時空を超えた俳人への手紙⑩
参茶より渥美清(風天)様へ
「山あれば山を観る 雨の日は雨を聴く 春夏秋冬 あしたもよろしく ゆふべもよろしく」、
「風ふいて一文もない 人のなさけが身にしみる火鉢をなでる すみれたんぽぽさいてくれた」、
「ふつとふるさとのことが山椒の芽 枯草、みんな小便かけて通る 年とれば故郷こひしいつくつくぼうし」、
これは山頭火ですよね。なんか「男はつらいよ」の寅さんの名調子に似てると思いネット検索した。
でた「おう労働者諸君!今日も一日ご苦労様でした。さあ明日はきっとからっと晴れたいい日曜日だぞ」、
「いいかあ、人間、額に汗して、油にまみれて、地道に暮らさなきゃいけねえ。そこに早く気が付かなきゃいけねえんだ」、
「俺はな、学問つうもんがないから、上手い事は言えねえけれども、博がいつか俺にこう言ってくれたぞ、自分を醜いと知った人間は、決してもう、醜くねえって」・・・・
似てないか、山頭火は文部省推薦の教科書に出てくるが、寅さんシリーズは文部省推薦映画でもなかったし、教科書にも載ってなかったよね。
最近読んだ本、「風天」渥美清のうた、帯に「えっ!寅さんが俳句!?俳号は言わずとしれた風天」
その中に山田洋次監督の思い出話しが、「撮影のあいまにこんな物語をやりたいんだけど、という話をよくしたものです。それに対して面白そうに笑ったり、なるほどね、と感心したり・・・。その反応でこの話はいけるな、それほどじゃないなと確かめるんです。あるとき、寅さんが旅先で山頭火みたいな放浪のお坊さんと一緒になったらどうなるかしら、と言ったことがありますよ」「寅さんは、その乞食坊主を哀れがって、なけなしの金をはたいてご馳走したりする。旅を続けるうちに坊主が俳句を好きなことがわかって、その作品を読ませてもらうが寅さんは「こんなのダメだよ。まるで俳句になってねえよ」と言う。坊主が『じゃあ、どんなのがいいんだ』と言うと、寅さんは、『こんなのどうだい。五七五にうまくはまらねえけど』とその場で思いつきを口にしてみせる。坊主はそれを聞いてひどくびっくりして『それ、いい句だよ。あんた俳人になれるよ』と感動したという話」「そんなときに寅がペロペロッて口ずさむのは俳句かな?と聞くと渥美さんは『そりゃ、こんなんでしょう』と即座に口にしたんです。具体的にはわすれたけど・・・・要するに、飲み過ぎて下痢をして朝、ウンコをしたら夕べ食べたトマトのタネがいっぱいあった、という俳句。ハハハ・・」
その後、ちゃんと落ちまであります。
風天の句の中で山田監督のお気に入りの句は、
『お遍路が一列に行く虹のなか』
『村の子がくれた林檎ひとつ旅いそぐ』
『そば食らう歯のない婆(ひと)や夜の駅』
『初めての煙草覚えし隅田川』
との事です。
私は寅さんシリーズを教科書に生き、失恋した時は寅さんを見習い、明日は明日の風吹くあれよあれよで今年還暦です。
監督最新作『小さいおうち』を1000円で観るつもりです。
参茶
月刊花火句会 これからの刊行予定
★2月10日:2014年2月号
『2月定例句会(2月1日)報告』
★2月27日:2014年2月増刊号
『時空を超えた俳人への手紙⑪』 山田夏子/やなせたかし
次回の予定
【日 時】 2014年2月1日(土) 18:00~
【会 場】 中華料理店 萬珍館(熱田区金山町)
【兼 題】 『余寒(よかん)』を含む当季雑詠5句