月刊花火句会

花火句会は2004年夏、花火シーズンの真っ只中で発足しました。 集まったのは、当時40代から60代の10名余り、全員がそれまで俳句なんぞ作ったことがないというど素人ばかり、それでも俳人山口勝行氏の指導を得て、月1回の句会、年1~2回の吟行を行っております。 句会は、参加者が事前に用意した兼題1句を含む当季雑詠5句を提出、全員で選句します。 選句された句は、入点句として、次回の会報で発表されます。 会員による選句とは別に、山口勝行氏選の優秀句(1、2句)は、山口賞となります。 句会後には、自由参加で懇親会もあり、当日の会員の句を褒めたりけなしたり、まさに議論百出です。

2018年12月



2018花火句会 兼題・一席・最優秀句(山口勝行選)一覧

 
1月:左義長

一席
介護士の迎えの声す三日かな/藻六
4Bの筆圧強き初日記/信史

最優秀句
通知表持ちて幼の御慶かな/仁誠


2月:蕗の薹

一席
沢音の遠のく魚籠に蕗の薹/信史
赤々と余力残して椿落つ/沓九郎

最優秀句
湖(うみ)抱(いだ)く音無き村や春を待つ/沓九郎


3月:鳥帰る

一席
瀬に笑ひ渕に微笑む春の水/仁誠

最優秀句
瀬に笑ひ渕に微笑む春の水/仁誠


4月:ぶらんこ

一席
廃線の橋脚跡に春嵐/按庵

最優秀句
半円の弧に天地ある半仙戯/藻六


5月:母の日

一席
髪切って君の福耳風五月/小麦

最優秀句
ふん一つ落とし旅立つ燕の子/仁誠


6月:出水

一席
美少女の腕(かいな)逞し夏衣/藻六

最優秀句
出水川散歩の子犬腰引けり/沓九郎


7月:金魚

一席
間延び声絶えて久しき金魚売り/藻六

最優秀句
粛々と屍(しかばね)運ぶ蟻の列/藻六


8月:星月夜
朝顔に水やってから引きこもる/小麦

最優秀句
子の横に並び寝転ぶ星月夜/仁誠


9月:曼珠沙華

一席
チケットは敢えて鈍行秋日和/夏子

最優秀句
チケットは敢えて鈍行秋日和/夏子


10月:石榴

一席
学らんをきめる少女や体育祭/信史

最優秀句
荒縄を腰に稲架組む棚田かな/仁誠


11月:石蕗

一席
洋皿にラフランス置き印象派/小麦

最優秀句
喧噪を離れ落葉の中にあり/信史


12月:日向ぼこ

一席
御嶽の遥か見ゆる日蒲団干す/沓九郎

最優秀句
癌を得し友如何に聴く除夜の鐘/沓九郎
 
 
2018年月刊花火句会増刊号一覧

 
 1月 自選100句シリーズ その⑨深井沓九郎
 2月 自選100句シリーズ その⑩御酒一筋
 3月 自選100句シリーズ その⑪中谷U太
 4月 自選100句シリーズ その⑫山田夏子
 5月 自選100句シリーズ その⑬梶原信史
 6月 回覧板シリーズ その① 当番 原藻六
 7月 回覧板シリーズ その② 当番 加藤小麦
 8月 回覧板シリーズ その③ 当番 河村仁誠
 9月 回覧板シリーズ その④ 当番 深井沓九郎
10月 回覧板シリーズ その⑤ 当番 高津按庵
11月 回覧板シリーズ その⑥ 当番 中谷U太
12月 年末特集・2018年花火句会この一年


月刊花火句会 これからの刊行予定 
 

1月12日:2019年1月号(193号)
  『正月定例句会(1月5日)報告』

1月31日:2019年1月増刊号(194号)
  回覧板シリーズ その⑦ 当番 御酒一筋


句会の予定 
 

【日時】 2019年1月5日(土) 18:00~
【会場】 金山アカデミーセンター4F
【兼題】 『雑煮(ざふに)』を含む当季雑詠5句


2018花火句会のみなさんのこの一年



梶原 信史


≪今年の自選句≫

「新春」
・4Bの筆圧強く初日記
始発駅明けに向かひて初仕事

 「春」
・沢音の遠のく魚籠に蕗の薹
囀りに雨戸開けたる二三軒

「夏」
・雨蛙野点の席に混じりをり
・干梅のひとつ一つに性のあり

 「秋
本堂にこぞる門徒や磨き盆
・学らんをきめる少女や体育祭

「冬」
・喧噪を離れ落葉の中にあり
・諳じる門徒の経や親鸞忌


≪この一年を振り返って≫

 花火句会に入会してこの一二月で丸二年が経つが、今更ながら勉強不足、教養のなさを知った年であった。清記用紙を手にし「えッ、この言葉は何と読む?意味は?季語は?」などと分からずままに推測、想像しながら選句することのなんと多かったことか。調べる余裕すらなく、ついにはそれらの句を打っ棄って選句していた。誠に恥ずかしい限りである。帰宅後調べてみると、「なるほど、これは季語であったか」、「こう読むのか、こう使うのか」などなど実に感心させられた。早速我がパソコンの句帳に保存する始末である。
先輩諸氏との句に接するたび、新しい言葉との出会い、言い回し等などを勉強させていただいている。「老いて学べば死して朽ちず」を頼みとし、句会を通して来年も学び続けることに意欲を持ちたいと願っている。
以下はパソコンに保存したその一部を列記する。

食積の毎餉に出され倦みにけり(山口先生 1月度)
 「食積」:「新年の季語」。「くいつみ」と読む。年賀の客を供応するための重詰料理。
「倦」:(音読み:ケン、ゲン)(訓読み:あ(きる)あぐ(む)う(む)つか(れる))
(意味:あきる、あきていやになる、つかれる等)
に美しき影どんどの火(加藤小麦 1月度)
「顔」:「かんばせ」と読む。
海苔粗朶の落暉に映えて格子縞山口先生 2月度
「粗朶」:「そだ」と読む。伐り取った樹の枝。薪とし堤を築く材料や海苔を着生させる材料とする。
田楽に小半酒のよかりけり(山口先生 3月度)
「小半」:「こなから」と読む。一升の半分である五合の半分の意(二合五勺)
ソースの香宮居に残る夏の朝(河村仁誠 5月度)
  「宮居」:1.神が鎮座すること。また、その場所、神社。  2.天皇が居を定めること。
片陰に消へし喪服の涙跡(河村仁誠 8月度)
「片陰」:「陰」:物にさえぎられて光や風の当たらないところ。「日陰」「建物の陰に隠れる」
「蔭」:草木のかげ。人からの恩恵(お蔭様で)。
露の身も晋山式に侍りけり(山口先生 9月度)
「普山式」新しく住職になる者が初めてその寺に入ること。その儀式山式。
カラオケに声振り絞る木の葉髪(深井沓九郎  11月度)
「木の葉髪」:「冬の季語」。頭髪が多く抜けることを木の葉が散るのにたとえた語
口切に使ひし茶とて持ちくれし(山口先生 11月度)
「口切」:「冬の季語」
夏から封じておいた新茶のつぼを初めてあけること。また、その茶で催す茶会
幽明を行き戻りして日向ぼこ(原藻六 12月度)
「幽明」:1.暗いことと明るいこと  2.幽界と顕界(げんかい)。冥土と現世。






山田 夏子


<花火句会この一年>
歳を重ねると年々強く感じるのですが、一年経つのが本当に早いですね。
この「花火句会この一年」も、ついこの間提出したと思っていたのに、
それは早一年前の話...(_;)

昨年の文章を読み返すと、来年の目標に「前年より何かしらの進歩を」とのことでしたが、
今年は何といっても初めてのトップ賞を取ったことに限ります。
2011年の初参加から苦節7年。あまりにも遅い初受賞となりました。
そして今年の忘年会で小麦さんから「なっちゃん来年はもっと出席してね~~~♪♪

との愛のメッセージ  「ハイッ!!肝に銘じます.....
皆さま来年(今年)もどうぞ宜しくお願い致します。
 
1.教室の カーテンの先 夏の色
2.チケットは 敢えて鈍行 秋日和
3.遠ざかる ほどに色濃く 秋桜
 





上田 三枝


今年もまたあっという間の一年でした。
相変わらずのへたな俳句ですが、皆さんと会って俳句の話や雑談等の時間はとっても楽しいです。
皆さんはいろいろな趣味や特技を持っていて、色々な事に興味を持ち、何でもできて、毎回凄いなと思っています。
今年もそうでしたが、来年もマイペースで頑張ろうと思います。
 
早朝に灯油入れる手悴みし
宅配や母の手紙と夏野菜
小さき背を丸めて母の年用意






加藤 小麦


花火句会 2018年を振り返る

藻六さんから電話あり。「小麦さん、原稿締め切りもう過ぎてるよ~」
すっかり失念していたのである。しかも、風邪引いて熱出て、へろへろなんである。そんなコンディションなので、振り返ろうにもあまり振り返りきることのできない2018年。後ろを向くってのも、エネルギーが必要なんだってことがよくわかる。てなわけで、せいぜい一週間くらい前のことしか振り返ることができない。雨戸に指挟んで右中指の爪に血豆をつくり、爪まるごと真っ黒け。そこだけ見てると夏木マリさんみたい。ちょっとかっこいい。
その2日後、親せきに不幸があり、大阪の堺市にお通夜に行った。大阪は外国人旅行者でいっぱいだった。インバウンドとかって言うやつね。景気良さそでなによりでんな・・・となぜか大阪弁って、すぐ真似したくなる。名古屋ももうちょっと外国の人呼べるといいのにと思った。いや別に経済効果がどうのって話じゃなくて、単に、いろんな国の人がやってきたら、それだけ、知らない国の文化とか言語とかに親しめる可能性が出てくるし、楽しそう、面白そうと思うから。
楽しそう、面白そうと思えることが、人生の醍醐味。俳句作るのも、その気持ちです。
来年も、興味深く、楽しく、機嫌よく、句作ができますように。
どうぞみなさん、2019年も仲良くしてくださいね。


小麦の自選句

1、髪切って君の福耳風五月
2、魚煮て居間の金魚に餌をやる
3、朝顔に水やってから引きこもる
4、洋皿にラフランス置き印象派
5、うつぶせとあおむけ日なたぼこ二体






深井 沓九郎


私の句に「大切な人また逝きし年送る」という名句がありますが、今年もまさにそうでした。
お世話になった会社の大先輩、やさしかった絵の先生や何年も闘病していた義父など。はたまた好きだった人、星野仙一さん鉄人衣笠や歌丸師匠、同い年のヒデキ。今は皆どうしているのでしょう?
いかん、いかん。しんみりしてきた。とにかく来年も元気で、素晴らしい出会いのある年にしたいものです。

【自選今年の10句】
赤々と余力残して椿落つ
 今読んで今年亡くなった山本KIDを思い出しました。さぞ残念だったでしょう。
雛納めまた愚痴らるる嫁がぬ子
 そろそろ我が家の娘もその域に。
空青し年取るほどに春が好き
 まさに私の実感です。
痩せたらと五年着ぬ服衣更え
 来年こそは「趣味ダイエット」を卒業したい。
車椅子になって退院法師蝉
 その大先輩も見事に復活。先日杖で歩いて会いに来てくれました。
新蕎麦を打つ脱サラの誇らしげ
 前によく行ったお店のこと。
赤い羽根つけ雑踏に戻りゆく
 少しいいことした気分で、胸張って。
寅さんに会ひたき夜や秋深し
 秋の夜はついつい見てしまうBSでよくやっている「男はつらいよ」。
御嶽の遥かに見つつ蒲団干す
 我が家のベランダから晴れた日にはよく見えます。
癌病みし友如何に聴く除夜の鐘
 雀友の突然の病にびっくり。何とか回復してもらいたいもの。じゃないとお小遣いが減っちゃう。






2018花火句会この一年


今年もあとわずか。そこで、十大ニュース、流行語ベストテン、世相を表わす漢字一字など、年末恒例の話題が世間を賑わせています。今年逝った著名人なんて企画もあれば、平成最後の年末ということで早くも“平成30年史”なんかもあったりして。

とにもかくにも締め括り、総括の季節です。という訳で花火句会この一年であります。ところが、これが難しい。何をどう総括すればいいのか。例えば、この一年の名句・秀句ベストテンを選ぶという企画。物議をかもすのは必定。選ばれた人、選ばれなかった人、まさに侃々諤々、血を見ないとも限りません。(なにしろこの句会、ベスト10だったら全部自分の句になるなんて堂々とのたまう輩だっているくらいです。Mです。ただこのMは俳号ではなく、妄想男のMです)。では駄句・愚作ワーストテンならどうか。面白そうだけど、これも難しい。候補にあがりそうなAは、そんな企画は認めん、やったら退会だあ! (因みにこのAは俳号ではなく、或るお方のAです)。よってベストテン、ワーストテン選びはバツ! そもそも誰れが選者になるのか、後難を恐れて、誰れもおりません。

では流行語か。そうはいっても、俳句は不易流行。芭蕉翁の教えのごとく、不易(永遠性)も流行(新風)も根元は一つ。渾然一体の中から真理を見つめるのが俳句であります(エッヘン)。よって流行語もバツ。

漢字一字、これならいけるかもしれません。別に差障りもなさそうだし。そこでこのブログの、この一年間の句会報告号を繰り、無理矢理漢字に当てはめてみました。
――2月。按庵の競馬予想。ハズレっぱなし。句会の日の競馬なんで⑧①⑨だって。結果は①⑧⑨。
――3月。別れの季節。智明、東京転勤。辞世(?)の句は「春の朝眼差しの先新天地」。元気でますます太っているとか。
――4月。春の珍事。按庵、まさかのトップ賞。2008年につづき2度目。2008年の句は「熊除けの罐々たたく子らの秋」、2018年の句は「廃線の橋脚跡に春嵐」。10年おき、次のトップ賞は2028年ということか。花火句会が続いていたらの話だけど。
――5月。人手不足。句会後の居酒屋で、待っても待っても注文した品が来ないという第2の焼きラーメン事件。今回の「改正入管難民法」とも関係あり。
――6月。気候変動。異常気象に振り回された年でした。この時の兼題は期せずして『出水』。(放心の態に手着かず出水跡/勝行)。
――8月。予想適中。甲子園での地元東海勢対決。10-0で愛工大名電の勝ち。話題の白山高は姿を消しました。沓九郎の予想はピタリ。
――9月。快挙。夏子、初のトップ賞。最優秀句もゲット。その時の句は「チケットは敢えて鈍行秋日和」。
――11月。呆然。句会で風呂吹き大根を風呂釜と間違えるという大呆け会員がいました。全員、ボーゼン。
――4月(6)、2・8・10月(7)、5・7・11月(8)、カッコ内は各月の句会参加者数です。淋しい句会、花火句会解散の文字がチラつきました。

こうしてみると明るい漢字は「適」と「快」、それに「珍」くらいか。あとの字には翳りがあります。ではありますが希望が無い訳ではありません。句会参加者数にしても、
――救いです。3月(9)、1・6・9・12月(10)と盛会の月も多かった。反転攻勢には充分です。
それに何よりも、
――上手い下手は別にして、句づくりには生みの苦しみがあっても、いざ出来あがれば楽しいし、面白い。句友とのつき合いも楽しく、捨て難い。

てな訳で2018年の総括はこのくらいにして、みなさん、前を見ようではありませんか。明るく楽しくいきたいものです。来年2019年の8月は花火句会結成15周年。メモリアルな年です。15周年の名に恥じぬ心に残る名句・秀句、はたまた楽しく心弾む凡句・迷句・駄句・愚作でもって句会を盛り上げましょう。

12月増刊号は恒例の「花火句会この一年」。みなさんから年末にあたっての一文と今年の自信句を送って頂きました。ご協力、有難うございました。
では、よいお年を。
2018年12月末日
月刊花火句会事務局




2018花火句会のみなさんのこの一年


河村 仁誠

 
  この一年を振り返っての感想

 2018年も例年と違わず様々なことがあった。天変地異に政治不信、また文化、スポーツにおいても特筆すべき出来事があり、その時々には感動しまた怒りも覚えた完全リタイア生活が板についた一年でもあった。
年の暮れになって一年を振り返ると、その様々な出来事が全く記憶の中に残っていない自分に気づく、世間と付かず離れずの生活を心掛けていたつもりでも、どんどんと世間と距離を取り始めた自分に驚く。思えば自分の生活半径は本当に狭くなったなと気付く、しかしながら年を重ねるということはそういうことなんだと改めて自覚する。
狭い生活範囲であっても暮らしが充実していれば何ら困ることも落ち込むこともない。そこで今年は小さな目標を沢山立て、その目標を一つ一つクリアすることに努めた結果かなりの部分で達成できた。要因は野菜作りも花作りも竹細工も自然の恵みであり己のペースではなく季節の移ろいに合わせた結果である。
では俳句はどうであったか、上手く作ろうと下手な技巧に色気を出して失敗した。やはり背伸びせず格好をつけず当たり前の生活のなかで俳句が生まれるそんな感性を身につけたいと思う年の暮れである。


  今年の自選句

新年 
通知表持ちて幼の御慶かな  山口賞
幼き子がおめでとうを言いに通知表を持って会いに来てくれた、素直に嬉しい。

手相見の己が手を観る春の宵 
瀬に笑ひ淵に微笑む春の水    山口賞
春は何やら楽しく妖しげだ、それでも自然は確実に移ろい形のない水が表情を見せてくれた。

ふん一つ落し旅立つ燕の子  山口賞
単身の夫の荷に足す夏衣   
20年前長男が東京の大学に入った、はじめての一人暮らし。その頃の私は単身赴任で妻の仕送り荷物に有った着古した夏服が嬉しかった。
野の地蔵顔だけ覗く梅雨出水 
今年の夏異常豪雨が各地を襲った、ニュースで見た顔だけ出したお地蔵さまはどこか寂しげであった。

子の横に並び寝転ぶ星月夜     山口賞
虫の数だけ鐘叩く虫送り      
荒縄を腰に稲架組む棚田かな  山口賞
息子が小学生の頃二人で能登半島一周をしたことがあった。並び寝転んでみた夜空と田圃の虫送りは眼と耳の記憶に残った。翌日観た棚田では稲架を組む漢たちの姿が遠望できた。

凩や生足で来る女高生
女子高生は逞しい、木枯らしが吹こうが雪が降ろうが生足で過ごす。艶めかしさはなく清々しい気分になった。






原 藻六


葉桜や北の大地に起つ輓馬(ばんば)
美少女の腕(かいな)逞し夏衣
間延び声絶えて久しき金魚売り
粛々と屍(しかばね)運ぶ蟻の列
洗ふほど垢抜けてゆく大根かな
終活のまず手始めに買ふ日記

実に慌しい一年でした。全世界的な規模での大混乱、大波乱、ドタバタ劇、茶番劇、ひっちゃかめっちゃかって感じでした。印象的だったのはカリフォルニアの山火事。人間の消火活動の無力さ、ジワジワと現代社会を破滅させんとしているかのようでした。こんな環境ではいい句は詠めないよなぁ(と、弁解)。来年こそは明鏡止水、平常心、静謐、平穏無事でいきたい。だけどそうはいかないんでしょうね。元号も変わればオリンピックも迫ってる。今年よりも慌しく、かまびすしくなりそう(と、いい句が詠めないことへの予防線)。2019年に希望は? う~ん、岩谷産業の飯田怜さんかなぁ。両膝から血を流しながら200mをはいつくばり、タスキをつないだ若い女性。久しぶりに生身の人間、その魂の強さを感じました。もし彼女の復活劇を見ることができたら、直視できるか自信はありませんが、希望、元気、勇気を貰えると思う。他力本願ですみません、ぜひ勇姿を見せてほしい。
花火句会のみなさん、2018年のおつき合い有難うございました。自分には自信が無いんで、みなさんの秀句に感化されたい。
2019年もよろしくお願いいたします。






仲野 カモメ

 
春祭撚(よ)りて差し上(あ)ぐ儺追布(なおいぬの)
ぶらんこの揺れ止め憩ふ小夜(よさり)かな
金魚鉢糞取り遣(や)りて景戻る
星月夜父の遺言再読す
神官の腰を伸ばせし落葉掃き
 
さようなら平成30年、また会う日まで!とはいかない。
自分は時間の流れについて左から右に進むイメージがある。
ある人は背中側が過去で全面が未来という。前に進むという意味ではいいかも知れない。
あるいは自分はここに居て未来の方がこちらにやって来るという人も。いるかしらん?
どんな捉え方でも一向に構わないが、過去は戻らないし未来は字のごとく未だ来ていない。
なのに!である。過去を悔いて未来を思い煩うということを我々はしている。
また時間は観念であるのにその流れを経過でそれを感じている。
そして凡その人は一方方向で捉えているのでありますまいか。
タイムマシンなど興味はないが、それぞれ自分の意識が三世を自由自在に飛び、リアリティを持てたら面白いというかこの世界はどんなことになるだろうなんて思う年の瀬である。
俳句?今年? 実に冴えなかった。選句ゼロがあった。
「私の何が?」「オレの感性は、、」、そう思っているうちはダメなのである。
でも師走の句会で勝行先生の指南で閃いた。
これは大きい! 何か? ヒ・ミ・ツ。
奥義は門外不出と決まったものだ。
来年は!なんて小っちゃいことは言わない。ずっと進化するであろう!
という夢を見た。
皆さま、変わらぬご指導よろしくお願いいたします。






中谷 U太


<今年の10句>

懐に吾子眠らせて花の坂
花月夜坂の途中で手紙出す
新緑やきのふと同じ運命線
夏蝶や遺書を書くのによい日和
くちなはの去りしあたりの野の遥か
悲しみとよく似し色の黒揚羽
夜濯や私の父は公務員
あの人がつくつく法師なら許す
遠花火かゆいところは少し右
蜻蛉のごとく生きたく思ひけり


<俳句大好き>

俳句っていいですね。
何も考えなくてもできますから。理屈なんて何も必要ありません。
ものを考える力が急速に落ちてきた高齢者にぴったりの遊びです。
必要なことは、言葉が大好きで、言葉をいっぱい知っていることかな。
何かを見たり、聞いたり、考えたりして、それを言葉に置き換えてみる。置き換えた言葉を今度は並べてみる。前後左右、上へ下へと、置き場所を変えてみる。
そうやっているうちに、あら不思議、並べ替えるごとに、言葉は不思議な力を見せてくれます。
色々な景色、色々な音、色々な光、色々な意味、まあ、あらゆる色々ですね。
それによって様々なものが見えてくる。美しいもの、醜いもの、楽しいもの、哀しいもの。置き換えるだけによって、世界が一変する。人生が一変する。自分が一変する。そう、言葉の万華鏡ですね、万華鏡バンザイ!
来年も俳句を楽しみます。たまには、特選に採ってください。





高津 按庵

この一年をふりかえると

 私の同居する孫、一歳児は「純平」と云う。彼は犬をみて“わぁわ”と指するが、虎のぬいぐるみをみても“わぁわ”と指する。“じいじ”(私)は昔の「あのねのね」の名曲、「猫ニャンニャンニャン、犬ニャンニャン…」のフレーズを思い出し笑う。
 『犬は“わぁわ”、猫も“わぁわ”、私の彼は左利き』という意味なしギャグ短歌が口に出た。
 競輪選手に吉沢純平という人がいる。この人が出てると必ず買うようになってしまった。割とよく当たる! スポーツ紙で最近、フィギュアスケートでいきなり金メダルを取ったという「紀平」という名をみた。「紀平」が「純平」にみえた――と自分でも信じられない孫バカぶりを披歴した所で、一年をふりかえる。
 成長など一切なし。ある程度、まじめに仕事に励み、乱読し、音楽をきき、歩き廻り、酒・煙草も止めず、競輪・競馬の予想に大切な時間を割いてきた。肝心の俳句は、どうも生活の二次的なものになってしまい、句会が近づくと、最近の出来事を思い出し乍ら、苦労してつくってきた気がする。もっと鼻歌のように自然に出ると良いのだが――
 一年の1/3ぐらい、歯の調子が悪く、今もぐらぐらしている。首も痛い。(一年を)ふりかえると更に首が痛くなりそうだからやめて、新年を迎える事にしよう。おそらく何も変わらないだろうが――
12月22日、早朝、今、朝刊がきた。明日は「有馬記念」、明後日は「賞金王決定戦」だ。おっとその前に今日の四日市競輪、S級決勝に「吉沢純平」が出ているではないか。ニタリ――
 来年はまじめに俳句とむきあいましょうね。
 では皆様、良いお年を――


自選10句

むきだしの山肌に雪陶の街(瀬戸市:窯神神社)
ベビーカー二台並びて山笑ふ(米原市:三島池)
孫の顔おむかいさんの夏みかん(自宅)
汗だくで子の虫封じ若き母(自宅前:松原八幡社)
野仏を護りふんばる石榴かな(多治見:永保寺附近)
朝霧や駅弁仕込む人の影(釧路駅)
秋の蝶土蔵は小さな美術館(笠松:杉山邸)
空欄の多き手帳を見る夜長(自宅)
掃き掃除終へて住職日向ぼこ(舞鶴市:金剛院)
字の読めぬ句碑を囲みて姫椿(名古屋市新尾頭:住吉社)





御酒 一筋


今年を振り返って
夏が暑かった。秋が短くなった。この先の冬が思いやられる。春のことは覚えていない。

今年の自薦句
脳みそに槍突き立てられし寒猛る
盛大に春のくさめよ定住漂泊
目薬をさせばそこには夏の月
漢字では毛虫と手足はよく似てる
まんねりを嫌って台風別コース
担任の先生嫁入りざくろ喰む
鮮度抜群サンマの皿を出しました
俺がやる啖呵切っての大掃除
















イメージ 1
【日  時】 2018年12月1日(土)
【会  場】 金山アカデミーセンター4F
【出席者】 勝行先生、按庵、カモメ、沓九郎、一筋、夏子、三枝、藻六、信史、仁誠
【投句者】 U太、小麦
【兼  題】 『日向ぼこ』を含む当季雑詠5句
 
 
恒例の12月句会兼忘年会。しかし今年はどうにもピンとこない。今日は12月1日、春のようなポカポカ陽気だし、忘年会といっても大晦日までまだまるまる一ヶ月ある。しかしですね、人間は気分次第、12月だぁ、今年もあと一ヶ月しかないぞぉ、年末とくれば忘年会だぁと思えば、そうなるんであります。そう思い込めばいいんであります。とまぁ、かなりの無理筋ですが、これでいくしかありません。そんな2018年最後の花火句会の集まりを、以下駆足で報告させていただきます。
 

【第一部句会】
いつもより1時間早くPM5:00スタート。きっと1人か2人は遅れてくるなと思ったが、遅刻者ゼロでした。出席者は10名、投句者2名。今年最後の句会ということで、口には出さぬものの、全員がトップ賞をめざして虎視眈々、力が入った句が多かった。
60句の清記が終わり、それぞれが5句選へ。この5句選の時間帯、これがなかなかに良いものであります。静けさ、真剣さ、時折解らない言葉を調べて歳時記を繰る音、いかなる意か溜息もあったりして。
5句選のあとはその中から特選句を選ぶという最後の選句作業。この作業、何の邪念もなく、今日の一番はコレだ、これしかないとパッと決まる時はいいんであります。問題は2、3句の中でさてどれにしようかと迷う時。時には特選句を選び損なったと後悔することも。このあたりも分からない。分からないから面白いんであります。
途中を省いて結果報告。今回のトップは沓九郎で、ま、楽勝といっていい部類。山口勝行選の今月の最優秀句にも選ばれ、W受賞でした。おめでとうございます。今年2度目のトップ賞、終わり良ければ総て良しですよね。
 

【第二部忘年会】
句会はいつよもり20分程早く終了。PM7:00、会場を居酒屋に移し忘年会のスタート。今回投句だった小麦も駆けつけ参加者は11名。まずは一筋の音頭でカンパ~イ! この時のグラスとグラスを触れ合わせる音、これがいい。そのあとはいつもの飲み会と一緒、ワイワイガヤガヤそれぞれの話題で盛り上がりました。そして8:45、いよいよラストシーンへ。一人ずつ、ごくごく短いメッセージを述べ、最後に先生からのご挨拶。
そして最後の最後、全員の健康と来年の再会を期して、カモメの音頭で一本締め。予定通り9:00少し前に全てを終了。解散へ。これでもって花火句会の2018年は終了いたしました。メデタシ、メデタシです。
 
 
《日向ぼこ15句》

うつぶせとあおむけ日なたぼこ二体

同窓会写真送りて日向ぼこ

座布団に枕もならべ日向ぼこ

ぽかぽかの後のうとうと日向ぼこ

姉待つや日向ぼこして仲直り

掃き掃除終へて住職日向ぼこ

盗聴のスパイ紛れて日向ぼこ

羊水に漂ふかとも日向ぼこ

過去の良き事のみ語り日向ぼこ

途中より妻も加はり日向ぼこ

一切の些事に思へて日向ぼこ

ひさしぶり病院の前日向ぼこ

何故に猫憂ひ顔日向ぼこ

日向ぼこあぐらの踵ひび割れて

幽明を行き戻りして日向ぼこ
 
 
一席 

御嶽の遥か見ゆる日蒲団干す/沓九郎
 


二席 

吐く息も拳(こぶし)となりぬ寒稽古/仁誠
 


三席 

俺がやるタンカ切っての大掃除/一筋
字の読めぬ句碑を囲みて姫椿/按庵




今月の入点句は特選句)

 
山口勝行
過去の良き事のみ語り日向ぼこ
短日をかこちて告ぐるいとま乞ひ
伊勢湾の胡麻斑となりて鳥渡る
 
深井沓九郎
捨てることから始まりて年用意
癌を得し友如何に聴く除夜の鐘
一切の些事に思へて日向ぼこ
ふるさとの初雪の報メール鳴る
御嶽の遥か見ゆる日蒲団干す
 
河村仁誠
カード見て手でバツされる歳の市
吐く息も拳(こぶし)となりぬ寒稽古
冬耕の長き轍に鳥の群
餅搗ひて餡子の指をもて余す
 
御酒一筋
街道に落葉つつつと歩み出て
俺がやるタンカ切っての大掃除
吐く息の白くもならで十二月
 
高津按庵
掃き掃除終へて住職日向ぼこ
字の読めぬ句碑を囲みて姫椿
硬質のジャズの音充ち長き夜
 
加藤小麦
うつぶせとあおむけ日なたぼこ二体
盗聴のスパイ紛れて日向ぼこ
 
原藻六
倒木の手つかずのまま冬ざるる
終活のまず手始めと日記買ふ
幽明を行き戻りして日向ぼこ
 
山田夏子
日向ぼこあぐらの踵ひび割れて
木枯らしや送電線に喧嘩売る
冬日濃し八百津の丘の記念館
小春日やまた父からの空(から)メール
 
仲野カモメ
山茶花に憚(はばか)りつつも魚(うお)燻(いぶ)す
冬の田や凍てつき期して眠りをり
神官の腰を伸ばせし落葉かな
 
中谷U太
行く秋を箸の袋に書き残す◎
途中より妻も加はり日向ぼこ
 
梶原信史
用済ませちょっと遠道小春かな
年明の分まで処方されにけり
諳じる門徒の経や親鸞忌
 
上田三枝
丸みある小さき母の背年用意
 

山口勝行選評


癌を得し友如何に聴く除夜の鐘/沓九郎
 
除夜の鐘を聴くと、人それぞれさまざまな想いがこみあげてくるものです。この作者に浮かんだのは、癌と闘病中の友人のこと。彼の胸中はいかなるものか。二人に一人は癌を患うといいます。患者側であれ、それを見守る側であれ、同じような体験を強いられた人も多いはず。この句を読む側にもさまざまな想いが交差します。ただ(癌を得し)という表現に少し引っかかりを覚えました。「癌を病む友如何に聴く除夜の鐘」としたい。
 
同じ作者の「御嶽の遥か見ゆる日蒲団干す」「御嶽を遥かに見つつ蒲団干す」に。(遥か見ゆる)ではなく(遥かに見つつ)としたい。
 
三枝の「丸みある小さき母の背年用意」、母の背中と年用意との関係性が少しあいまいです。「小さき背を丸めて母の年用意」とすることにより、忙しく年用意するからこそ母の背中の小ささと丸みがより強く印象づけられるという訳です。
 
信史の「用済ませちょっと遠道小春かな」、この句の(ちょっと)の副詞、俳句としては(少し)としたい。「用済ませ少し遠道せし小春」としました。小文字の使用はできうるかぎり避けたい。
 
カモメの「神官の腰を伸ばせし落葉かな」、これも腰を伸ばすことと落葉との関係性があいまいです。作者の企図とは違うかもしれませんが、「神官の腰を伸ばせし落葉掃き」として、落葉掃きの時に腰が伸びるものとしました。
 
「終活のまず手始めと日記買ふ」、この藻六の句についてですが、就活とは違い(終活)はまだ市民権を得ているとは言い難い。別の表現を考えてください。
 
一筋の「吐く息の白くもならで十二月」、息白し、白息(しらゆき)は冬の季語です。十二月も季語なので気重なりとなります。
 
U太の行く秋を箸の袋に書き残す」、首をかしげた人が多かったと思いますが、これは句会での一情景と思われます。ふっと浮かんだ(行く秋)の句を箸袋にメモしたのでしょう。
 

句会を終えてひと言  

 
この時期にしては温かいのはありがたい。通院を済ませ、見上げれば快晴、小春日和だった。このまま帰るのはもったいないと公園や神社を経由して帰宅した。紫外線を浴びたせいか、その晩の血圧は正常値、この日を契機に散歩することにしよう。私の「用済ませちょっと遠道小春かな」、今日の自信句です。選んだのは、これも暖かい冬の句、一筋の「吐く息の白くもならで十二月」。猛暑、極寒、これにはほとほと悩まされ、時には通院や入院も。この冬、今のところは温かく、老いたる身には有難いかぎり。この暖冬が続くことを願って止まない。 (信史)
 
最近うちのまわりにめっきり増えている野良猫。日向ぼこしてるから、気持ち良さそうだなぁと思ってよくよく見てみたら、ムツカシソオな顔をしていた。何か心配ごとでもあんのかなぁ。それがしの「何故に猫憂ひ顔日向ぼこ」でござる。特選には、小麦の、「盗聴のスパイ紛れて日向ぼこ」。他にテロリストもいたりして。とにかく世界でも日本でも、関係閣僚が口先だけで寄り合うだけではバツ。日向ぼこでも焚火でも、餅つきなんかでもいい。全員打ち揃って、もうちょっと汗かきなはれ、ホンマに。会話を交わす、胸襟を開く、相互理解に努める、それが大事なんす。 (一筋)
 
青磁器の最高級品、砧青磁。本でその事を知って、よしこれで一句と「眼福の砧(きぬた)青磁にうるめかな」。しかし、やっぱ知ったかぶりはイケマセン。天網恢恢、仁誠から「砧青磁といえば何といっても花生け、皿じゃないでしょうが。よってうるめは変」の声。あちゃあ、そうなの、知らんかったぁ! 何しろわて、見たこともないから。「粋極む砧(きぬた)青磁に枯薄(かれすすき)」にでもすればよかったか。これも半可通だよなぁ。いずれにしてももう手遅れ。兼題の「日向ぼこ」、字面からして、なんとなく、ほかほか、ぽかぽか、暖かな気分になります。提出された句もいい句が多かった。みんな上手いよなぁ。その中で特選句の◎は先生の「過去の良き事のみ語り日向ぼこ」にした。やっぱ日向ぼこには悪い事は似合いません。ハッピー、ハッピーでいきたい。 (藻六)
 
カラスにはカラスの事情があるんでしょうが、会社帰り、いつも暗くなった空にカラスが飛んでいてイヤだなと思う。特にこの季節はそう。よけい寒々とした気分になります。今日の自信句「場所さがす頭上のカラス冬木立」ですが、残念ながら1点も入りませんでした。歳月を経て字の読めなくなった句碑はさみしい。でもそれを囲んで見守ってくれている姫椿がある、そう思うとどこかほっこり感があります。按庵の「字の読めぬ句碑を囲みて姫椿」が特選。今日の入点は1点だけ。でも1点でも入れてもらえれば嬉しい。相変わらずみなさんの句はすばらしい、まだまだ勉強せねば。 (三枝)
 
苦悩は人それぞれ、また尽きないものだ。だが心地良いことに浸る瞬間もなければつまらない。その時には世の中のあれやこれやは忘れ、大いに体を伸ばし心を広げたいものである…と、沓九郎の「一切の些事に思へて日向ぼこ」を特選に。そしたら外野席から「あんたの選句用紙では一筋の「街道に落葉つつつと歩み出て」が特選になっとるぞ」の声。えっ、そうだったかなあ、まあそんなの些事、些事、気にすることではありません。両方ともいい句である、それでよろし。自信句は「同窓会写真送りて日向ぼこ」。高校の同窓会の永久世話人を務めている。先日会を開催、その後が大変。即ち記念写真、スナップの現像、分類、発送である。これ一週間以内にやらないと印象がボケる。それも終わったぁ~、久しぶりの日向ぼこ、ぽかぽかに身を委ねた。心地よかったぁ。 (カモメ)
 
ポカポカの窓辺に無防備に寝転ぶ幼い兄弟。何気ない日常の平穏で幸せなひとときが浮かびます。小麦の「うつぶせとあおむけ日向ぼこ二体」を特選に。読んだ瞬間、コレだ! と決めました。11月の連休に行った八百津の千畝記念館、とても心に残り一句詠んだ。「冬陽濃し八百津の丘の記念館」。この句、仁誠から1点もらいました。まずはよかった。自信句は「小春日やまた父からの空(から)メール」。高齢の父は何度教えてもケータイの使い方を覚えてくれない。自分の失敗も全部ケータイのせいにする。その父からの空メール。イライラもしますが、小春日のように穏やかな日だとなんだか愛情を感じてしまうのです。この句にメールもできないガラケーの藻六から1点。ただこの人、「空メールが何か知らんけど、点を入れた」だって。何よ、それ! 父といい、このお方といい、高齢者は理解不能です。 (夏子)
 
新尾頭橋の近くに住吉町があり、そこに句碑があった。古ぼけてとても読めない。そんなことはどうでもいいというように、その周りに山茶花(姫椿)が咲いていた。そこで「字の読めぬ句碑を囲みて姫椿」。この句に先生と三枝から入点があった。やっぱり分かる人には分かるんであります。わたしゃ御嶽山が好きだ。庄内川からはたまに見えることもあるが、家からは見えない。ここ名古屋では障害物がなく、澄みきった青空の日に限って見られる美しい山である。作者はその美しい光景に、蒲団を干すと、生活の匂をつけ加えている。そこがいい。沓九郎の「御嶽の遥か見ゆる日蒲団干す」を特選にした。 (按庵)
 
毎年年末に餅つき器で餅をついている。楽しみは搗きたての餅をきな粉と大根おろし、そしてアンコをまぶしフーフー吹きながら食べること。一番の好物はアンコだが、手にアンコが絡みつく。指をなめつつ次の餅に手を伸ばせばまたアンコが。結局もて余すことになるが、でもモチはやめられない。今日のイチオシ、「餅搗ひて餡子の指をもて余す」です。特選にしたのは先生の「伊勢湾の胡麻斑となりて鳥渡る」。渡り鳥が黒ゴマの小さな粒になって湾を渡っていく。とてつもなく高い青空や無数の鳥の渡りが目に見えるよう。因みにゴマは面倒くさくて自分では作っていないが、大好きである。 (仁誠)
 
クリスマスだ、年末だといっても街はそれほど騒がなくなりました。景気のせいか、それとも自分が齢をとったせいか。こうなったらせいぜい俳句で季節感を味わうこととしたい。今日の特選はU太の行く秋を箸の袋に書き残す」。書き残したのはポツンと残った柿の絵か、それとも一句ひねったか。いずれにしても粋な人。着物姿の女性が目に浮かびます。自信の一句は「捨てることから始まりて年用意」。つくづく捨てるものが多い生活を送っているなと感じます。息と一緒、まず吐いてから吸う。とにかく要らないものはどんどん捨てましょう。身も心も軽くいきたい。今日はトップ賞と今月の最優秀句のW受賞。今年最後の句会、有終の美を飾れて、よかった、よかった。 (沓九郎)
 
 
伝言板

 
年末増刊号、原稿提出のお願い!
月刊花火句会12月増刊号は、例年通り、年末特集「2018年花火句会この一年」です。会員・投句者の皆さんは、
①この一年を振り返っての感想(500字以内)
②今年の自選句(10句以内~自註も可~)
を12月25日までに、事務局までメールまたはFAXにてお送りください。
よろしくお願いいたします。
※初めての方は、このブログの2017年12月増刊号(168号)をご参照ください。
(事務局より)
 
 
月刊花火句会 これからの刊行予定


12月31日:2018年12月増刊号(192号)
 『2018花火句会この一年』
 
1月12日:2019年1月号(193号)
 『正月定例句会(1月5日)報告
 


 句会の予定


【日時】 2019年1月5日(土) 18:00~
【会場】 金山アカデミーセンター4F
【兼題】 『雑煮(ざふに)を含む当季雑詠5句




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