月刊花火句会

花火句会は2004年夏、花火シーズンの真っ只中で発足しました。 集まったのは、当時40代から60代の10名余り、全員がそれまで俳句なんぞ作ったことがないというど素人ばかり、それでも俳人山口勝行氏の指導を得て、月1回の句会、年1~2回の吟行を行っております。 句会は、参加者が事前に用意した兼題1句を含む当季雑詠5句を提出、全員で選句します。 選句された句は、入点句として、次回の会報で発表されます。 会員による選句とは別に、山口勝行氏選の優秀句(1、2句)は、山口賞となります。 句会後には、自由参加で懇親会もあり、当日の会員の句を褒めたりけなしたり、まさに議論百出です。

2018年08月


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『回覧板』シリーズ その③ 当番 河村仁誠


今月の回覧板当番、仁誠です。回覧板を回す目的はメンバーに何か連絡事項がある場合と相場が決まっているが、特に連絡事項はありません。回覧板には時として地域の商店や業者の広告が掲載されている。今月の回覧板はそうした仁誠の趣味の広告だと思ってご覧いただき、時間つぶしにでもなれば幸いです。



■趣味その1 竹細工


竹細工の奥は深い、はじめてまだ三年余り材料のヒゴ作りも修行中、竹の編み方も勉強中。孟宗竹は硬すぎるため使う竹は真竹、それも節と節の間が長いほど細工には都合がよい。それだけになかなか見つからない、よって節間の長い竹を見つけたらあらかじめ目星をつけておく。これから秋が過ぎ冬に入ると竹の水分が一年で最も少ない時期となり、竹の伐りだしのベストシーズンとなる。伐った竹は油抜き、天日干しを経て少なくとも半年くらいは乾燥させ、竹を割ってヒゴを作り、やっと作品の編み込みが始められる。冬の陽だまりで竹を編めば時間は勝手に過ぎてゆく至福の空間となる。


~竹の四季~

春 竹籠を開ける昼餉や竹の秋

夏 皮脱ぎし竹の音聞き籠を編む

秋 節間の長きに印竹の春

冬 竹馬を仕上げ孫らの帰郷待つ



◇仁誠の作品


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■趣味その2 一閑張


一閑張(いっかんばり)とは、日本の伝統工芸品である紙漆細工のこと。またはその紙漆細工を作る方法のこと。明から日本に亡命した飛来一閑が伝えて広めた技術なので一閑張になったという説がある。竹や木で組んだ骨組みに和紙を何度も張り重ねて形を作る。完成したら柿渋を塗って補強する。張り子と作り方が似ている。

 実は仁誠は竹細工より先に一閑張を始めた、骨組みにする竹籠を自分で作りたい願望から竹細工を始めたものである。こちらも没頭すると時の経過を忘れるほどに熱中でき妻の小言も耳に入らぬ。


モンローの紅き唇新茶酌む

カルピスを二杯飲み干す夕薄暑

新涼や妻の小言を受けながす



◇仁誠の作品


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■趣味その3 陶芸


以前から興味があり会社リタイア後にやっと始めた陶芸。教室は木曽三川を渡った多度にあり、ろくろより温かみのある仕上がりが好きで現在は手捻りで作陶している。食事で使用する食器の八割方は自作の食器で賄えるほどに作品も増え、息子の嫁さんからの注文もあって嬉しい限りである。


ゆらゆらと窯場の煙山笑ふ

多度山の窯に火の入る無月かな



◇自作作品


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■趣味その4 スポーツ吹矢


 スポーツ吹矢は1998年設立の歴史の浅いスポーツである。しかしながら腹式呼吸で健康増進にも効果のあることから小学生から高齢者まで愛好者は増加傾向にある。仁誠は20175月入会、現在の段位は3段、2017年の愛知県大会及び2018年の東海ブロック大会(愛知岐阜三重静岡)ではそれぞれ3位入賞と練習の成果が現れた。


見た目より実際体験してみるとこれが意外とはまるスポーツである。的に当てるという狩猟的な本能とより中心に当てたいという願望が入り交じり、その精神的プレッシャーはなかなかで如何に平常心で吹けるかが勝負の分かれ目である。


塵ひとつ残さず掃きて弓始

産土へ揃ふ一礼弓始

落葉踏む音の行き交ふ寺の市



◇吹矢の的と筒、矢


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■趣味その5 三線と三味線


 俳号の仁誠は沖縄に住む孫の名前である。沖縄音階の民謡に惹かれて始めた三線、三線は唄三線とも言われ歌いながら演奏するのが通常である。実は音痴の克服という目的の方が動機としては大きかったかもしれない。三味線は都都逸で伴奏に使用する、こちらも動機は同じようなものである、よってどちらもあまり上達には程遠いレベルであるが、音楽が楽しいと思えるようになったのは大きな成果である。


三味の音の久に響きし梅雨晴間


雨戸叩いてもし酒屋さん
飲んで管まかぬような酒くだしゃんせ


 


◇愛用の三線と三味線


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■趣味番外 俳句


 以上仁誠の五大趣味を紹介させて頂きましたが、一番の趣味は何はさておきやはり俳句である。花火句会、伊吹嶺、現代俳句協会インターネット句会へ毎月投句しその合間に気が向けば俳句大会等へ投稿している。大袈裟に言えば生きている証として俳句を作り、衰えた記憶の代わりに季節の移ろいを記録している。頭にボケる暇を与えないのではないかと言う期待も持ちつつ少しばかりの上達を願う今日この頃である。

 山口先生並びに花火句会メンバーの皆さま、これからもよろしくご指導願います。



2018.08.15 仁誠







月刊花火句会 これからの刊行予定


9月15日:2018年9月号(185号)
  『9月定例句会(9月8日)報告

9月30日:2018年9月増刊号(186号)
  『回覧板』シリーズ その④ 当番 深井沓九郎



句会の予定 


【日時】 2018年9月8日(土) 18:00~
【会場】 金山アカデミーセンター4F
【兼題】 『曼珠沙華』を含む当季雑詠5句



投句の受付 


◆投句料は不要、投句される方は、メールにてお願いいたします。
◆作者名は本名でも俳号でもかまいません。
◆投句数は5句でお願いいたします。
◆締切りは9月6日(木)とさせていただきます。
◆投句いただいた作品の内、句会での入点句は、次回のブログにて
  発表させていただきます。
◆受付メールアドレス:haikuhanabikukai-aichi@yahoo.co.jp
















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【日  】 2018年8月11日(土)

【会  場】 金山アカデミーセンター4F

【出席者】 勝行先生、按庵、一筋、沓九郎、藻六、小麦、信史

【投句者】 U太、仁誠、カモメ

【兼  題】 『星月夜』を含む当季雑詠5句



句会の前の雑談で高校野球が話題に。白山(三重)と愛工大名電(西愛知)の東海勢対決。愛工大名電は強豪校、一方の白山は一昨年までは夏の三重県大会で10年連続の初戦敗退校。ということで、勝つのは愛工大名電、問題はどれくらいの得点差になるのか。そこで沓九郎が10-0と自信たっぷりに断言。他の句友は5-1、8-2。句会後、今日の第4戦も終わっていて、スマホで見たら結果は10-0で愛工大名電の勝ち。たまたまのまぐれ当たりとはいえ、沓九郎予想はピタリでした。この予想の凄さは、10得点もそうですが、白山を無得点としたこと。日本人の判官びいき、心情的には1、2点入れたいところをゼロと言い切った点ですね。情に流されない冷徹さ、リアリストの面目躍如。この予想能力、競馬に転用できないものか。少々なら、有料でもかまいません。


いきなりの、俳句とは無縁の話で申し訳ありません。なにしろこの暑さ、高温注意報、熱中症厳重警戒下での句会なので、俳句に力が入らない。そもそもが、肝心の句が浮かばないんであります。


そこで更にムダ話。先日の、あの、台風12号、あれは何としたことでありましょうか。ようようにして東シナ海に去っていきましたが、あんな進路見たことない。あのひん曲がり様、もうグチャグチャ、めちゃくちゃでした。大逆走、大転回。そこで考えたのですが、あの進路図をTシャツにしたら売れるんではないのか。キャッチコピーは「逆走、ゴメン!」「ストップTHE逆走!」あたりか。誰れか作ってくれたら、花火句会の内、そろそろ逆走年齢突入の会員、あれとこれと、某と某とが買うと思う。あれって誰れ? 某って誰れ? そこまではちょっとご勘弁ください。


とにもかくにもこの夏の、猛暑、熱中症、台風の他豪雨、土砂崩れ、河川の氾濫、突風、竜巻、落雷などなど、そのあまりの蹂躙、傍若無人ぶりに、われらホモサピエンスは疲労困憊いたしております。お願いですから、もういい加減にしてほしい。気象の神様に三拝九拝です。


では、ヘロヘロ、ヨレヨレの句会報告を、以下、ご覧下さい。




《星月夜13句》


子の横に並び寝転ぶ星月夜


生きてゐる人と二人の星月夜


星月夜まなうらに置き旅終ふる


芽生へたる恋を見つめる星月夜


清らかに無数の孤独星月夜


歌声の澄んでゆくなり星月夜


一族の魂集ふ星月夜


星月夜滴り落ちて岩清水


崩落の跡くっきりと星月夜


星月夜父の遺言再読す


ナイターの済んで現る星月夜


ハンモックの向き自在なる星月夜


星月夜火星は赤く光りをり


 


一席 

朝顔に水やってから引きこもる
/小麦


 


二席 

星月夜まなうらに置き旅終ふる/一筋


 


三席 


ナイターの済んで現る星月夜/沓九郎


遠花火かゆいところは少し右/U太


子の横に並び寝転ぶ星月夜/仁誠


 


今月の入点句は特選句) 



山口勝行

朝涼(あさすず)に饒舌となる鳥博士

空白み初(そ)めても確と踊りの輪

怖(お)じけゐし子も手花火の輪に入りぬ

鬢(びん)ほつれ初(そ)めて踊りの佳境なる


加藤小麦

朝顔に水やってから引きこもる

歌声の澄んでゆくなり星月夜


御酒一筋

星月夜滴り落ちて岩清水

星月夜まなうらに置き旅終ふる


深井沓九郎

車椅子になって退院法師蝉

帯の色迷ひ施設の夏祭り

名物に釣られ老母と墓参り

ナイターの済んで現る星月夜


中谷U太

生きてゐる人と二人の星月夜

あの人がつくつく法師なら許す

夜濯(よすすぎ)や私の父は公務員

遠花火かゆいところは少し右


河村仁誠

七夕や児らと九九算言ひ合へり

片陰に消へし喪服の涙跡

赤提灯吊られ灯の入る西日中

子の横に並び寝転ぶ星月夜


仲野カモメ

頼まれし役果たせたる夏芝居

星月夜父の遺言再読す

男気を入道雲に重ねをり


高津按庵

炎天や古代の遺跡そびえをり

吃音の歌高らかに汗と舞ふ

星月夜火星は赤く光りをり


原藻六

崩落の跡くっきりと星月夜

岩肌に古代文字ある清水かな

臑(すね)に喝して外出(そとで)する酷暑かな


梶原信史

打水を終へし草履に一杓(ひとひしゃく)

本堂にこぞる門徒や磨き盆


 


山口勝行選評

子の横に並び寝転ぶ星月夜/仁誠


親子が横に並んで寝転び、星月夜に見入っているという情景。二人の間で、はたしてどんな会話が交わされているのか、いろいろ想像させます。このことが、後年、お互いにとって貴重な夏の夜の思い出になる、そんな気もします。今回の特選句としました。


信史の「本堂にこぞる門徒や磨き盆」。この磨き盆というのは、7月7日あるいは7月13日に、仏具や食器を洗い磨きあげる行事。今ではなかなか難しいかもしれませんが、門徒が挙って行うこととなっています。


藻六の「臑(すね)に喝して外出(そとで)する酷暑かな」。こう暑いと外に出るにも一大決心が必要。そこでさあいくぞと、(臑に喝)となる訳です。ただし語調を整えるため、「臑(すね)に喝入れて外出(そとで)の酷暑かな」としました。


「星月夜滴り落ちて岩清水」の句が出されましたが、この句には季語が三つあります。(星月夜)(滴り)(岩清水)、季重なりならぬ季語の三重奏です。句意も今ひとつ分かりづらい。整理してください。


カモメの「星月夜父の遺言再読す」「星月夜父の遺言読み直す」と添削しました。(再読)と(読み直し)、微妙な違いですが、美しい星月夜を見ているうちに日頃忘れていた父の遺言が気にかかり、本当に伝えたかったのは別のことではなかったかと、今一度読み直してみたということです。


今回投句だった仁誠の「片陰に消へし喪服の涙跡」、この句意をめぐってああでもない、こうでもないの議論が。最後は、喪服の女性が涙を見せたくないので片陰に入っていったの意だろうで決着したのですが、作者の意図ははたして。今日はこの句に限らず、意味が今ひとつすっきりしない句が多数見られました。より推敲を重ねてください。


 


句会を終えてひと言 



「立秋や熱砂熱風暑気中(あた)り」という句を作ったが、季重なりだし、何よりも暑くるしいので出さなかった。ただこれ実感、本当に今に一番しっくりくる。困ったものである。それと、近頃の異常気象で、季題に実感がともなわぬことが多く、句づくりが苦痛。今回にしても「星月夜」、この熱帯夜、とてもとても夜空を見上げる気にはなれん。てな訳で自信句はないが、せめてもの句は「炎天や古代の遺跡そびえをり」。たまたま行った古墳時代の石の遺跡、ひどい猛暑の中、びくともせずに屹立してござった。うらやましいかぎり。特選は先生の「怖(お)じけゐし子も手花火の輪に入りぬ」。始めは手花火にちょっと臆病だった子が次第に輪に入っていく光景、その成長をみまもる親の心情も感じられる。ほほえましい句である。 (按庵)


波照間島で見た星月夜が素晴らしかったので、この夜空を持ち帰ろうとまぶたの裏にやきつけた。毎日一度は思い出している。嘘じゃありまっせ~ん、これホント! それがしの自信句、「星月夜まなうらに置き旅終ふる」であります。特選は小麦の「歌声の澄んでゆくなり星月夜」。星月夜がどんなに素晴らしかろうと歌う声が澄んでゆくなんてことは絶対にありえませぇ~ん。錯覚ですな、錯覚。澄んでゆくような気にさせてくれるということです。あくまでもその気ってことです。星月夜の星月夜たる由縁である。由縁よ由縁、事の由来、わけ、ゆかりですな。ゆかりたってせんべぇではありまっせぇ~ん。間もなく盆。みなさん、ご縁を大切に! 何のこっちゃ、これ。 (一筋)


思い出を「まなうら」に、よっぽど忘れられない美しい旅だったと思われます。一筋の「星月夜まなうらに置き旅終ふる」。表現力にも感服した。過日、我が檀家寺で「お磨き」の作業があった。集ったのは浄土真宗の門徒ら。仏具を磨き盆用意をするのである。世間話を楽しみながら、布や新聞紙を使って磨いた。最初は大変だなと思ったが、いつの間にか無心になって磨いている自分に気付かされた。無我の境地である。次回は冬、報恩講の前に磨くとか、また出かけることにしよう。 (信史)


「帯の色迷ひ施設の夏祭り」、これ何のこととの声があったので説明すると、義母の入っている施設で先週夏祭りがあった。そこで着る浴衣の帯をどれにしようかとあれこれ選ぶ義母の姿がかわいらしく思えた、それで作った句である。分かったかなー。この夏は、あまりの暑さにひきこもるというユーモラスな表現がぴったり。しかし朝顔だけには水をやらないとかわいそう。小麦の「朝顔に水やってから引きこもる」が特選。とにかく暑いでいかん。俳句も浮かんでこないわー。仕方ないっしょ。昔作った自信の一句を思い出した。「インド人偉く思える猛暑かな」。 (沓九郎)


「茹だるよう/じゃなくて茹だる/酷暑かな」という句をなんとかひねりだし提出したが、0点。「これ、俳句とは言えんよなぁ」の声。ごもっともです。反省! ◎を打ったのは先生の「朝涼(あさすず)に饒舌となる鳥博士」。せめて朝だけでも涼しくならないものか。こう暑くては、俳句どころか言葉もでてこない。自称だじゃれ博士、オヤジギャグ好き人間のあっしも沈黙です。 (藻六)


星月夜を眺めていたら、どこからかコーラスの声が聴こえてきた。その声が澄んだ星月夜に呼応するかのようにどんどん透きとおった美しいものに変わっていく。夜空も涼やか、声も涼やか、ようがすなぁ。あちきの「歌声の澄んでゆくなり星月夜」でありんす。遠くに見える花火を眺めながらビールを飲んでいたら急に背中がかゆくなった。つれあいにちょっと背中かいてくれと頼むのだが、なかなか手が届かず、そこじゃな~い、もうちょっと右! あ、行きすぎ~っ! 昨日や今日のつきあいではない、長いつきあいのお二人さん、いつまでも仲良く健康でね! U太の「遠花火かゆいところは少し右」を特選にした。今日はトップや~、久しぶりにトップや~。わ~い、わ~い。暑い中、がんばったかいあったぞ~。これからもどんどん引きこもったるでー。 (小麦)


 


月刊花火句会 これからの刊行予定 



8月31日:2018年8月増刊号(184号)

 『回覧板』シリーズ その③ 当番 河村仁誠


9月15日:2018年9月号(185号)

 『9月定例句会(9月8日)報告


 


句会の予定  



【日時】 2018年9月8日(土) 18:00~

【会場】 金山アカデミーセンター4F

【兼題】 『曼珠沙華』を含む当季雑詠5句




投句の受付 


◆投句料は不要、投句される方は、メールにてお願いいたします。
◆作者名は本名でも俳号でもかまいません。
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