうなと、改めて思い知らされました。コロナ終息まで何とか耐えていただきたいものです。

 

 

一席 

ひと駅を入道雲に押されゆく/小麦

 

二席 

お参りのぽつりぽつりと余花の寺/藻六

 

三席 

点滴に古希をあずけて秋を待つ/信史

 

 

今回の入点句(は特選句)

 

山口勝行

眼帯の取れたる家路星涼し

払暁の白穢(けが)れなき花木槿

 

加藤小麦

ほろ酔ひて手花火の玉すぐ落とす

東洋に西洋混ざるムクゲかな

雲白く影愛らしき花木槿

ひと駅を入道雲に押されゆく

朝曇りどっちつかずの水曜日

 

原藻六

白木槿眺む古家古畳

お参りのぽつりぽつりと余花の寺

 

梶原信史

点滴に古希をあずけて秋を待つ

おつとめの鉦に合わせて蝉時雨

 

御酒一筋

なにもかも忘れてしまう蝉の声

花火一瞬空に対峙してから開く


河村仁誠

断捨離に出でし賞状青蜜柑

秋めきて新書の山の崩れかけ

日帰りの旅の留守居の白木槿

 

高津按庵

夏休みシロクマ居ない動物舎

うだる夏土いじりする年小さん

駐車場廃ガスに耐へ木槿あり

 

中谷U太

めまとひを追ふ手扇の速きこと

百日草一本添へる母の墓

 

深井沓九郎

飼い猫の出口隣家の木槿垣

独り言つ母念入りに墓洗ふ

幾人も好きな人逝き孟蘭盆会

 

仲野カモメ

災ひに愛でる暇なし花木槿

 

山口勝行選評

〈最優秀句〉

点滴に古希をあずけて秋を待つ/信史

 

〈入点句〉

幾人も好きな人逝き孟蘭盆会/沓九郎

飼い猫の出口隣家の木槿垣/沓九郎

おつとめの鉦に合わせて蝉時雨/信史

駐車場廃ガスに耐へ木槿あり/按庵

「木槿あり」を「木槿咲く」としました。

うだる夏土いじりする年小さん/按庵

めまとひを追ふ手扇の速きこと/U太

「めまとひ」は「目纏い」と書き、目の前を飛び交う小虫のことです。

百日草一本添へる母の墓/U太

「一本添へる」を「一本加へ」としました。

秋めきて新書の山の崩れかけ/仁誠

日帰りの旅の留守居の白木槿/仁誠

災ひに愛でる暇なし花木槿/カモメ

 

〈添削句〉

夏風邪の老父所望の卵酒/藻六

「夏風邪(夏)」「卵酒(冬)」の季重なりです。

花火一瞬空に対峙してから開く/一筋

「花火一瞬闇に吸ひ込まれて開く」としました。

 

 

句会を終えてひと言

 

少し前までは、何事もまずコロナが収まってからと考えていましたが、今はコロナはコロナだろう、気をつけながらやっていくしかないと思うようになりました。みなさん、やることはやっていきましょう。

特選にしたのは、信史の「点滴に古希をあずけて秋を待つ」。この作者、いよいよ古希となり、流れに逆らわない生き方を選んだのだろう。あずけて待つの心情、何となく理解できます。その生き方、正解!! 春から4人、身近な人が亡くなりました。皆好きな人、寂しくなりました。年をとるというのはこういうことかと思いました。「幾人も好きな人逝き孟蘭盆会」、この句を今はなき友人に捧げます。 (沓九郎)

 

花火一瞬空に対峙してから開く

句の背景

 自信句というわけではありませんが、この句を作った背景について少し書いておきたいと思いました。実はこの句には元がありまして、その元となった句というのが、いつも勝行先生から頒布していただく現代俳句協会の俳句カレンダー7.8月に掲載されていたもの。曰く「花火いちど空にのまれてから開く/進藤剛至」。

 わたくし、この句の「のまれてから」というところに引っかかりました。空にのまれる。この場合、のまれるのは自分であり、のむほうは空。空とはすなわち俳句というドグマ (ドグマ/dogma.  宗教・宗派における教義のこと。 広義としては、上項から派生して「独断・偏見的な説や意見」、「教条主義」を指すようになった/ウィキペディア)ではないのでしょうか。

 俳句というドグマについては、さらに説明を要すると思われますが、長くかつ複雑になりそうなので、ここではあえて教条主義的な傾向とでも捉えて話を進めていきます。

 さて、空にのまれるのではなく、自らをひとりの表現者として生きるわたくしは、ここで空に対峙することを選びました。つまりこれまでの慣習や至らない傾向、信じがたい世襲制、あるいは教条主義的な事物の捉え方などに対して、決然と対峙することを選んだわけであります。既成の価値観や同調の圧力、多様性の喪失や相互信頼の軽視などに屈することなく、空に対峙して生きる。たとえそれが一瞬の輝きであったとしても

 特選にしたのは小麦の「雲白く影愛らしき花木槿」。“入道雲”の句と“花木槿”の句、どちらを選ぶか迷ったが、この句の素直さに、特選-ん! (一筋)

 

心にひびいたのは藻六の「お参りのぽつりぽつりと余花の寺」。ぽつりぽつりは参拝者とも余花とも思えるが、どっちにしてもあまり墓参りのない寂れた寺とみえる。それだけによけい心に響きます。誰れも選んでくれなかったが、わっしゃの「炎天下原色眩し電車群」、この句は久留米での次男の結婚式の時の一句。このコロナ禍、親兄弟だけ、会食なし。会場に向かう途中、待機線にいたJR九州の電車、その原色(黄、青、黒)が美しかった。コロナのせいでちょっと出席を迷ったが、久しぶりに元気そうなメンバーに会うことができ、参加してよかった。これからも折にふれ顔を見たいものだ。 (按庵)

 

初めての短歌会館。広々とした会場に6名。ゆったりできてよかった。ただ椅子が大きすぎて、座り心地は今ひとつ。だが、しかし、一位に選ばれ、やったぁ~、あんがと~。うん、この椅子も悪くない。特選は按庵の「夏休みシロクマ居ない動物舎」。小さなボクちゃん、お目当てはシロクマくん。しかし暑すぎて表に出てこない。それでもシロクマ舎から離れようとしない。暑いから早く行くようーと、お母さんに急かされてもダメ。昔、息子がイグアナのコーナーで30分動かず、往生したことを思い出しました。線香花火の中でも、あの、松のカタチにパチパチと光って、最後にジーッと玉になって落ちるやつ、あれが一番好きです。しかし、あれを酔っぱらったお父さんがやると、すぐに玉が落ちてしまう。動かずにがまんしなきゃイカンのです。何事もがまんが大事なんでありんす。 
(小麦)

 

夏風邪。クスリなんぞいらん。卵酒をカーッと一気に飲んでそのまんまバタッと寝りゃ、真夜中に汗だくになり、朝には風邪も治ってるという、老父(ワテのこと)の生活の知恵ですな。「夏風邪の老父所望の卵酒」。季重なりは合点承知之助。この秀句が0点? そりゃないぜよ。ともかくみなさん、クスリに頼りすぎは良くありません、気をつけましょう。ところで酒といえば、今回投句だった仁誠、5句の内2句に「今年酒」「檜桝」「迎へ酒」の文字が。わての認識では当人は酒を飲まないはず。ということは頭の中で作ったということか。わての「卵酒」とは大違い。仁誠には句は頭の中で作るなと忠告したい。エ? モロクには言われたくない、あ、そ。◎を打ったのは一筋の「花火一瞬空に対峙してから開く」、この破調が面白かった。 (藻六)

 

伝言板

 

①花火句会、これからの兼題

9月・・・秋刀魚

10月・・団栗

11月・・落葉

12月・・年の市

 

②原藻六 第一俳論集『俳句のある風景』

俳句のある風景




   (内容)
   エッセイ
   インタビュー
   自選句



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③2句提出のお願い!

今年も名古屋市緑区の区民文芸展に出品します。

つきましては、花火句会会員および投句者は一人2句ずつの提出をお願いいたします。

9月12日までに、投句に添えてお送りください。

お手数をおかけしますがよろしくお願い致します。

 

 

句会の予定


2020年9月句会は奇数月のためテレ句会です。奮って投句してください。

【〆切】 2020年9月12日

【兼題】 『秋刀魚』を含む当季雑詠5句

【宛先】 haiku_hanabikukai@yahoo.co.jp 


特注!

通常の5句の他に区民文芸展の2句、あわせて7句を、事務局までお送りください。