月刊花火句会

花火句会は2004年夏、花火シーズンの真っ只中で発足しました。 集まったのは、当時40代から60代の10名余り、全員がそれまで俳句なんぞ作ったことがないというど素人ばかり、それでも俳人山口勝行氏の指導を得て、月1回の句会、年1~2回の吟行を行っております。 句会は、参加者が事前に用意した兼題1句を含む当季雑詠5句を提出、全員で選句します。 選句された句は、入点句として、次回の会報で発表されます。 会員による選句とは別に、山口勝行氏選の優秀句(1、2句)は、山口賞となります。 句会後には、自由参加で懇親会もあり、当日の会員の句を褒めたりけなしたり、まさに議論百出です。

2019年09月




花火句会15周年記念
『再録! 初期句会』  その③
懐かしのあの句、あの頃こんな句が詠まれていた
 
 
第3回句会
●平成16年9月19日
●こどもNPOピンポンハウス
●出席者9名


 


山口勝行選12句
 



葉を消して手品師のごと曼珠沙華/小麦

里山を静かに燃やし曼珠沙華/小麦

取り付いて覆い隠せし藪からし/小麦

幼子の手折らば熱し曼珠沙華/一筋

自爆せしテロリストをも洗ふ月/一筋

車降りしばしながむる望の月/一筋

月明や艫(とも)に俯く海女狐影/藻六

月明かり仁王の憤怒際立ちぬ/藻六

千鳥足止めし頭上に月冴ゆる/藻六

満月をおちょこに浮かべ飲み干しぬ/参茶

忘れいし母の命日彼岸花/按庵

花の名を覚えたくなる秋日和/みほ

 



山口勝行添削6句



(原句)門灯は無駄使いなり満月や

(添削)門灯を消して満月仰ぎけり

 

(原句)破れ屋に荒畑月光容赦なく

(添削)廃屋の庭に月光あまねかり

 

(原句)名月や見えて隠れて九十九折

(添削)名月の見え隠れして九十九折

 

(原句)もやもやを洗い流して月と酒

(添削)憂きことを洗い流して月今宵

 

(原句)月見酒夜気に落ちつき朝を待つ

(添削)月見酒静かに酌みて朝を待ち

 

(原句)踊り狂い何うれしかろう野分の木

(添削)街路樹に狼藉振りを見し野分

 


追加5句
 


月を見る盃を見る我を見る/タタ

闇も鵜も鵜匠も黒き小瀬鵜飼/沓九郎

いつからかもちつきうさぎの影追えず/みほ

見てる月何も言わない丸でいい/参茶

どこにいるのとたずねる心に秋の風/按庵

 




月刊花火句会 これからの刊行予定 



★10月20日:2019年10月号(211号)

 『10月定例句会(1012日)報告』

 



句会の予定
 


【日時】 2019年10月12日(土) 18:00~

【会場】 金山アカデミーセンター4F

【兼題】 『新松子(しんちぢり)』を含む当季雑詠5句

(注)新松子(しんちぢり)とはその年に新しくできたまつかさのことで、まだ青くて固い。秋の季語である。




 


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【日時】 2019年9月7日(土)18:00~

【会場】 金山アカデミーセンター4F

【兼題】 『コスモス』を含む当季雑詠5句

 

今日は小麦、一筋、按庵の常連組が投句に回り(小麦は落語会、一筋はライブ、按庵は法事)、句会が成立するのか危ぶまれましたが、夏子、三枝が顔を見せ、結果出席者8名、投句者4名となかなかに盛会でした。よかった。トップ争い、激戦が予想されたが、沓九郎、仁誠が早々にして飛び出し、他は関係なし。やっぱりレースというのは団子状態というか、せめて三つ巴あたりが面白い。出でよダークホース、といったところでしょうか。句会後の居酒屋、これがひどかった。最初にサラダがでて、それからはさっぱり。注文した品が一向に来ない。この場面、他の店で何回かあり、しびれを切らしたカモメが催促したけど効果なし。日本の少子高齢化、人口減社会、働き手不足、これからどうなるのか、さっぱり分かりません。

 

 

一席 

長生きを愚痴りたる母秋の夜/沓九郎

坊守の洗ふ花なき無縁墓/仁誠

 


三席

紅生姜刻む記憶の香り立つ/信史

鰯雲青春18きっぷ買ふ/小麦

 


 

今月の入点句(は特選句。( )内の数字は得点。なお獲得点数順に掲載しています)

 

深井沓九郎

長生きを愚痴りたる母秋の夜(5)

十坪ほど都会の空き地秋桜(5)

 

河村仁誠

かなかなや骨格標本夕日受く(1)

長き夜を鍋ごと寝かすカレーかな(1)

露草を挟み美濃和紙青みたる(3)

コスモスに入りて微えむ車椅子(2)

坊守の洗ふ花なき無縁墓(3)

 

山口勝行

風止んでコスモスの色定まりぬ(4)

昼の虫鳴いて寂しき芭蕉堂(1)

藩候の御狩場跡や虫集く(1)

 

梶原信史

紅生姜刻む記憶の香り立つ(2)

法名に語り尽くせぬ墓参かな(1)

朝靄の重さに撓(たわ)む秋桜(2)

 

加藤小麦

コスモスを活ければやんちゃ気質なり(1)

鰯雲青春18きっぷ買ふ(2)

虫の音や終の住処となりにけり(1)

コスモスや墓石に愛てふ文字のあり(1)

 

上田三枝

交差点信号待ちの赤とんぼ(2)

旅の宿友と語らう秋の夜(1)

終電を送り鈴虫鳴き始め(1)

 

山田夏子

滑走路夕日膨らむ秋の空(1)

秋夜長隣家の灯りついたまま(1)

半島のコスモス揺れて地終わる(2)

 

原藻六

結論のまず先にでる残暑かな(1)

ひれ伏して風やり過ごす秋桜(1)

格子戸の奥で舞う母風の盆(2)

 

高津按庵

線路越しコスモスの揺れ陣屋跡(1)

ぐらぐらの歯に指あてる残暑かな(2)

太鼓鳴り駆け回る子の地蔵盆(1)

 

仲野カモメ

秋のこゑ買ひし四色ボールペン(3)

 

中谷U太

親ひとり子ひとり秋の野の広さ(3)



 

 

山口勝行選評


長生きを愚痴りたる母秋の夜/沓九郎


 

人それぞれ、老いてますます盛ん、長寿自慢の人もいれば、もう充分に生きた、早く死にたいと愚痴る人もいる。この句の母は愚痴る方、作者はどう対応するのか、ちょっと聞いてみたい気もします。今月の最優秀句としました。

 

小麦の「鰯雲青春18きっぷ買ふ」ですが、18の表記を十八としたい。俳句の場合はアラビア数字でなく漢数字を使ってください。

 

仁誠の「坊守の洗ふ花なき無縁墓」は、花なきを、供花(くげ)なきと添削しました。

 

夏子の「秋夜長隣家の灯りついたまま」は、「秋夜長隣りの灯りつきしまま」に。この方が、より俳句らしくなります。

 


 句会を終えてひと言



このところの台風にはまいります。毎年のこととはいえ、海運の仕事は商売あがったり。警戒体制で夜も起きてるんです(昼、仮眠するけどね)。自然にはかないません。コスモス、揺れるのを詠んだ句が多かった。この句もそう。先生の「風止んでコスモスの色定まりぬ」。カメラのシャッターチャンスのごとく、しかと見ているのがいい。私の自信句も「そよ風に揺れて応へし秋桜」、やっぱり揺れてますね、コスモスは。茎が細いんで風が吹けばゆらゆらと「おっ、風さん、吹いてきたね、そんじゃオイラも揺れるか」って感じ。空の青さが似合うコスモス、実に清々しい。 
(カモメ)

 

今日の兼題のコスモス、あれこれ考えていたら私の好きな宮本輝さんの小説「ここに地終わり海始まる」のタイトルが浮かびました。小説の中身とは全く関係ないのですが、何故かコスモスが揺れている情景と本のタイトルが重なったのです。そこで「半島のコスモス揺れて地終わる」。こうして詠んでみると、私のお気に入りの句になりそう。特選句にしたのは沓九郎の「十坪ほど都会の空き地秋桜」。コスモスと聞くとどうしても大草原など広い自然の中に咲いている姿を想像しがちですが、この句は大都会の中。10坪の空き地にコスモスがよりそい、支え合うように咲いている。そんな健気な姿を上手く表現していて、これは自分には詠めないなぁと選ばせていただきました。 (夏子)

 

特選にはU太の親ひとり子ひとり秋の野の広さ」をダントツで選んだ。二人だけの家族。この二人は年老いた親とその娘か、それともシングルマザーと子供か、いろいろ想像が広がります。二人だけというその心細さ、それでもしっかり生きていかねばという決意など、圧倒的に広い秋の野の下で、さまざまな思いが交差します。秀句だと思う。先日のこと、布団に入って俳句を考えていたら、これがまた次々と思いついちゃって。それでスマホにメモって、朝見返したらなんじゃこれ、しょうもないものばかり。私の「駄句ばかり産み落としたる夜の長さ」ですが、ホント情けない。今頃で、遅きに失するですが、今日のドラゴンズは5連勝。やっぱ若い選手が頑張らなきゃねぇ。「新涼にドラの若手の躍動す」、来シーズンが楽しみ。 (沓九郎)

 

わがイチオシは「『頭が高いっ』台風様のお通りだ」だったんですが、当然ながら得点ゼロ、見事に撃沈いたしました。俳句は川柳じゃない? ですよねぇ。今日は午後2時に歯医者で抜歯。痛み止めを飲んで句会にやってまいりました。そこへ按庵のぐらぐらの歯に指あてる残暑かな」。思わず◎を打ちやした。ホント、後期高齢者にとっては歯痛と残暑はつらいんです。それにしても按庵はワテの歯医者の件は知らないはず。なのにこの句。二人は見えない紅い糸で結ばれてんですかね。そんなのゴメンだ? わてだってゴメンだっ! もう一つのつらさは句会後の居酒屋。「今日一日は飲酒はダメ」と言われたんで、水飲んで、あとはヤケ食いするかと思ったけど、料理が一向に出てこない。それでも耐えて絶えて酒は一滴も飲みませんでした。こんな自分を褒めてやりたい (藻六)

 

今夏初めて相撲を見る機会があった。旧友3人と升席での観戦。まずは関取の体がぶつかりあう迫力充分のナマ音に驚かされた。もう一つ驚いたのが、「相撲女子」というのか、一団の女性客。一糸乱れずの見事な声援。そこで「歓声の映える升席相撲女子」と詠んでみたが、これでは季語がない。と思ったら、仁誠から、相撲は秋の季語やねんの教示。セーフ! よかった、よかった。もう花は枯れているな、とり代えようとお盆過ぎに檀家寺に出かけたら、遠くで御庫裏が何やら作業中。よくよく見れば無縁墓の掃除をしていた。仁誠の「坊守の洗ふ花なき無縁墓」を特選にした。 (信史)

 

ボールペンはふつう黒色を買う。サラリーマン時代でも2色ボールペンはまず買わなかった。赤は赤のボールペンだ。しかしこの作者は4色ボールペンを買った。詩や俳句を緑で書くのか。それとも秋の景色を四色でスケッチするのか。カモメの「秋のこゑ買ひし四色ボールペン」を選んだ。四色ボールペンは、持っているだけでも、十分心が充たされるのだろう。趣味で使うんで高級美濃和紙を先生から格安でわけてもらった。残った和紙の切れ端に、本のしおりにしようと露草を挟んでおいた。先日それを開くと、和紙に少しにじんだ露草の青が移り、とても美しかった。今日の自信句、「露草を挟み美濃和紙青みたる」である。 (仁誠)

 

娘としては長生きして欲しいけど、母としてはそんなに長生きを望んでいないのかなと思う時がある。複雑! そこらあたりの気持をうまく表現している沓九郎の「長生きを愚痴りたる母秋の夜」が特選。この句の季語「秋の夜」は長くて、虫の音、雨の音にもしみじみとした情感を誘われます。自信句は「交差点信号待ちの赤とんぼ」。これ、実話です。車の多い道路で信号待ちをしていたら赤とんぼが何匹か飛んでいた。それで、人が動き始めたら一緒に飛んで道路を渡っていました。今日は4得点、点が入るとやっぱり嬉しい。次回も頑張ろうと元気がでます。 (三枝)

 


 月刊花火句会 これからの刊行予定



9月30日:2019年9月増刊号(210号)

  花火句会15周年記念

  『再録! 初期句会』  その③

 

10月20日:2019年10月号(211号)

  『10月定例句会(10月12日)報告』

 


句会の予定


【日時】 2019年10月12日(土) 18:00~

【会場】 金山アカデミーセンター4F

【兼題】 『新松子(しんちぢり)』を含む当季雑詠5句

(注)新松子(しんちぢり)とはその年に新しくできたまつかさのことで、まだ青くて固い。秋の季語である。


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