月刊花火句会

花火句会は2004年夏、花火シーズンの真っ只中で発足しました。 集まったのは、当時40代から60代の10名余り、全員がそれまで俳句なんぞ作ったことがないというど素人ばかり、それでも俳人山口勝行氏の指導を得て、月1回の句会、年1~2回の吟行を行っております。 句会は、参加者が事前に用意した兼題1句を含む当季雑詠5句を提出、全員で選句します。 選句された句は、入点句として、次回の会報で発表されます。 会員による選句とは別に、山口勝行氏選の優秀句(1、2句)は、山口賞となります。 句会後には、自由参加で懇親会もあり、当日の会員の句を褒めたりけなしたり、まさに議論百出です。

2014年09月

 
 
花火句会 自選三十句
 
 
第3回 御酒一筋と本田柑子の巻
 
 
 其の五 御酒一筋
 
2014年秋。御酒一筋、ざくっと選んだ30句&講釈。
 
花火句会10週年おめでとう。ありがとう。この10年、格段に上達した!といえば俳句のことかと思うが、そうではない。では、なにか? それは…。早速、自選30句へ。どうぞ〜。
 
●案山子かと思えば農夫こっち来る
 精巧に作られている案山子ではない。むしろ、その逆。故に、貧相な体躯に、粗末な野良着をまとう農夫だ。その案山子、いや農夫が動いて、こっちへ来るというのが我ながら秀逸。
 
●目に見えぬ風が見えたり麦の波
 数年前くらいから麦を栽培している。収穫したものをパンに入れて「自家製麦使用」のパンを商おうって魂胆だ。連れ合いのパン食堂も鼻たかだかってわけよ。まてよ、オレは体よく使われてるだけか…?
 
●地を這うも生きる術なり毛虫なり
 文法的にいかが?という疑問を呈する向きあったが、「毛虫なり」で正しいと思う。てっぺんで待ち合わせする毛虫もいいが、やはり地を這う毛虫でありたいと思う。誰です?「あんた毛虫か?」といらんこと言うヒト!?
 
●寒風にひび割れまいかつむの皿
 いつの頃からか帽子が手放せない。それも夏と冬。当然夏は日よけ、冬は寒さよけだわ。そんだけ薄まってきたわけだわね。そうやって自衛しているにも関わらず、この冬の風ってえヤツは容赦がねえ。
 
●居眠りの犬ピクともせず梅の下
 桜の木の下には死霊が棲む…だったっけ、たしか坂口安吾、それとも他の人? で、句は梅の木だ。長い冬が終わりに近づくと梅の花が咲き始める。梅の季題は春かもしれんが、実感としては冬。でも、近づく春の気配を感じながら老犬は眠る。
 
●重なりてなお重なりて雪の在る
 雪は降る、あなたは来ない〜。誰を待つやら、待たすやら。雪の降るのをぼんやり見ていたら、どんどんどんどん雪はつもり、降った雪の上にまた重なっていくんだなという、あたり前のことに気がついたという一句。誰です?「寒ぅないんか?」と突っ込み入れるヒト!?
 
●コップ酒干して出かける春の宴
 景気づけの一杯!なんてえことを、左党の方では言うようですが、まさにその面目躍如。これからいっぺぇ(一杯)やろうって時に、コップ酒飲んでいくのかい?いいじゃねえか、飲ましておやりよ、好きなんだから。アルコール分解酵素の少ない方々、御免ちゃい。
 
●餅つきや出たとこ勝負の嬶がいる
 年末のせわしない時にやる餅つきは、楽しい。しかし実際に餅を仕上げるまでの苦労は大変なものがある。前日からもち米を水に浸けたり、水から上げたり、焚き火の薪や釜を用意したり、杵や臼も使えるように準備、もちろん来客向けの用意も必要etc、ああ、もう今年はやらんとこうかしら…。家内に出たとこ勝負のヒトがみえるのはこころ強い限りですね。
 
●通い道秋は誰もがひとりなり
 確かマスダが特選にとってくれたんだっけ。感謝の意味を込めて、通い道秋もマスダはひとりなり。おいおい。それじゃってんで、通い道秋はマスダもひとりなり。ってことは、通い道秋は美味いね酒一筋、ってか〜。これ、意味わからんだろうなあ。   わしも。
 
●栗断ちてみなぎるものを取り出だし
 イガイガに守られ、なお厚い皮に守られている栗の実。割るのだって容易じゃありません。栗を割るにはナイフでぶすっと、あるいは歯で噛み噛みして、そののち手で開いたり。そうしてようやく口にできる栗の実質。みなぎるものをいただいている感謝であり実感。
 
●南京の雌花黙して朽ちにけり
 
●ひまわりの立ち話する幼稚園
 
●かっくんと首を折ったりねぎ坊主
 
●青葉見てぎゅっと目を閉ず目の滋養
 
●古新聞ぐいと縛りて北開く
 
●すいと来てすすいと去りぬギンヤンマ
 
●百年を百代生きて来た南瓜
 
●蜥蜴横切って只今気温上昇中
 
●父といてただ一面の春霞
 
●ご法度の裏街道にも春爛漫
 いろいろなご法度があろうかと思うが、この場合は「どぶろく」の密造。毎年、冬の終わり頃に上質の米麹が手に入るので、どぶろく造りに余念がない。作り方は簡単。あらかじめ水を冷やしておき、炊いたご飯と混ぜる。程よく温度が下がったところで、こうじを投入。あとは毎日かき混ぜながら味見。これがまた、ん〜まいんだわあ。
 
●春の闇コップの中の水平線
 ♪ ボトルの中の水平線から行方しれずの船が出るよ〜(憂歌団『ウィスキームード』)と作詞したのは、はや30年、いや、それ以上前。ボトルの中にしろコップの中にしろ水平線という言葉には、無限の広がりがある。というより未知なる世界への憧憬がある、と思うのはわたしだけ?
 
●倒木のうろに谺す百千鳥
 この句は豊橋のなんとか湿原(確かイモウ…)に吟行に出かけた折の句。おたまじゃくしが群れをなして泳いでいる清流に見入った。その一方で、うっすらと苔むした倒木にも目が行った。遠くで鳥たちの鳴き声が聞こえた。倒木にうろがあったのか、なかったのか?うろ覚え…なんちゃって。
 
●ぬか床を揺り起こしたる朝曇
 ぬか漬け(ぬか床作り&管理)が毎年の恒例になって久しい。ぬか床は「おばあちゃんからのお下がりで」なんて向きもあるようだが、こちとらは毎年更新する。更新はするが名前はおなじ「よしこちゃん」。大丈夫かぁ? とご心配は無用。今朝も、せっせとかき混ぜている。
 
●酔っていなければならんと蝉のなく
 ランボーだったかボードレールだったか、酔っていなければならん! と力説されたらしいが、小生も同感。ていうか、そのまんま。で、今に至る。そんなに変わらないのである。そんなに変わったら気持ち悪いのである。だよね。お疑いの向きは、蝉に尋ねてみるのがよかろー。
 
●水仙八つウィーン少年合唱団
 水仙の清楚な姿を合唱団の澄んだ響きで表現した句。まったく人気がなかったが、唯一、小麦氏には高い評価をいただいた。諸氏も俳句の持つ音の響きという点に、いささかでもご留意いただけたらと…みたいな偉っそうなことも、たまには言ってみたくなれへん? 言わしてちょ。
 
●立ち漕ぎの自転車少年天高し
 
●秋凉し凹んだ水筒携えて
 
●元旦や殿は御酒にて高鼾
 お正月の正しい過ごし方を提案した一句。季節の酒肴、飲みなれた酒。あとは気にせず、高鼾。明日はどっかへ行っちゃったのである。
 
●街道の標となりし冬木立
 
●鈍色の運河に日差し冬立ちぬ
 
長々とお読みいただいた方々に深く感謝申し上げる。
 
 
 
 
 其の六 本田柑子
 
 
花火句会へ参加したのは2012年1月からでした。
その時初めて点をいただいたのは、
 
1 夕ぐれにからだをつつむ寒さかな
でした。
この句に対し勝行先生から、「夕ぐれに」を「夕ぐれて」に訂正していただきました。以下同文
 
新年
 
2 初声や雨戸繰る音遠慮がち
この句には3席をいただきました。
 
3 初刷りや今朝の訪れ音もなく
 
4 起きぬけに灯油入れたる二日かな
この句には6点いただきました。
 
 
5 さえずりのにわかに起きし路地の朝
「起きし」を「起こり」に訂正
 
6 あい和するギターの音や春の宵
 
7 海苔そだや鈴鹿の風に波立ちて
「波立ちて」を「波立てり」に訂正
 
8 春めくや二人黙して畑仕事
この句は5点をいただきました。
 
9 寒明や煮物の匂う台所
 
10 春の夜やジェット機の音遠ざかる
 
11 春分や濃いめにいれし朝のお茶
「春分や」を「春寒や」に訂正
 
12 春風や車内にみつるシンフォニー
 
 
13 冷麦や円高債務じっと聴き
先生よりこの句に対し、「いはゆる時事的なものは一過性に終わることが多く、時を超えて共感をえることは難しいと評価をいただきました。
また、点が入らない時ほど自分の俳句について考える良い機会だとの言葉をいただきました。
 
14 夏帽子友遠くより来たりけり
この句1席をいただき、この時トップ賞をいただきました。
 
15 窓開けて走る車やサングラス
 
16 遠雷や回り道する水たまり
「遠雷や」を「白雨あり」に訂正
 
17 蚊遣火や夕暮れ時の畑仕事
この句は3点いただきました。
 
18 夏雲や乗る人もなくバスは去り
この句は3点いただきました。
 
 
19 虫の音やヒゲそりの手暫し止め
「虫の音や」を「虫の音に」に訂正、「や」では切れてしまうとの事。
 
20 弦月や家路をたどる靴の音
 
21 冗談を云いつつ帰る秋夕焼
 
22 こおろぎや音なく進む置時計
この句は1席をいただきました。
 
23 秋の夜や早や灯かり消す町工場
この句3点いただきましたが「秋の夜や」を「秋の暮」に訂正されました。
 
24 行く秋や夜道に浮かぶ信号機
 
 
25 家家は白く静まり月冴える
 
26 月冴えり路地に靴音遠ざかる
「月冴えり」を「月冴える」に訂正
 
27 たそがれやねぐらへ急ぐ寒雀
「たそがれや」を「たそがれて」に訂正
 
28 あかぎれや吹かれ飛びそな洗いもの
 
29 柚子風呂や軒先たたく雨の音
 
30 着ぶくれや食事のあとの水しごと
「着ぶくれや」を「着ぶくれて」に訂正
 
以上2年8カ月の作品30句です。
 
 
  
 
月刊花火句会 これからの刊行予定
 
10月18日:2014年10月号
 『10月定例句会(10月11日)報告』
 
10月30日:2014年10月増刊号
 『花火句会 自選三十句
    第4回――増田智昭と山田夏子の巻

 
句会の予定
 
【日 時】 2014年10月11日(土) 18:00~
【会 場】 金山アカデミーセンター4F
【兼 題】 『』を含む当季雑詠5句
 
◆投句料は不要です。
  投句される方は、メールにてお願いいたします。
◆作者名は本名でも俳号でもかまいません。
◆投句数は5句以内でお願いいたします。
◆締切りは10月9日(木)とさせていただきます。
◆投句いただいた作品の内、句会での入点句は、
  次回のブログにて発表させていただきます。
◆受付メールアドレス:haikuhanabikukai-aichi@yahoo.co.jp
 

【日  時】 2014年9月13日(土)
【会  場】 金山アカデミーセンター4F
【出席者】 勝行先生、按庵、太々、一筋、みさちーた、小麦、沓九郎、カモメ、柑子、仁誠、藻六、智昭
【投句者】 夏子、U太、狭間、斗白
【兼  題】 『』を含む当季雑詠5句
 
出席者12、投句者4の激戦。しかしよくしたもので、終わってみれば票が適度にバラつき、無得点者はゼロ。何回経験しても0点というのは結構こたえるもの。その意味では、まずはよかった。
兼題は「芒」。真白な花穂が開くと獣の尾に似ているところから別名は「尾花」。七草の一つで秋の季語。それが枯れると「枯芒」「枯尾花」となり、冬の季語となる。日頃目にする機会が多く、それだけイメージしやすいからか、力作が多かったように思われます。今月の最優秀句も「芒」の句でした。
得点争いは、悲願(?)の単独初トップを狙った智昭を制して、一点差で藻六の勝ち。悔しがる智昭を尻目に、「今年もあと3回か、もう2勝は固いな」と上機嫌でうそぶいておりました。
句会後は先月と同じ「大丸テーブル」の居酒屋へ。例によって次から次へ話題沸騰。今回の句会、11月に予定されている吟行など俳句のことは勿論、演劇やらメンバーによるおじさん(老人?)バンド結成の話、はたまた子育て論まで、まさにごった煮状態。最後は何が何やら分からぬままにラストオーダーと相成りました。
 
今回投句だった夏子、聞くところによると入院中とか。これには全員がびっくり。花火句会一同、一日も早い回復を願うのみです。
 
 
一席 
教室の私語黙らせていなびかり/藻六
 
二席 
風に揺る芒窓掃くローカル線/智昭
 
三席 
ハイボール泡の音聞く野分中/仁誠
 
 
今月の入点句(一~三席を除く、( )内は得点数)
 
山口勝行
赤とんぼ会話したげにホバリング(2)
原発の稼働議論し震災忌(2)
名月の威に叢雲の払はるる(2)
そこばくの小豆を干して侘住ひ(1)
秋なすを採りて菜園片付きし(1)
 
原藻六
逆らはぬ生き方のあり芒の穂(2)
農耕のいつもの暮し祭りあと(2)
生足の散歩ためらふ今朝の秋(1)
 
増田智昭
宿直も巡回が増へ星月夜(1)
一人旅一雨ごとに秋深む(1)
尾頭を妻と分け合ふ秋刀魚かな(1)
 
河村仁誠
堤防に彼岸花映ゆ婚の列(2)
 
御酒一筋
案山子かと思えば農夫こっち来る(3)
赤とんぼ額につけて道祖神(2)
無農薬ぶどう商うトタン小屋(1)
 
深井沓九郎
すすき野に見えては隠る野球帽(3)
白露を載せて雑草誇らしげ(2)
逃げるように一人来し宿星月夜(1)
 
兼松みさちーた
眺めけり風の足跡花すすき(3)
文庫本伏せて寝息の夜長かな(2)
リサイタル今夜は鈴虫合唱団(1)
 
山田夏子
ススキ道分け入る先の船着場(2)
新涼や友の退院見送りぬ(2)
鰯雲明日はどこへ行くんだろう(1)
 
本田柑子
手際よくヒゲ剃り終えしちちろかな(3)
息つめて本を読みたる野分かな(2)
 
高津按庵
チェロの音に花瓶の芒揺らぎをり(3)
八月や半島にて知る作家の死(2)
 
中谷U太
蟷螂の月に向かひているつもり(3)
柿の木の下が空いてる駐車場(1)
満月や蒼き地球に眠り就く(1)
 
高橋斗白
陽の射して銀にかがやく芒かな(2)
さんま焼き年に一度の皿を出し(2)
名月の光を浴びつつ深呼吸(1)
 
加藤小麦
すすき野に風の在り処を教えられ(3)
 
仲野カモメ
床の間に芒一差し座を正す(1)
何かあり黙(もだ)せし妻の秋刀魚焼く(1)
 
横井狭間
汗涼し湖東の古刹百済寺(1)
枝豆の実がなる前に虫のえさ(1)
 
尾関太々
微風にも揺れて優しきすすきかな(1)
 
 
山口勝行選評
すすき野に風の在り処を教えられ/小麦
だだっ広い芒原、かなたを見やると芒の穂が波立っている処がある。あ、風は今あそこ在るんだなぁといったところ。すすきと風と作者の立ち位置を巧みに詠んだ小麦のこの句を、今回の最優秀句としました。
 
添削した句をいくつか。沓九郎の「すすき野に見えては隠る野球帽」は「すすき野に見え隠れして野球帽」に。同じく沓九郎の「逃げるように一人来し宿星月夜」は「逃げるかに一人来し宿星月夜」、斗白の「名月の光を浴びつつ深呼吸」は「名月の光浴びつつ深呼吸」に。この2句、字余り・字足らずは絶対に駄目とまでは言いませんが、まずは五七五に収まるよう推敲してください。
 
みさちーたの「眺めけり風の足跡花すすき」は「眺めゐる風の足跡花すすき」としました。この句は最優秀句とした小麦の句に通じるものがありますが、ひとひねりした表現力、俳句としての完成度となると小麦となります。
 
異論はあるやもしれませんが、U太の「蟷螂の月に向かひているつもり」、よく目にする昼間の蟷螂の方がより実感がわいてきます。思い切って「蟷螂の日に刃向いているつもり」としました。藻六の「生足の散歩ためらふ今朝の秋」はひとシーズン遅らせ(今朝の秋)を(今朝の冬)に。今頃ですとまだためらふには早すぎます。
 
字面というのも大切です。藻六の「農耕のいつもの暮らし祭りあと」、句意の淡々とした風情には(農耕)という字は少し硬くて重い印象、(野良に出て)としました。句に合った別の表現法はないか、考えてみてください。
 
柑子の「手際よくヒゲ剃り終えしちちろかな」は「手際よくヒゲ剃り終えしちちろ鳴く」としました。さらに太々の「朝方の静寂なりし虫の声」は「朝方の静寂(しじま)に虫の声澄める」に。それぞれ(鳴く)(澄める)と加筆することによって、動きのある臨場感がより強くなります。原句と添削句を読み比べてください。
 
 
句会を終えてひと言
 
トップ賞、明後日15日は敬老の日なので藻六に譲ってやりました。奥床しい私なりの、敬老精神の発露です。今年の夏は「記録的豪雨」でした。それにならって、いつかはかってない「記録的俳句」を作るぞ! 最近「人生を駄目にするクッション」という、サイコロ型のやつを購入。毎夜、本を片手に寝てしまうという日々。みさちーたの「文庫本伏せて寝息の夜長かな」に共感しました。いい歳をして終電をやり過ごしてしまった時の句、「終電を指差す先に虫の音」、電車が消えていき、駅員の指差すその先に虫の音色が。実に切なかった。この句が0点なのも切な~い。(智昭)
 
ちちろが自分でヒゲを剃る? そんなことないやろが。ハハ、分かっとります、冗談ですがに。ヒゲを剃り終えたところでちちろの声に気付くというか、耳を傾けるっちゅうか、そういうことでっしゃろ。柑子の「手際よくヒゲ剃り終えしちちろかな」を選びました。ヒゲ剃りとちちろの組み合わせの妙でんな。それがしの自信句、なし! 逆に言えば、全部自信句!(一筋)
 
いろいろなイメージがあり面白かったが、自分に分からぬ語句があると選句からはずしてしまい、あとで聞いて、もう少し勉強しないとと反省(するフリ)をしています。(例:ちちろがこおろぎのこととは! それ知ってたら、点を入れたのに)。このところ土日は大荒れ、せっかくの休みなのにどこにも行けない所在ない気分がよく出ていると思った。仁誠の「ハイボール泡の音聞く野分中」が特選。夕方、洗濯物を入れようと裏に出たら、シマグロヒョウモン(?)のような蝶が二羽、重なるようにふらふらと飛んでいた。春とは違う趣き。それを「夕日浴び畑につがいの秋の蝶」としたが、イマイチ。これでは秋の蝶のたそがれ感がでとらん。誰れか上手に添削してほしいわ。(按庵)
 
今日は2句に4人から5点、うれしかった。又、次回も頑張ろう。秋になってある半島へ旅に出た。そこでふと立ち寄った飯屋にあった雑誌で作家の死を知りガク然。そんなことがあったので、按庵の「八月や半島にて知る作家の死」に痛く共感。喫茶店で昔よく聴いた聖歌が流れていて疲れがとれていくようだった。外に出ると野菊が。そこで「なつかしき聖歌流るる野菊かな」、聖歌と野菊の組み合わせに無理があったか、得点ゼロでした。(柑子)
 
「風に揺る芒窓掃くローカル線/智昭」、自分もガタゴト列車に乗って田舎を走っているような気分になりました。ああ旅に出たい……。読書の秋とは言いますが、何かと忙しく、現実はこんなものではないでしょうか。自信作の「文庫本伏せて寝息の夜長かな」ですが、思ったほど共感は得られませんでした。日常生活の中で目に飛び込んできたものや一瞬の気持を句にしたため、句会で悠然と発表…と粋にいきたいところですが、現実はいつもドタバタで作り、あたふたと句会へ。もっと句を生活に!(みさちーた)
 
自分では上出来と思っても、なかなか人にとってもらえない、まぁ、そんなものか。俳句の中から芒が出てきそう、斗白の「陽の射して銀にかがやく芒かな」に点を入れた。不思議なもので、ちょっとした音がある方がより静寂が際立つ。そこらあたりの機微を「朝方の静寂なりし虫の音」とまとめてみた。これぞ聞こえてくる静寂、静寂を聞く世界です。分かりますかね。(太々)
 
前回はお休み、投句したけど選ばれず消沈。ま、そういうこともあろうということで自分を慰めました。どうも私は「景」が上手く掴めず、句が「説明的」になる傾向がある。けど少し弁解すると、“説明せにゃ分からんだろう”という気がどこかにあるんです。これじゃダメです~う。ローカル線、窓の外に広がる芒の群生、それがまるで掃くかのように車窓に迫ってくる…。智昭の「風に揺る芒窓掃くローカル線」に票を入れた。帰宅すると何やら仏頂面で魚を焼く妻。ここであれこれ訊いてはいけません。何事もなく有難く美味しく頂く。焦げ具合も話題にする。これぞ35年のあ、うんです。それでもって秘かに「何かあり黙(もだ)せし妻の秋刀魚焼く」と詠めばいいんであります。これぞ人生のあ、うん。(カモメ)
 
選句されてもされなくても一喜一憂しない、自分が納得できる句ができればと思う今日この頃。そう思えるようになったというのは、少しは進歩しているということか。虎の威は借りたくないが、名月の威はwellcome。「名月の威に叢雲の払はるる」、この先生の句にvery good! 自信の一句は「堤防に彼岸花映ゆ婚の列」。南吉の故郷、ごんギツネの里には彼岸花で真紅になる堤防があり、時として白無垢の花嫁行列が通ります。(仁誠)
 
赤とんぼのホバリングねぇ、そいでもって人間に話しかけるなんざ面白い着想だと思ってを打ったら、なんと先生の作だった。意外! もっと若い人の句だと思った。「赤とんぼ会話したげにホバリング」です。ミイとしては不本意ですが、仕方ない、明後日は敬老の日なんでよしとします。日頃ご指導いただいてるんで、ささやかな贈り物ということで。年寄り同士の老老敬老? じゃかまし~い!(藻六
 
やっぱ秋はいいなぁ。春も嬉しいけど、歳をとってくるとやっぱ秋かなー。普段は働くことしかしらないまじめな農夫、年に1回だけの祭りではじけ、そのあとはいつもの地道なくらし。昔の日本人はこうだったと思わせてくれる、重厚な叙事詩になってる(ちょっと褒めすぎか)藻六の「農耕のいつもの暮らし祭りあと」が特選。2ヶ月前から始めた朝のウォーキング。何か句のネタはないかと歩いていたら、聞こえましたぁ~! 「わしゃただの雑草だけどよー、今朝はおしゃれしとるでねー」の声。自信句「白露を載せて雑草誇らしげ」です。(沓九郎)
 
なっちゃんが入院と聞いてびっくり。早く元気になってまた句会に帰ってきてねー、待っちょるけん。本日は全く不調だったが、最後に先生が最優秀句に選んでくださり、気持がいっきにハッピーになりました。あちきはこの手の句が好きなんすよー、一筋の「案山子かと思えば農夫こっち来る」。な、な、なんと、案山子が歩いてくるではないか!! という驚きとおかしみ、これっす。くそっ、誰れもとってくれんかったけど、「青絵の具空いっぱいに秋広げ」が今日のイチオシでありんした。(小麦)
 
 
今月のおしらせ  
 
ちょい呑み会(藻六んち)』 
9月27日(土) 18:00~ 参加料1,000円
 
 
月刊花火句会 これからの刊行予定
 
9月29日:2014年9月増刊号
『花火句会 自選三十句』第3回:御酒一筋と本田柑子の巻
 
10月18日:2014年10月号
『10月定例句会(10月11日)報告』
 
 
句会の予定
 
【日 時】 2014年10月11日(土) 18:00~
【会 場】 金山アカデミーセンター4F
【兼 題】 『』を含む当季雑詠5句
 
◆投句料は不要、投句される方は、メールにてお願いいたします。
◆作者名は本名でも俳号でもかまいません。
◆投句数は5句以内でお願いいたします。
◆締切りは10月9日(木)とさせていただきます。
◆投句いただいた作品の内、句会での入点句は、次回のブログにて発表させて
  いただきます。
◆受付メールアドレス:haikuhanabikukai-aichi@yahoo.co.jp
 
 

 
 花火句会 自選三十句
 
 
第2回 深井沓九郎と河村仁誠の巻
 
 
 其の三 深井沓九郎  
 
 
<新年>
 
添書きはせぬが添書き待つ賀状
久々に食卓埋まり雑煮膳
三ヶ日ひごと変わりし街の顔
御降りや路面電車の二本線
年賀状待つ子ポストへ二度三度
 
<春>
 
日向ぼこ皆幼子の顔になり
ワンサイドゲームの監督懐手
風光る声一段と補欠の子
釣り人の浮き見失う花筏
名物も名所もなき里春来たる
日曜日妻の朝寝の邪魔はせず
 
<夏>
 
来る夏に少し覚悟のいる初老
夏帽子脱ぎ黒髪の振り落ちぬ
若き日ほど心踊らぬ夏果てぬ
インド人偉く思える猛暑かな
争いし国も知らぬ子敗戦日
水滴を丸く弾けり熟れトマト
 
<秋>
 
秋晴れて出席に丸同窓会
苛立ちの焦げ目秋刀魚につけて焼く
散りてなほ風情生まるる山紅葉
満腹に気づく間も無しとろろ飯
あるはずとあたり探して金木犀
ビル群を影絵に変えて秋の暮れ
 
<冬>
 
大切な人また逝きし年送る
好きな具を譲りカップルおでん鍋
同郷の者で集まり猪の鍋
冬ざれの街宅配の飛び歩き
冬晴れや発電風車ゆるゆると
土産屋の品入れ替えて冬支度
 
 この原稿は会社のデスクで甲子園の決勝を横目で見ながら書いています。
高校野球は間違いなく清々しいのですが、いつも違和感を感じることがあります。それは、たまに目にするあるタイプの監督。大ピンチを招いたり、大逆転を喰らったのにニコニコ笑っている監督です。なぜ無理矢理に笑顔なのか。職場の仲間に問うてみました。
答① 選手をリラックスさせようとしている(作り笑いなんかでリラックスするか?)
答② あまりにテンぱって訳がわからなくなっている(肝っ玉ちっちゃ―)
答③ Mでいじめられて喜んでいる(そんなやつおらんやろ―)
答④ 日頃から選手に常に笑顔を忘れるなと言っているので範を示している(ま、良い心掛けだけどね)何にしても理解不能。
ずっと頑張ってきた選手たちだから、プレッシャーのかかる場面も正面から受け止めて欲しい。ピンチなら必死の形相をしろ、逆転されたら怒れ、悔しがれと言いたい。ニコニコ、リラックスする必要なんて全くないでしょう。崖っぷちの時に作り笑顔の監督ほど気持の悪いものはありません。
てなことを話しながら観た決勝戦は三重の逆転負け。地元というのもあるけどエリート校ではない三重に勝って欲しかった。ゲームセットの後は爽やか。
 
そこで一句。
 
 泣き顔も笑顔も日焼けて球児たち
 
 これで30句です。

 
 
 
 
 其の四 河村仁誠  

 

 
花火句会に誘ってもらい句会初参加は20097月、以来丸5年が経過。
入会1~2年経過辺りからご多分にもれずスランプに陥り、堂々巡りの日々。そのなかで辿りついた答えは、多作が何よりの上達の道だということ。そして多作の環境を自ら構築するべく20131月に俳人協会系列の伊吹嶺に入会。またほぼ同時期に現代俳句協会インターネット部会へ投句を開始、それ以降毎月50句のノルマを四苦八苦しながら作っては見直す毎日、その中で残るのが20句程度という状況です。
最近はポツポツと本当にポツポツと選に入るようになり、花火句会の山口賞同様選者の講評が大きな励みとなっています。そして今回の自選に際し、その講評を添付させていただきましたので見てやってください。
 
新年
 
①門付けの気配や二羽の初雀
~正月早々すずめが向き合ってチュンチュンチュン
②縁起物ひとつ身に付け初句会
~縮緬ウサギを身につけて参加、でも結果は惨敗。
③初東風や日の丸なびく護衛艦
~正月に見た護衛艦の勇姿、日本を頼みます!
 
 
④春暁や米炊く匂ひ漂へり
東の空がほのぼのと白みかける頃、ふと気が付くと厨から炊飯の匂いが漂ってきたという。季語「春暁」の言うにいわれぬ懐かしさをうまく捉えている。<中日俳壇 講評>
⑤春雷を消す爆音の丘に立つ
~普天間飛行場を見下ろす嘉数の丘にて
⑥梅の香を手話穏やかに伝えけり
手話で伝えたいものが梅の香りであるというのは発見です。そして「穏やかに」は説明になってしまいました。この場の雰囲気を伝えるもっといい形容詞がありそうです。惜しい、と思いました。現代俳句協会 講評>
⑦中指を挿して種蒔く深さかな
実際に農作業をしている人ならではの句。見事な着眼です。<花火句会 山口賞講評>
生垣の背伸びはじまる卯月かな
植物の生長を(背伸び)としたことで、いきいきとした様子が目に浮かんでくる。この句の良さは写生に徹していること、日頃の観察力の確かさを感じさせます。<花火句会 山口賞講評>
⑨二ツ目の人情噺聴く日永
~墨俣さくら祭りでのんびりと落語を楽しんだ一日。
 
 
⑩勤行の袈裟浮き出でて明け易し
「大垣市芭蕉蛤塚忌全国俳句大会入選」 
⑪日焼顔兄に勝りて鼻高し
ちょっと古めかしい懐かしさを含んでいて、そこにひかれました。あれこれ説明する必要のない句といえます。熱中症の心配や放射線で外遊びもままならぬという話を聞くにつけ、真夏の子供達には本来こうあってほしい、そんな気もしました。<花火句会 山口賞講評>
⑫片蔭に朝市仕舞う農婦かな
「水とおどりの里郡上八幡俳句大会入選」 
⑬短夜や村上春樹に長き列
「短夜や」ときっぱり切ったところが決まっているし<村上春樹>に続く<の本>が省略されているところなど,すっきりした調べが心地よい。<伊吹嶺 特選講評>
紅筆を残し稚児発つ夏座敷
歌舞伎座に単衣の並ぶ初日かな
~実は御園座を歌舞伎座に替えて詠んだ句。
卯の花や鯖街道は十八里
「鯖街道」は若狭国から京都に至る街道。主に鯖を運んだことからこの名が付けられたそうです。そして「卯の花」はちょっとした山野で見られる清楚な花、生活者に近い花。「鯖街道」との取り合わせに惹かれました。簡潔に書かれた姿の良い句。現代俳句協会 講評>
ゴム長の犇く市場明易し
~早朝の常神漁港での賑わいを見て
⑱星砂を探す少女や夏の月
~沖縄恩納村にて
幸福をもたらすという星砂を夏の月に照らされた浜辺で探す少女 <中日俳壇 講評>
⑲指笛にはじまる島の踊りかな
~全島エイサー大会にて
 
 
⑳石橋の色変はり行く秋の声
「熱田神宮賞」 
新涼を手配して待つ退院日
~お母さんの退院日に
大振りの茶碗に代えて今年米
~ダイエット一時中断してでも喰う
見舞客絶えて窓辺に赤蜻蛉
夕方の寂しい病棟、窓ガラス越しに外を見ている患者、ガラスを 伝うようにして舞う赤とんぼ。情景が上手く描かれている。患者の心象風景はいかなるものか。<花火句会 山口賞講評>
走り根を埋め尽くして銀杏散る
~地元津島神社のご神木を久しぶりに見て
 
 
山積みの蜜柑転がるサカエ地下
~歩いていたら突然蜜柑の山が崩れ皆さん大慌て
蹴り出しぬ湯たんぽ探る夜明け前
~確かはじめての「山口賞」
炊き出しの列整然と冬の月
被災地でしょうか、それとも都会地のホームレスでしょうか。(冬の月)の寂寥感、厳しさが伝わります。(整然と)が余計にその情景を際立たせ、効果的です。<花火句会 山口賞講評>
丈六の鼻に手を入れ煤払い
~丈六とは大仏さんのことです。
隙間なく薪積みあげて冬籠り
~岐阜にある友人の別荘にて
耕運機泥を落として冬に入る
立冬の情景がまざまざと浮かんできて、良い句だと思います。ふと目にしたであろう「泥を落とした耕耘機」に冬の到来を感じさせます。<花火句会 山口賞講評>

 
 

 
 
月刊花火句会 これからの刊行予定
 
9月20日:2014年9月号
『9月定例句会(9月13日)報告』
 
9月29日:2014年9月増刊号
花火句会 自選三十句』  第3回――御酒一筋と本田柑子の巻
 
 
句会の予定
 
【日 時】 2014年9月13日(土) 18:00~ 
【会 場】 金山アカデミーセンター4F
【兼 題】 『(すすき)』を含む当季雑詠5句

 
 
◆投句料は不要、投句される方は、メールにてお願いいたします。
◆作者名は本名でも俳号でもかまいません。
◆投句数は5句以内でお願いいたします。
◆締切りは9月11日(木)とさせていただきます。
◆投句いただいた作品の内、句会での入点句は、次回のブログにて発表させて
  いただきます。
◆受付メールアドレス:haikuhanabikukai-aichi@yahoo.co.jp

 
 
※この度は、発刊が遅れ大変申し訳ございませんでした。
 

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