月刊花火句会

花火句会は2004年夏、花火シーズンの真っ只中で発足しました。 集まったのは、当時40代から60代の10名余り、全員がそれまで俳句なんぞ作ったことがないというど素人ばかり、それでも俳人山口勝行氏の指導を得て、月1回の句会、年1~2回の吟行を行っております。 句会は、参加者が事前に用意した兼題1句を含む当季雑詠5句を提出、全員で選句します。 選句された句は、入点句として、次回の会報で発表されます。 会員による選句とは別に、山口勝行氏選の優秀句(1、2句)は、山口賞となります。 句会後には、自由参加で懇親会もあり、当日の会員の句を褒めたりけなしたり、まさに議論百出です。

2014年01月

 
時空を超えた俳人への手紙⑩ 
 
 
 
参茶より渥美清(風天)様へ
 
 
「山あれば山を観る 雨の日は雨を聴く 春夏秋冬 あしたもよろしく ゆふべもよろしく」、
「風ふいて一文もない 人のなさけが身にしみる火鉢をなでる すみれたんぽぽさいてくれた」、
「ふつとふるさとのことが山椒の芽 枯草、みんな小便かけて通る 年とれば故郷こひしいつくつくぼうし」、
これは山頭火ですよね。なんか「男はつらいよ」の寅さんの名調子に似てると思いネット検索した。
 
でた「おう労働者諸君!今日も一日ご苦労様でした。さあ明日はきっとからっと晴れたいい日曜日だぞ」、
いいかあ、人間、額に汗して、油にまみれて、地道に暮らさなきゃいけねえ。そこに早く気が付かなきゃいけねえんだ」、
俺はな、学問つうもんがないから、上手い事は言えねえけれども、博がいつか俺にこう言ってくれたぞ、自分を醜いと知った人間は、決してもう、醜くねえって」・・・・
 
似てないか、山頭火は文部省推薦の教科書に出てくるが、寅さんシリーズは文部省推薦映画でもなかったし、教科書にも載ってなかったよね。
 
最近読んだ本、「風天」渥美清のうた、帯に「えっ!寅さんが俳句!?俳号は言わずとしれた風天」
その中に山田洋次監督の思い出話しが、「撮影のあいまにこんな物語をやりたいんだけど、という話をよくしたものです。それに対して面白そうに笑ったり、なるほどね、と感心したり・・・。その反応でこの話はいけるな、それほどじゃないなと確かめるんです。あるとき、寅さんが旅先で山頭火みたいな放浪のお坊さんと一緒になったらどうなるかしら、と言ったことがありますよ」「寅さんは、その乞食坊主を哀れがって、なけなしの金をはたいてご馳走したりする。旅を続けるうちに坊主が俳句を好きなことがわかって、その作品を読ませてもらうが寅さんは「こんなのダメだよ。まるで俳句になってねえよ」と言う。坊主が『じゃあ、どんなのがいいんだ』と言うと、寅さんは、『こんなのどうだい。五七五にうまくはまらねえけど』とその場で思いつきを口にしてみせる。坊主はそれを聞いてひどくびっくりして『それ、いい句だよ。あんた俳人になれるよ』と感動したという話」「そんなときに寅がペロペロッて口ずさむのは俳句かな?と聞くと渥美さんは『そりゃ、こんなんでしょう』と即座に口にしたんです。具体的にはわすれたけど・・・・要するに、飲み過ぎて下痢をして朝、ウンコをしたら夕べ食べたトマトのタネがいっぱいあった、という俳句。ハハハ・・」
その後、ちゃんと落ちまであります。
 
風天の句の中で山田監督のお気に入りの句は、
『お遍路が一列に行く虹のなか』
『村の子がくれた林檎ひとつ旅いそぐ』
『そば食らう歯のない婆(ひと)や夜の駅』
『初めての煙草覚えし隅田川』
との事です。
 
私は寅さんシリーズを教科書に生き、失恋した時は寅さんを見習い、明日は明日の風吹くあれよあれよで今年還暦です。
監督最新作『小さいおうち』を1000円で観るつもりです。
 
参茶
 
 
 
 
月刊花火句会 これからの刊行予定
 
2月10日:2014年2月号
『2月定例句会(2月1日)報告』
2月27日:2014年2月増刊号
『時空を超えた俳人への手紙⑪』 山田夏子/やなせたかし
 
 

次回の予定
 
【日 時】 2014年2月1日(土) 18:00~
【会 場】 中華料理店 萬珍館(熱田区金山町)
【兼 題】 『余寒(よかん)』を含む当季雑詠5句
 
 

【日  時】 2014年1月4日(土)
【会  場】 萬珍館(熱田区金山町)
【出席者】 勝行先生、一筋、按庵、小麦、仁誠、カモメ、藻六、柑子、沓九郎、智昭、タタ、狭間、三枝、夏子(以上14名)
【投句者】 U太、十里(以上2名)
【兼  題】 『水仙』を含む当季雑詠5句
 
参加者14名という大盛会の正月句会。今回から会場となった萬珍館(中華料理店)で用意されていたのは10席のコーナー。よって席をつめ合い、肩を寄せ合っての句会でした。これはこれでまた楽しですが、メタボ系の約二名にはきつかったかもしれません。
 
狭間が実に2年半ぶりにひょこっと顔を見せてくれました。元気そうなのはよかったけど、ブランクが長くて句会のやり方も忘れたみたい。ご本人が俳句の師と仰ぐタタにあれこれ教えてもらっておりました。ミュージシャンとしてなら文句なしですが、俳句の師としてのタタはどうなのか。一部から疑問符(難癖?)がつけられたようですが、狭間さん、気にせずによろしかったらまたお越し下さい。
 
はるか昔の小学生時代なんかには遠足の集合場所とか時間を間違えるやつがいたものですが、この花火句会にもいました。あれほど口を酸っぱくして「次回の会場は金山」と云ってるのに、栄の教育館に行った輩がいました。あわててタクシーで駆けつけたようですが、こんなんで社長業が務まるのでしょうか。カモメのご意見はいかに? 
 
投句者を含めて16名の盛会ということは80句の中からの選句ということで、まさに激戦。結果は16点で小麦と仁誠が同着首位、以下夏子12点、沓九郎11点、藻六9点と続きました。何といっても2014年初の正月句会、小麦と仁誠には一応おめでとうと言っておきます。
 
新年会になったら参茶も参加。料理、酒、談笑でまたまたの大盛会。ただ計15名ともなると全員揃っての談笑は無理。結局3グループくらいに分かれて、それぞれ思い思いの話題で大いに盛り上がったようでした。そして9時過ぎに散会、三三五五金山総合駅へと向かった次第です。
 
それでは皆々様、本年も花火句会をよろしくお願いいたします。
 
 
一席  
着ぶくれて抱っこ抱っこの四等身/小麦
トロ箱に水吹き上げる寒蜆/仁誠
 
三席 
恩師より届く賀状のか弱さよ/夏子
 
 
今月の入点句(一~三席を除く)
 
6点句
起きぬけに灯油入れたる二日かな/柑子
 
4点句
初明り俄に鶏のけたたまし/藻六
綾線の雲に溶けゆく冬の山/沓九郎
野良猫の来て水仙の香を放つ/小麦
書き初めの馬の字走り出しそうな/小麦
窓開けて閉めるに惜しき水仙香/仁誠
 
3点句
母の出す喪中はがきの寒椿/夏子
夜更けまではしゃぐ子の声大晦日/夏子
人垣の出てはすぐ入るどんどかな/仁誠
水仙の語り合(お)うたる庭の隅/一筋
ひさかたに食卓埋まり雑煮餅/沓九郎
 
2点句
礫(つぶて)にも遍(あまね)く届き初日影/勝行
古里は冬の銀河の尾の辺り/勝行
松籟に水仙の香の紛れざる/勝行
獅子舞に競ひ差し出す頭かな/仁誠
葉牡丹に鱗の光る糶場かな/仁誠
荒海や水仙の白澄み渡る/藻六
ここよりは立入禁止山眠る/藻六
積年の努力見てをり水仙花/カモメ
御手洗(みたらい)の手拭い揺れし初詣で/カモメ
和を持ちつ自立尊ぶ野水仙/小麦
庭先に純粋きわだつ水仙花/タタ
陽だまりや行っちゃったみたいお正月/一筋
大いなる覚悟を決めて寝正月/智昭
冬晴れや発電風車ゆるゆると/沓九郎
風花や昔の人に会ふつもり/U太
 
1点句
冬萌えの彼方にみえし山社殿/按庵
菩提寺の更地となりて年の暮/按庵
初詣人波の中手をさがす/三枝
初夢の続き見たくて二度寝する/三枝
水仙花人それぞれに思いあり/夏子
人のはけ午後の参道日脚伸ぶ/夏子
窓の外今か今かと年賀状/十里
我庭のスイセン一輪ビンに挿し/十里
断崖の水仙誰(た)がのために咲く/沓九郎
三ケ日日毎変わりし街の顔/沓九郎
初詣で寺社の多きに苦笑い/カモメ
首すくめぐいと飲み干す隙間風/藻六
1月の駅のホームに凛と立ち/智昭
熱燗の加減わからず下戸の酌/勝行
顔面に凍てつく道の刺さりくる/小麦
水仙をいけたる部屋の凛として/一筋
水仙や天使のごとき笑顔かな/タタ
 
 
山口勝行評
野良猫の来て水仙の香を放つ/小麦
(香を放つ)を(香を放ち)と添削しましたが、小麦のこの句を今月の最優秀句としました。水仙と野良猫という組み合わせの絶妙さ、まさに演出効果満点といえます。
 
久しぶりに顔を見せた狭間の「土手草の中一輪キラリ黄水仙」の句。(水仙)は冬・新年の季語ですが(黄水仙)は春の季語です。注意してください。文字数も整えて、「土手草に一輪キラリ黄水仙」とすれば俳句らしくなります。
 
三枝の「初夢の続き見たくて二度寝する」。この句にわたくしも点を入れましたが、「初夢の続きを見んと二度寝せし」とすれば句がより滑らかになります。俳句は口の中で何度も反芻することが大事です。
 
前にもあったと思いますが、沓九郎の「ひさかたに食卓埋まり雑煮餅」の句。(ひさかた)は光、天、空などにかかる枕詞、久しぶりという意味とは違います。「久々に食卓埋まり雑煮餅」としました。
 
小麦の「顔面に凍てつく道の刺さりくる」。(道が刺さる)に首をかしげました。「顔面に凍てつく風の刺さりくる」と改めました。
 
一筋の「水仙の語り合(お)うたる庭の隅」。いわゆる擬人法ですが、できれば俳句では避けたいところ。「水仙の語り合(お)うかに庭の隅」としました。
 
点を集めた夏子の「恩師より届く賀状のか弱さよ」。作者としては詠嘆を込めて(か弱さよ)としたと思われますが、そうした情感は読む者に任せ、筆勢が弱いということで「恩師より届く賀状の手の弱き」としたい。
 
タタの「水仙や天使のごとき笑顔かな」。(や)と(かな)という切字が二つ。これでは句が二つに分断され焦点がぼやけます。(天使のごとき笑顔)が作者の強調したいものとみて、「水仙の天使のごとき笑顔かな」にと添削しました。
 
 
句会を終えてひと言
 
自信句「海風に水仙ゆれる一本道」には最後まで点が入らず、ガックリ。今日は全然ダメ、やっぱり俳句はむずかしい。いつものように早く寝なさいと言われないので、大晦日は子供にとっても特別日、夏子の「夜更けまではしゃぐ子の声大晦日」を特選にしました。(三枝)
 
人数が多くて句も多いのに、その割には選ばれる句が片寄るのが面白かった。いい句は誰れにとってもいいということか。桜やドウダンツツジの名所も冬はひっそりしている。が何故か葉のない樹々の群れがぼんやりとした色に見えて、心よかった。それで歳時記を見てみたら、まさにぴったりの季語“冬萌”があったので「冬萌の彼方にみえし山社殿」の句にした。これ1点だけ、ま、いいか。藻六の「初明り俄に鶏のけたたまし」に音楽的な響きを感じ点を入れたが、わっしゃとしては鶏は(とり)じゃなく(ケイ)と読みたい。理由? そんなん知らん!(按庵)
 
ずいぶん久しぶりの参加で段取りが分からず、お手数をおかけしました。わが俳句の師タタに教えてもらいながらの句会でした。どなたかに“師匠を替えたら”と言われましたが、そうはいきません。そのタタ師匠の「庭先に純粋きわだつ水仙花」を選びました。日頃の忙しさの中、時折水仙を見て、ああそうだなという感じがします。自宅前の雑木林の土手草の中に一際目立つ水仙が一輪あったのでそれを詠んだのですが、先生から季語の間違いを始め、数々のご指摘をいただき、俳句の難しさを感じました。(狭間)
 
「着ぶくれて抱っこ抱っこの四等身/小麦」が特選。幼な子を四等身と詠んだことで、より情景が目に浮かびます。正月らしさが年とともになくなってきている世の中。一日はまだ今でも正月らしいけど、二日、三日となると…。そこで詠んだのが「三ケ日日毎変わりし街の顔」。正月からいつもの日常へ、世の中立ち直りが早いね。(沓九郎)
 
キラリと光る句が多々あり、楽しい句会だった。努力という言葉と水仙の姿が重なり合い、とてもすがすがしい気持ちにさせられたので、カモメの「積年の努力見ており水仙花」に点を入れました。高得点だった私の「起きぬけに灯油入れたる二日かな」。実際にあった事をそのまま句にしたまで。(柑子)
 
年末に祖母が亡くなり、美しいものが好きだった祖母には白黒のハガキはあまりにも淋しいと、母に頼まれて喪中ハガキにピンクの寒椿を入れました。「母の出す喪中はがきの寒椿」です。この句を含め、今日は多くの句の中で自分の句をたくさん選んでもらえて嬉しかった。ありがとうございます! これからも頑張ります(^^)/。初詣の様子でしょうか、人でごった返すお決まりの風景、小麦の「着ぶくれて抱っこ抱っこの四等身」が特選です。(夏子)
 
今年の私のテーマは「走」。干支同様、考えながら走り続ける一年にしたい。という訳で、初句会に欠席すると一年間欠席するような気がして、走ってやってきました。元旦早くに金山駅に出かける用事があり、無人の駅で清々しい気分になりました。今日の自信句は「一月の駅のホームに凛と立ち」。この気持を一年中持ち続けたいものです。(智昭)
 
今日の自信作は「窓開けて閉めるに惜しき水仙香」。風がない正月の昼下がり、空気の入れ替えで窓を開けた時、水仙の香りが漂っていました。選んだのは先生の「松籟に水仙の香の紛れざる」。水仙群を見ることができる日本海に面した国道の駐車場の周りには防風林の松並木が。そこから松籟とともに水仙の香り、そんな情景でしょうか。今日は5句すべてを皆さんに選句していただき、同点ながら一席にも。実に縁起の良い初句会でした。(仁誠)
 
やったー!! 一席と最優秀句だー!! こいつは春からえんぎがいいぞー!! 夏子の「母の出す喪中はがきの寒椿」に共感した。父が亡くなり、母が欠礼のハガキを出している、そこに描かれた寒椿にそこはかとない悲しさと淋しさが感じられ、しみじみします。アチキの父が逝った時の、母の心情にも重なりました。(小麦)
 
中華料理店での句会、今宵は老酒を飲みませう。“一杯一杯腹一杯”“イーペーイーペーフーイーペー”、明日は宿酔が心配(シンペー)だぁ。正月が終るのは少し寂しいなぁと、陽だまりの部屋で詠嘆しているオイラ。それで「陽だまりや行っちゃったみたいお正月」。この句に点を入れるとしたら、小麦はともかく藻六だろうなぁと思ってたら、その通りだった。分かりやすいご仁だぁ。そもそもこの寒いのに何で窓開けるんやぁという突込みはおいといて、仁誠の「窓開けて閉めるに惜しき水仙香」に◎を打ったりやした。感謝せえよ。(一筋)
 
一寸先は闇、将来は勿論、世の中も人のことも所詮は不可知だとは思うけど。自信句「初明り俄に鶏のけたたまし」、この句に按庵が点を入れてくれたのには感謝するが、鶏を(とり)じゃなく(ケイ)と読めという。何じゃそれ! 奥美濃にはとり肉を使ったトンちゃん風の「ケイちゃん」という料理があるけど、まさかあっしの秀句とそれを混同しとるんじゃないだろな。この人訳分からん、不可知だぁ!(藻六)
 
今年の初句会、会場を間違え、いきなりのペケ。これでは先が思いやられる。いや、いや、何のこれしき、めげてなるものか。昨年暮れにおでんの句で高得点だったのに気をよくして、今年ははじけるぞ。長男が資格試験に合格、彼の努力を称えるとともに浮かんだのが「積年の努力見てをり水仙花」。この句を特選にとってくれた人がいて余計に嬉しかった。今年の正月の冷え込み、寒さのほどが上手く句に表われている柑子の「起きぬけに灯油入れたる二日かな」が特選。(カモメ)
 
 
月刊花火句会 これからの刊行予定
 
1月30日:2014年1月増刊号
『時空を超えた俳人への手紙⑩』 参茶より渥美清(風天)へ
2月10日:2014年2月号
『2月定例句会(2月1日)報告』
 
 
次回の予定
 
【日 時】 2014年2月1日(土) 18:00~
【会 場】 中華料理店 萬珍館(熱田区金山町)
【兼 題】 『余寒(よかん)』を含む当季雑詠5句
 
 
 

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