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【日 時】 2016年5月21日(土)
【会 場】 金山アカデミーセンター4F
【出席者】 勝行先生、カモメ、沓九郎、仁誠、小麦、一筋、智昭、藻六、按庵
【投句者】 U太
【兼 題】 『薄暑』を含む当季雑詠5句


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前田幸三ペン画展 6度目の東北へ…。 より



とある村の草の生い茂った無住寺の御堂に千手(せんじゅ)観音が祀られていた。しかしこの像、肝心の手が無い。聞くと戦国時代戦火に焼かれたとのこと。爾来村人たちはその像を廃棄することなく、400年以上も大切に守り受け継いできた…。いい話である。そのことにある種の感慨を覚えた作者(按庵)が詠んだ句が、夏の季語である『茂(しげり)』でもって、
腕の無い千手観音茂り中(しげりなか)
しかしこれ、正直に言って、読み手にとっては何のことかさっぱり分からない。腕の無い千手観音がこの世にあるのかと首をかしげさせられた。実際句会では1点も入らず。句会後先生が、
腕欠けし千手観音茂り中
と改め、これでもともとはあったものが欠損したのだと理解できるようにはなりました。しかし考えてみると、多分作者が表現したかったのは(戦火に焼かれた)(大切に守り抜いてきた)、ここらあたりではないのか。旅先での折角の見聞、五七五の中にそのことを盛り込む、何かいい表現はないものか。自分だったらこう詠むと、誰れかに挑戦してみてほしいくらいです。たったの十七文字への凝縮、心底俳句は難しい、と痛感させられました。
 
智昭が、今月のトップ賞は私のものと自信満々。選句が始まってみるとその言葉通り点が入り、「今日は智昭の日だな」。しかし中盤になってU太が猛追「逆転するかも」。これでU太、智昭のどちらかだと思っていたら、最後の発表は違っていました。意外! これは集計ミスと、藻六が再度集計してみたら、一筋の初めの集計通りでした。最後の選句者先生が仁誠に入れた5点、仁誠の総得点11点の内5点ですから、これが大きかった。智昭さん、トップ賞残念でした。これにめげないで、次回頑張ってください。



一席 


ふるさとの色問はるれば柿若葉/U太


水底の影くっきりと水馬(あめんぼう)/仁誠

 

三席 


訳あってここで燕の宙返り/一筋



今月の入点句(得点順 は特選句)


山口勝行
子等植ゑし田を繕へる老農夫
労(ねぎら)ひて早めに替へる囮鮎
老鶯や標高千の声澄める
新任の教師に渾名付け五月

中谷U太(11点)
ふるさとの色問はるれば柿若葉
踝を波にゆだねて薄暑かな
ひまはりと同じくらいに君が好き
だからいま空を見てゐるパンに黴
ふるさとに忘れしままの夏帽子
 
河村仁誠(11点)
野球帽目深に下げる新樹光
水底の影くっきりと水馬(あめんぼう)
武将隊出番待ちたる若葉翳
糠床の天地を返す夕薄暑
 
御酒一筋(7点)
白鷺のゆるりと参る五月晴
半袖の電車に揺れて薄暑かな
訳あってここで燕の宙返り
明るめのポロシャツにする薄暑かな
 
増田智昭(6点)
新緑を見上げ見上げの乳母車
夏はじめ白の半そで駆け抜ける
句作りの言葉貧しき五月かな
ティーカップ真白眩しき初夏の頃
 
原藻六(6点)
着崩れの肩あらはなる夏衣(なつごろも)
赤子抱く母の微笑み薄暑光
容赦なく打(ぶ)たれる哀れごきかぶり
ひとときを憩う蔭あり花は葉に
 
深井沓九郎(4点)
苛立ちを妻汲む新茶になだめられ
新聞に浜で遊ぶ子夏立ちぬ
 
仲野カモメ(3点)
王ケ鼻(おうがはな)夏山あまた見晴るかし
剥く指の痛み忘れて蝦蛄(しゃこ)食らふ
 
高津按庵(2点)
街道をゆっくり歩き麦の秋
河骨の花遠くに和太鼓の音(ね)
 
加藤小麦(2点)
まっすぐに行手をはばむくもの糸
窓という窓開け放ち薄暑かな
 
 

山口勝行選評 

糠床の天地を返す夕薄暑/仁誠

兼題は『薄暑』。これは初夏の季語、好天で日差しも眩しく、少し汗ばむような陽気のことです。「薄暑光」も同じですが、これに言葉を加えて「町薄暑」「街薄暑」「裏町薄暑」「浜薄暑」、また急に夏らしくなったということで「薄暑急」などの用い方もあります。仁誠の、今日の最優秀句とした「夕薄暑」もそのひとつ。糠床を返すのは毎日、特に夕方に限らないとは思いますが、傷みやすいこの季節なので念入りにということなのでしょう。
 
藻六の「赤子抱く母の微笑み薄暑光」は(薄暑光)を(園薄暑)としました。こうすることによって、公園の一風景として、具体的にイメージが浮かびます。
 
沓九郎の「苛立ちを妻汲む新茶になだめられ」、意は通じますが句調が少しぎくしゃくします。「妻汲める新茶に苛立ち失せにけり」としました。
 
野球帽目深に下げる新樹光/仁誠」は帽子を(下げる)にクエスチョン。帽子は(脱ぐ)(取る)(被る)。(目深に)ですから下げるのは当たり前。「野球帽目深にかぶり新樹光」としました。
 
一筋の「白鷺のゆるりと参る五月晴れ」についてですが、この(五月晴)は五月の晴れた空という意味ではありません。(梅雨晴間)(梅雨晴)と同じで梅雨の最中に晴れあがることです。今頃の、入梅前の五月の好天として使うのは誤用です。
 
小麦の「窓という窓開け放ち薄暑かな」と「まっすぐに行手をはばむくもの糸」は「説明」ではなく、それらをめぐる「動き」に焦点を当ててほしいと思います。「窓という窓開け放ちたる薄暑」「まっすぐに行手をはばみくもの糸」に。説明ではなく動きを詠む、このことを忘れないでください。
 
智昭の「ティーカップ真白眩しき初夏の頃」、この眩しいのは何か。ティーカップか初夏の日射しか。「ティーカップ白の眩しき初夏の芝」として、緑の芝生にティーカップが眩しいのだと、句を整えました。
 
 

句会を終えてひと言


よせばいいのに調子に乗ってトップ宣言、薮蛇というか、かえって恥の上塗りになってしまいました。この世の中、つくづく思いどおりにはいかないものですね。今日の自信句「新緑を見上げ見上げの乳母車」、これで大量得点のつもりだったんです。足がおぼつかなくなった老婆にも、等しく、さわやかな新緑の季節はきます。その新緑の眩しさを楽しみながら、初夏の風を応援歌にして長い坂道をゆっくりゆっくり上がっていく、まるで人生行路のよう。春夏秋冬、それぞれに人生のような風景があるんですねぇ、という句です。我ながらいいと思ったんだけど残念。特選句にしたのは沓九郎の「苛立ちを妻汲む新茶になだめられ」。まずは素晴らしい奥様だなと感嘆。次に、さすがに結婚歴ウン十年のベテラン夫妻、言葉にせずとも通じあう心、まさに老境の豊穣と感じ入った次第です。私も妻には助けられてばかり、感謝しなくてはと今さらながら思い起こさせてくれた秀句です。 (智昭)
 
いやぁ、この景を、つい先日経験したところ。日本の百名山の半分を見晴らせる標高二千Mであったが、山の頂の少しばかりの木立と熊笹の中、はっきりくっきりと鶯の声を聞いた。快晴無風のせいか実にはっきりと。Good feeling! Rich! この高地でも鶯がいるのかと新鮮な驚きであった。先生の「老鶯や標高千の声澄める」を選びました。少しずつ暑くなり、またそこまで歩いてきた体温上昇もあるのだろう。脱いだ上着を抱え、電車はまだかと駅の時刻表を眺める図、それが本日の自信句「時刻表上着抱けり夕薄暑」であります。点は入らなかったがDon’t mind! Don’t mind! (カモメ)
 
足湯じゃないけど、足の先だけ海や川につかる、まさに薄暑にぴったりで、見事。情景も素直に思い浮かべることができるU太の「踝を波にゆだねて薄暑かな」が特選。湖北木之本に赤後寺(しゃくごじ)という寺があり、これは現在無住寺だが、そこにこの地区の氏子が順番で守っているご本尊、腕の無い千手観音像がある。戦国時代の戦火にやられたとのこと。それで「腕の無い千手観音茂り中」の句にした。けなげな村人の心を表現したかったが…、とても、とても。あいかわらず点は入らず、絶句あるのみ。 (按庵)
 
薄暑、緑陰、夏帽子など、気持の明るくなるような季語が勢揃いして、実に良い季節でありんすことよ。あちきは歯が痛いので今ひとつ気分よくのっていけないのですが、夏に向かって弾けた句づくりを心がけたいと思う今日この頃でありんす。くそっ、だーれもとってくれんかったけど「万緑の光と陰を放ちたる」、これが自信句。木々の緑がまぶしい季節、緑陰は陰のことだけど、陰をつくることで光もくっきり生み出している。光あっての陰、陰あっての光でありんすことよ。この両方を感じさせてくれる五月に、かんぱ~い! 特選句は一筋の「訳あってここで燕の宙返り」。目からウロコ。くるりと向きを変えるツバメの宙返り、あれってちゃんと訳があったのかー。いやー納得。で、それってどんな訳? それは知らんって、あんたねぇ、そんなの無責任だぁ! (小麦)
 
得点がどうの、トップがどうのなんぞはとうの昔に超越しているおいどんですが、それをめぐる句友の一喜一憂は実に面白い。自信満々だった智昭、残念でした。まぁ、獲ったタヌキの皮三枚、そうよ問屋は卸すのよ、予告ホームランだってあるしなぁ。次のトップ獲得宣言に期待です。先日の飲み会、飲み過ぎ騒ぎ過ぎで泥酔、最後は意識不明状態。帰りの地下鉄(伏見駅東改札口)に乗ったとこまでは憶えてるけど、それ以降はさっぱり。もしご迷惑をおかけした方がいるとしたら、ゴメンナサイです。それというのも二軒目の伏見地下街、ここで若き日に10年近くも通った新宿のゴールデン街を思い出しタイムスリップ。あの頃は若かったよなぁ、当時の飲み友達は今いずこなどと年甲斐もなく感慨にふけっちまって、メートルの上がること、上がること。お恥ずかしい限りです。けど、おいどんだけかもしれんけど、実に楽しい飲み会だった。その時浮かんだ句が「着古しの背(せな)に矜持のある単衣(ひとえ)」。これ、当時流行った任侠映画から。高倉健、鶴田浩二、インテリヤクザ役の池部良なんてのもいたよなぁ。けど今どき、こんな格好で街を歩いとる奴はおらん。で無得点、当然でげす。次回は一転、未来志向でいきやす。トップ獲るぞぉ! お願い、点入れてェー! (藻六)
 
自分の家にも小さな柿の木があって、若葉は実に美しい。無数にある若葉の中でも一番好きなのが柿若葉である。そこにU太の「ふるさとの色問はるれば柿若葉」、迷わず特選にした。庭に、畑に、山に、柿若葉の黄緑が故郷を覆い尽くすとは何ともうらやましい景色。住民までもが純朴で心優しい人達に思えてきます。新しく竹細工を習い始めた。竹を割るより手を切る方が多いけれど、物を作り出す作業は楽しい。先月から通い始めたその竹細工教室は豊田市の山合いにあり、筍もまた豊富。竹細工の先輩から誘われ、獣道をたどりながら筍堀りに出掛けた。大収穫であった。筍はイノシシの大好物、勢いその足跡をたどることになる。今日の自信句「筍や足跡たどる獣道」です。イチゴの収穫も終り、明日はサツマイモを植える予定。 (仁誠)
 
長袖から半袖、ワイシャツからポロシャツへと衣を替えるこの季節ですが、赤、白、黄の3色のポロシャツを持つそれがし、問題は何色からいくかですな。事実は迷うことなく白なんだけど、白いポロシャツ、これじゃ何にも面白くない。そこで明るめのポロシャツと、こうなったんであります。自信句の「明るめのポロシャツにする薄暑かな」でありやす。で、明るめって何色? うるさいっ、あ、青のポロシャツだぁ! あめんぼうって水馬と書くのか、知らなんだ。特選にしたのは仁誠の「水底の影くっきりと水馬」。水の上を縦横無尽に駆けるあめんぼうの影が水底に写るのは、その水がキレイなキレイな透き通った水である証し。初夏の清涼感たっぷりの一句ですな。先日の飲み会、それがし以外にも帰路前後不覚になったのがいると知って安心した。え、それ、藻六ジジイ? ぜ、絶望だぁ、一緒にしないでくれ~っ! (一筋)
 
今日は片道120キロのゴルフ帰り。暑かった~。疲れた~。句会どころではない気分だったが、トップ賞でもとれたら少しは疲労回復になるかもと思って参加したが、甘かった~。そう都合よくはいかないよね。特選にしたのは先生の「子等植ゑし田を繕へる老農夫」。都会暮らしをしている息子が孫を連れてGWに帰ってきた。遊び半分で田植えでも。だが後始末が大変。ほとんどやり直し。そうは言いながらも孫の成長を喜んでいる老いた農夫の笑顔が浮かんできました。「夏休みにはまた来いよ~」。自信句は「もち鰹差し出す店主得意顔」。今住んでいる浜松は鰹も名産。特に初夏に獲れるもち鰹はその名の通り餅のような食感で人気がある。去年の夏は殆ど揚がらなかったのに今年は大漁の気配。「是非食べてよ」と居酒屋の親父も得意気でした。 (沓九郎)



伝言板


①一度は「大甚」で飲もう会 を開催しました


5月17日の、一度は「大甚」で飲もう会は、参茶、一筋、按庵、智昭、藻六の五人が参加、大いに盛りあがりました。俳句、句会、句友の句や人物の品定め、音楽、落語など、話題はよく言えば豊富、内実はごった煮のバラン、バラン。議論というより、何しろ聞く耳もたずのわがまま連中なので言いっ放しの世界。そこがまた面白く、楽しかった。昔の居酒屋を彷彿させる大甚のあとは、もう少し飲もうと「伏見地下街」へ。ここはここで、ちょっと新宿のゴールデン街に似た独特の雰囲気、これも飲兵衛横丁的な情緒があってよかった。酒ととりとめもない雑談をたっぷり堪能、句会もいいけど、たまにはこんな会もいいものです。


 
②第67回熱田まつり献納俳句募集要項

1.作品内容
熱田神宮嘱目吟
(原則として熱田神宮を参拝して、目に映ったこと感じたことを詠む。遠方の方は例外として、近くの神社を参拝して、目に映ったこと感じたことを詠むこと。)


2.締切
6月8日(水)必着
尚、6月5日(日)熱田まつりの当日は、境内の受付所へご提出下さい。


3.選者
小串和夫・金森直治・山口勝行(敬称略)


4.応募方法
1人3句以内(但し、神前披講にふさわしい句で、未発表のもの)とし、備え付け用紙又はハガキに楷書で明記して下さい。住所、氏名にはフリガナを附し、小・中学生の方は学校名、学年も記入して下さい。境内常設投句箱へ直接投句又は下記宛先へ郵送して下さい。
尚、献句については全て熱田神宮へ奉納致します。


5.宛先
〒456-8585 名古屋市熱田区神宮一丁目1番1号
熱田神宮宮庁内 献納俳句係
☎052-671-4154


 

月刊花火句会 これからの刊行予定


6月4日:2016年5月増刊号
  月刊花火句会番外編
  第五回 高津按庵
 
6月18日:2016年6月号
   『6月定例句会(6月11日)報告』



 
句会の予定 


日時】 2016年6月11日(土) 18:00~
【会場】 金山アカデミーセンター4F
【兼題】 『紫陽花』を含む当季雑詠5句




投句の受付 


◆投句料は不要、投句される方は、メールにてお願いいたします。
◆作者名は本名でも俳号でもかまいません。
◆投句数は5句以内でお願いいたします。
◆締切りは6月9日(木)とさせていただきます。
◆投句いただいた作品の内、句会での入点句は、次回のブログにて
  発表させていただきます。
◆受付メールアドレス:haikuhanabikukai-aichi@yahoo.co.jp