月刊花火句会

花火句会は2004年夏、花火シーズンの真っ只中で発足しました。 集まったのは、当時40代から60代の10名余り、全員がそれまで俳句なんぞ作ったことがないというど素人ばかり、それでも俳人山口勝行氏の指導を得て、月1回の句会、年1~2回の吟行を行っております。 句会は、参加者が事前に用意した兼題1句を含む当季雑詠5句を提出、全員で選句します。 選句された句は、入点句として、次回の会報で発表されます。 会員による選句とは別に、山口勝行氏選の優秀句(1、2句)は、山口賞となります。 句会後には、自由参加で懇親会もあり、当日の会員の句を褒めたりけなしたり、まさに議論百出です。

2012年09月

 
 HANABIリレーインタビュー その⑨ 
 
 参茶による藻六インタビュー 
 
 
参茶による藻六インタビュー
9月某日、参茶奢りの中華料理店にて
 
 
参茶「今日はよろしく」
 
藻六「はいな、はいな。でさ、参茶ちゃん、おすすめの星野源聴いたぞ。7泊8日のCDで」
 
参茶「そりゃそりゃ。よかったでしょ、あれ」
 
藻六「1回目は小さな音で聴いたのよね、そしたら何歌ってんだかさっぱり分からなんだ。で2回目は大音量にしたら家族に叱られた。それから3回目を中の下でかけてみたら、少し分かったような気がした。詩人だな、あの人」
 
参茶「そうです、メロディは単調だけど、歌詞が心に沁みてくる」
 
藻六「参茶ちゃんはどう引かれるの、あれに。一度聞いてみたいな、参茶ちゃんの星野源論」
 
参茶「あのね、今日はアタシがインタビュアー、訊ねる役なんだ。それに、その参茶ちゃんというの、どうにかならんのか、気になる」
 
藻六「ハハ、一度言ってみたかったのよ、茶ちゃんって。ちゃんづけで呼んじゃ嫌よと茶々が言い、チャチャチャ~ン!」
 
参茶「(バカだこいつ)」
 
参茶「じゃ藻六に対する第1問!」
 
藻六「ちょい待ち、その質問、いくつあるの」
 
参茶「ま、一応5つばかり考えてきた」
 
藻六「じゃその第3問からいって。俳句は省略の世界だから短くいかにゃ。さ、さ、第3問プリーズ!」
 
参茶「(クソッ)第3問、藻六流俳句のつくり方」
 
藻六「いきあたりばったり! あっしの生き方と同じ」
 
参茶「それじゃ身も蓋もない、少しはインタビュアーの立場も考えろ」
 
藻六「だよね、じゃさ、実際の句でいくか。この前の句会(9月8日)に出した5句の内で。まずさ、残暑で1句作ろうと思ったわけよ。これ秋の季語で、今年の残暑は厳しかったからなぁ」
 
参茶「うん、うん、それで?」
 
藻六「頭の中で残暑、残暑って繰り返すんだけど、一向に浮かんでこない。早く涼しくなれよとか、もういい加減にしてくれとか、そんなんばっか。そこで発想の大転換を図ったわけ」
 
参茶「どう転換するのよ、それ」
 
藻六「残暑の身になるのよ、あっしが」
 
参茶「そんなんなれんだろが」
 
藻六「そこをなるのよ、成りきるんだ。オレは残暑だ、ほら、どこから見ても、残暑ざんしょ!」
 
参茶「(やっぱり、バカだ)」
 
藻六「すると別の風景が見えてくる。オレは嫌われ者の残暑だけど、こんなオレにだって生きる権利はあるんだっ!」
 
参茶「はぁ~?」
 
藻六「何しろ一年に1回きりだからさ。残暑にしたって一日も長くこの世にとどまりたい、そうした残暑の気持ちが分かるようになる。で生き残りをかけて『しがみつく』んだ。次、どこにしがみつくか。人間だったら家族とか仕事とか趣味とかあるけど、何しろ残暑だからそんなのない。だろ?」
 
参茶「うん、まぁ(何のことだ、これ?)」
 
藻六「そんな時、たまたまバス停の鉄柱にさわったのよ。そしたら熱かった。そうか、こういう処かとピンときた。そういや、小学生の頃、逆上がりでよく鉄棒にしがみついてたよなぁ。で『鉄棒』と、こうなる」
 
参茶「成程ね、それで、残暑、しがみつく、鉄棒で一句か」
 
藻六「そう、『鉄棒にしがみつきたる残暑かな』、どう、名句ざんしょ?」
 
参茶「(バカ丸出し)ノーコメント、今日は」
 
藻六「同じ句会でこんなんもある。マンガ読んでて『まろうど』という言葉を知ったのよ。恥ずかしながら知らなかった。これ、まれに来る人という意味らしいけど、いいよね、言葉の響きが何ともいえん。すっかり気に入っちまった」
 
参茶「確かに柔らかい感じがする」
 
藻六「だろ、でこの言葉使って一句できないか、そう思った。すると、まれに来る人か、そういえば学生時代そんな奴いたよなとなる。そいつね、来ると一方的に喋りまくって、じゃサヨナラまたなって。それ思い出した。じゃ話題は何かとなると、今は秋だから政治とか哲学かなと。これが仕事とか恋愛だと、別の季節になるような気がする。で、『まろうどの政治なんぞを語る秋』。これなんか、実際に見たり聴いたり感じたりじゃなく、まろうどという言葉から生まれた。どう、名句でしょ?」
 
参茶「ノーコメント」
 
藻六「句会じゃ残暑が3点で、まろうどが0点か、もうちょっと入っていいよな。いくら何でも0点はないだろ。ね、どう思う、参茶は」
 
参茶「くどい! ノーコメント」
 
藻六「かんがえてみれば参茶もまろうどだよね、句会に顔出すの年に二、三回だろ」
 
参茶「(ギクッ!)」
 
藻六「改名したら。岡田参茶改めマロード・サンチャ!」
 
参茶「はい、第4問。花火句会の会員の人物評と句について」
 
藻六「人物評はパス。あっしは争いは好まん人やから」
 
参茶「(よく言うよ、トラブルメーカーのくせして)」
 
藻六「何か言った?」
 
参茶「ナンも言ってない」
 
藻六「もちろん興味はあるよ。この人どういう仕事してんのかなぁとか何考えてるのかなとか。どういう性格の人間だろうかとか。俳句仲間なんだから、俳句以外のことはどうでもいいんだけどね」
 
参茶「そりゃそうだ、関係ない」
 
藻六「けど興味はある、人間だからさ。それでいろいろ想像したりするんだ。例えばよ、ごく浅いつき合いだけど、あっしなりの参茶像はある、勝手なイメージで」
 
参茶「それ、どんなの」
 
藻六「聞きたい?」
 
参茶「聞きたい、気になる」
 
藻六「じゃちょっとだけ。あのさ、人間をさ、誰れもが人生劇場の演者だとするとね、人間の数だけのいろんなタイプがあるわけだ。そこをカルカチュアライズしてみると自己陶酔型もあるよね。自分は素晴らしい、こんな自分をよく見ろ、分かる奴が分かりゃいい、観客は自分についてくりゃいいんだというような」
 
参茶「あるだろうね、それは」
 
藻六「一方でさ、観客のことが気になって気になってのもいると思うのよ。舞台の上で演じながら、あのカップルはもっと寄りそった方がいいとか、あの人は退屈そうとか、後ろの方で立っている人に横の人が椅子譲ったらいいのになとか。でね、参茶はこっちの方。これ、どっちがいいということじゃなくてさ」
 
参茶「周りに気を使うタイプというわけか、アタシは」
 
藻六「そ。そいでさ、何が気になって何にどう気を使うか、そこにその人なりのこだわり、独特の味わいがある」
 
参茶「その独特を聞いてみたいね、アタシとしては」
 
藻六「う~ん、当然といや当然だけど、人間も5060ともなるといろんな経験を経てきてるから、人間の弱さ、つらさ、痛みが分かってる。そこから生まれる気配り、優しさ、思いやり、そんな感じかな。同じ経験や苦労を重ねても、そうならない人もいる」
 
参茶「それ、買い被り」
 
藻六「モチよ、ヨイショしてんの。よいしょ! どっこいしょ!」
 
参茶「(クソッ)」
 
藻六「で、どうよ、あっしの参茶像? ご本人としては」
 
参茶「ノーコメント! 今日のテーマはアタシじゃなくて、アナタ」
 
藻六「ハハ、そりゃ分かってるけど、あっしなんかより参茶の方が面白そうだもんなぁ。でさ、参茶のこのタイプはあまり損得を考えないから、身近な人を結構ハラハラドキドキさせたり、時に顔をしかめさせたりするんだ。それでもやってけるのは、きっと奥さんとか家族の愛、支えだろね。これ、会ったことないけど、ご家族への、よいしょ! どっこいしょ!」
 
参茶「もういい、本題に戻れよ! 人物評はやめにして仲間の句について」
 
藻六「いつも感心させられてる、それぞれいい句をつくるよね。ただ誰れのどんな句って言われると、忘れっぽくなってるんで、直ぐにはでてこないけど」
 
参茶「じゃ最近のでいったら」
 
藻六「う~ん、
小指のみ繋ぐカップル春の宵(沓九郎)
冷酒を長く含みて本を読む(按庵)
かな。どっちも特選にとらせてもらった。理由はブログに載ってるはずだから、それ見てよ。ほかに憶えてるのは、
静々と屋根のつららが剣となる(参茶)
この句も特選にとらせてもらったよな、確か」
 
参茶「別にインタビュアーがアタシだからって、気を使わなくていい」
 
藻六「そんなんするか。あのさ、句会ってあとで分かることだけど、これがいいと思って特選にするだろ。それから作者が名乗ってびっくりすることが時々ある。えっ、これ、あんさんの句! ほんとにあんさん作ったの?」
 
参茶「あるだろね、そんなことも」
 
藻六「あって当然だよな。人間毎日生まれ変わってるともいえるんだから。この参茶の句なんか、その典型。自分でもそう思うだろ」
 
参茶「ま、少しは」
 
藻六「それまでの句と全然違う。思うに、これ、きっと参茶もどっかでバランスをとらにゃいかんから、時々気を使いすぎる自分が嫌になったり疲れたりして、星野源なんか聴いて自分を慰めてる。分かるよなぁ、この気持ってもんよ。あの歌、自分だけの世界にこもってるもんな、でもっとストレスが溜まると、チクショー、あのヤローなんて呟く。この句、そんな時にポコッと生まれたんじゃないのか。真夜中にひっそりと殺意を研ぐみたいな、そんなミステリアスな雰囲気があって、そこが気に入ったんだ。ね、違う?」
 
参茶「答える気、な~し」
 
藻六「意外性とか変化、こういうのも句会の面白さの一つだよな。ふ~っ、えらい寄り道をしちゃった。次、いこ」
 
参茶「じゃ第5問、藻六の代表句を二つ三つ紹介して」
 
藻六「そりゃ無理」
 
参茶「はぁ~?」
 
藻六「俳句始めて8年、その間7、8百句は作ってるだろ。全部名句ばかりだから、選ぶなんて無理」
 
参茶「(何が名句だ、自己陶酔型だな、こいつ)」
 
藻六「何か言った?」
 
参茶「いや。そこを何とか、でないと格好つかん。最近の、ほんの二つ、三つでいいんだから」
 
藻六「しゃあないなぁ。う~ん最近のねぇ、あの~、いかん、でてこん!」
 
参茶「はあ?」
 
藻六「わ、忘れた! あの、昔のでいい、年とるとさ、昔のしかでてこんのよ」
 
参茶「ハイ、ハイ、どうぞ、どうぞ(ふ~っ、やっとれん)」
 
藻六「では、俳句始めたばっかの、8年前の句で、
春は今夜行列車の一両目
ためらひを脱ぎすて恋の薄暑かな
う~ん、いい句だなぁ。あの、これ、誰れが作ったの?」
 
参茶「では今日はこれで」
 
藻六「あれ、もうおしまい? 第1問と第2問が無いけど、ま、いいか。で、それは何だったのさ」
 
参茶「第1問は8年前か、花火句会発足のいきさつ、第2問はこれからの花火句会について」
 
藻六「何だ、そんなことか。その答えなら簡単よ、第1問は忘れた、第2問は分からん、だ」
 
参茶「(ふ~っ)」
 
藻六「それより参茶さんよぉ、あっしは『エピソード』の中の『布団』が気に入ったけど、あなたの星野源論聞かせてよ。源ちゃんについて語り合おうよ、そっちの奢りで。安い焼鳥屋でいいからさぁ」
 
参茶「何が源ちゃんだ。あのね、そういう時は言い出した方が払うんだろが。せいぜいが割り勘!」
 
藻六「いいよ、飲み代くらいあっしでも払える。けど、本当にそれでいいのか。気配りはどうした。それじゃ参茶が参茶でなくなっちまうんだぞ。焼鳥屋の飲み代くらいで、自分が自分でなくなっていいのかっ、もっと自分を大事にしろっ」
 
参茶「(ヤレ、ヤレ、訳の分からん爺さんだぜ、困ったもんだ)」
 
藻六「何か言った?」
 
参茶「言ってない。それ考えときます。じゃ、今日はこれで」
 
藻六「こちらこそ、どうもありがとうございました。焼鳥屋、ヨロシク~!」
 
 インタビューを終わって(参茶の独り言) 
会話のキャッチボールが変な私、投げたつもりが届かず、気合い入れて投げれば方向違いの暴投。こんな私の力量をわかっているモロクさん。この日まずはこの参茶をキャッチャーよろしく座らせ、ストライクゾーンに投げては戻しのブーメラン投法。さらにはバッターボックスに私を立たせ、見事なボケとツッコミの、一人二役以上の名調子。おかげで笑いこけて眉間の皺がとれ、人相も良くなりました。お礼に焼き鳥で一杯おごります。
 
 次回は原藻六が河村仁誠にインタビューします。
 
 
 次回の予定 
 
【日 時】 2012年10月13日(土) 18:00~
【会 場】 こどもNPOピンポンハウス
【兼 題】 『』を含む当季雑詠5句
 
 

【日  時】 2012年9月8日(土)
【会  場】 こどもNPOピンポンハウス
【出席者】 勝行先生、按庵、柑子、増田、仁誠、沓九郎、一筋、小麦、上田、藻六(以上10名)
【投句者】 U太
【兼  題】 『蜻蛉』を含む当季雑詠5句
 
今回の句会、参加者10名投句者1名で、提出された計55句の中からの選句でした。毎回のことだが、選ぶのも選ばれるのもこれが仲々に難しい。1点以上の点が入ったのは32句、23句(率にして42%)には点が入らず、あえなく敗退。中にはよく読み込めばいい句もあったろうに、ああ無情、ご愁傷さまでございます。23句に合掌!
 
仁誠の総得点14点の内訳はとみると、勝行先生から4点、小麦、按庵、上田から各2点、一筋、沓九郎、増田、藻六から各1点でした。これについてはとやかく言う筋合いではありませんが、特筆すべきは唯一人、本田改め柑子(こうじ)が点を入れなかったこと。ヨッ大統領、あんたはエライ! 公平無私の勝行先生はともかく、不正不公の俗人たる我ら、ぜひ柑子を見習いたいものです。
 
句ごとの点数で見ると、最高得点は一筋の「すいと来てすすいと去りぬ鬼やんま」の6点。一方仁誠の「月白や」は5点。にもかかわらず明暗を分けたのは、一筋の得点は2句のみ、仁誠は4句、ここらあたりの差か。これ思うに、点を入れる側の俳句観や好みは別々なんで、とっておきの自信作1句だけでは勝てないということ。二番手、三番手、時には四番手、五番手と、要するに5句全部に全力傾注せよということかと。われら凡人、一句作るのにも四苦八苦してるのに、実にしんどい限りです。
 
事務局へのメールによると、投句者のU太、この九月で俳句を始めてちょうど3年だそうです。10年はやりたいけど、そこまで長生きするとは思えないしとも書いてあったとか。あと7年か、その点ではこちとらも(どちとらだ?)どっこいどっこい。ま、お互いに、続けられる限り続けるということで。投句、今後ともよろしくお願いします。
 
一席 
月白や見知らぬ路地へ遠回り/仁誠
 
二席 
すいと来てすすいと去りぬ鬼やんま/一筋
 
三席 
鉦叩きのふのつづき叩きけり/U太
 
 
 今月の入点句 
 
4点句
潮騒に紛れず虫の声高し/勝行
見舞客絶えて窓辺に赤蜻蛉/仁誠
 
3点句
ファックスののろのろ届き秋暑し/小麦
河内節小さく流れ地蔵盆/按庵
秋めくや居間にぽつんと浮輪かな/増田
秋天や歩幅の広くなりにけり/沓九郎
鉄棒にしがみつきたる残暑かな/藻六
虫鳴くや少し熱めに仕舞風呂/仁誠
 
2点句
桃買へり早や黄昏の訪れぬ/柑子
虫の音やヒゲ剃りの手暫し止め/柑子
油蝉これから道で死ぬところ/U太
若人の黙々ベース弾く残暑/按庵
おしゃべりな赤ランドセル鰯雲/小麦
中天を切り裂きやんま独航す/一筋
宇宙人めくかまきりの貌淋しめる/勝行
一礼に愁思断ち切り朝稽古/仁誠
胡弓引く手の汗みずく風の盆/増田
来し方を問わず語りに秋灯下/藻六
 
1点句
おそろいのシャツは今日まで八月尽/小麦
夕景に飛び込んで来し赤とんぼ/小麦
プチ家出して少年と赤とんぼ/藻六
路地裏のこれも秋灯赤提灯/藻六
夕方の母の在所や走り蕎麦/沓九郎
陽の落ちてゆるりと秋の顔を出す/沓九郎
夏休み終わりて混み合う始発バス/上田
精を出し老女一服ななかまど/按庵
外野手にとんぼを払ふ責め苦あり/勝行
弦月や家路をたどる靴の音/柑子
真直ぐが好き空が好き蜻蛉は/U太
 
 
山口勝行評
見舞客絶えて窓辺に赤蜻蛉/仁誠
今回の最優秀句としたこの句、夕方の寂しい病棟、窓ガラス越しに外を見ている患者、ガラスを伝うようにして舞う赤とんぼ。情景が上手く描かれている。患者の心象風景はいかなるものか、いろいろと想像されます。ただ、(絶えて)を(絶えし)としたい。「月白や見知らぬ路地へ遠回り」。季語は『月白(つきしろ)』で秋、月が出る前の空が白むひと時のこと。『月』は秋に清(さや)けさが極まるので秋の季語。その他の季節は『春の月』『夏の月』『冬の月』となります。
 
U太の「真直ぐが好き空が好き蜻蛉(とんぼう)は」。これ、七五五を五七五に。「蜻蛉は真直ぐが好き空が好き」にと入れ替えました。同じく「鉦叩きのふのつづき叩きけり」は、助動詞の使い方について、今まさに叩いているよということで(けり)を(をり)にと添削しました。
 
柑子の「虫の音やヒゲ剃りの手を暫し止め」。句意はよく伝わりますが、上五が下五の(止め)に直接的に結びつくので切字の(や)を(に)に。(や)では句が一旦切れてしまいます。
 
藻六の「プチ家出して少年と赤とんぼ」。赤とんぼの少し淋しげな風景と、家出少年の像を重ねて、「プチ家出せし少年や赤とんぼ」と改めたい。
 
按庵の「河内節小さく流れ地蔵盆」。(小さく)に首をひねりました。作者によれば、本番前の練習なので、近所迷惑を考えて小さい音で、とのこと。着目はいいので、そのことが分かるように、例えば「本番前」「前日」「練習」などの言葉を取り入れ、推敲し直してください。
 
上田の「夏休み終わりて込み合う始発バス」。五八五の字余り。字余り即ダメではありませんが、逆に、う~ん、この句なら字余りもいたしかたない、と思わせるだけのものが必要。まずは五七五に収めることを考えてください。もう一句、「夕立にひまわりの花笑顔咲く」、(夕立)と(ひまわり)の季重なり。また(花)には(咲く)が含まれ、逆に(咲く)には(花)が含まれます。その意味で(花咲く)という表現は出来るだけ避けたい。
 
増田の「胡弓引く手の汗みずく風の盆」。着眼点はいいのですが、折角の、あの哀愁と情緒たっぷりの風の盆、(汗みずく)を(汗ばみて)とし、語感に配慮しました。違いは何度か反芻してみてください。ついでながら汗は夏、風の盆は秋の季語です。
 
「秋天や歩幅の広くなりにけり」の沓九郎の句。この句も前の柑子と同じく上五と下五の(広くなり)は密接に関連しているので、(秋天や)を(秋天に)と改めました。
 
一筋の「中天を切り裂きやんま独航す」。二席の「すいと来て」の句と共に秀逸。わたくしは両方に点を入れました。この作者、蜻蛉がよほど好きとみうけられます。
 
小麦の「おそろいのシャツは今日まで八月尽」。(尽)というのは月末のことで、情景は分かりますが、さてこのおそろいのシャツの正体は? 夫婦、恋人同士、兄弟、友人、いろいろ考えられます。もっと具体的に詠んでみてはどうでしょうか。
 
 
 句会を終えてひと言 
 
気分が今ひとつ乗らなかったけど、わっしゃの句を特選にとってくれた人がいて、いっぺんに気が晴れました。上田さん、ありがとう。やっぱりナンですな、句会の最大のカンフル剤は点でごわす。ガハハ。仁誠の「一礼に愁思断ち切り朝稽古」を特選に。けだるい残暑の続く毎日、この前向きの姿勢がいいですなぁ。ファイト~!だ。自信作は「河内節小さく流れ地蔵盆」。この句、上田の他からも点が。(小さく流れ)がキモ、オクターブは高低、音量は大小。やっぱり分かる人には分かるんだなぁ。わっしゃ嬉し~い!(按庵)
 
今回より本田改め柑子(こうじ)です。先月に続き、今月も三句とっていただきました。嬉しい限りです。蜻蛉、家の周りでいつも見かけるんですが、いざ句をとなるとなかなか出来ませんでした。一筋の「すいと来てすすいと去りぬ鬼やんま」、見事の一言です。ヒゲを剃っている時に虫の音が。暫らく聞き入っていました。その時の句「虫の音やヒゲ剃りの手を暫し止め」、体験そのままを詠みました。(柑子)
 
異形、異種というのは孤独なもの、そんな感慨を抱かせる勝行先生の「宇宙人めくかまきりの貌(かお)淋しめる」を特選に。別にこれ、あっしが異種というんじゃないけど。自信作は「まろうどの政治なんぞを語る秋」、これ0点。今日按庵の隣りに座ったら、何やらブツブツと文句ばかり呟いてて、そのうるさいこと。それが自分に点が入った途端、ニコニコ顔で上機嫌に。ホント分かりやすい奴っちゃ。このブログの読者にアンケートしたら、「会ったことないけど、小麦さんの句は好き、按庵さんは面白そう。けど、仁誠さんは虫が好かん」という声が圧倒的だった。仁誠には、こうした読者の声に真摯に耳を傾けてもらいたい。アンケートのサンプル数? …い、一名です。(藻六)
 
相変わらず切字が二つあったり、季重なりがあったり、賑やかでいろんなことがある句会でありんす。鬼やんまを追いかけた子供時代の記憶から、「中天を切り裂きやんま独航す」と詠んでみたけど、好評のようでよかった。あの飛ぶ早さ、まさに感動もんである。特選には迷ったけど「おしゃべりな赤ランドセル鰯雲(小麦)」を。ま、これからトンボの句はこのオイラにおまかせください。(一筋)
 
久しぶりに参加しました。来る度に、言葉というのはすごく奥が深くて難しいと痛感します。少しづつでも憶えて、みなさんに近づきたいと思います。按庵の「河内節小さく流れ地蔵盆」、わたしはこの(小さく流れ)にひかれました。山間の、小さな村の祭りを想像しました。一点も入らなかったわたしの「帰り道停留所舞う赤とんぼ」。もっと推敲が必要ですよね。勝行先生の仰しゃる千回は無理としても、十回くらいは口の中で反芻するよう努めます。(上田)
 
またまた仁誠ですかぁ? あちきも二句取っちゃったけどぉ。上手なんですね、句のつくり方が、仁誠さんは(フン)。今回は久しぶりにU太の句を特選にとりました。「鉦叩きのふのつづき叩きけり」。毎晩鳴いているあれ、昨日の続きだったんですね、けっこう律儀なんだ、鉦叩は。ランドセルをしょった小学生の女の子たち、新学期が始まって、またまた帰ってまいりました。通学中のおしゃべり、空には秋の鰯雲が広がっています。そこで「おしゃべりな赤ランドセル鰯雲」。小さくとも女子は女子、みんなおしゃべりが大好き。あちきは無口だけど。(小麦)
 
今日は不作ではなかったですか。私もそうですが、みんな夏バテじゃないのかな。勝行先生の「潮騒に紛れず虫の音高し」。いいですなぁ、先生は夏バテしないんですかね、切ない、秋の海辺の夜景がパッと浮かびます。自信作は、いくら年が経って周りの景色が変わっても、昔のままの空ととんぼ。それを詠んだ「とんぼ舞う昔と同じ空見上げ」。この句、誰れもとってくれなかったけど、いいんです、みんな夏バテで句の善し悪しも分からなくなってんだから。もう少し涼しくなったら、あの句よかったなぁと思うはず。(沓九郎)
 
久しぶりの句会で“美しい日本語”に、これまた久しぶりに触れることができ、楽しい一夜でした。「婀娜(あだ)めく」「月白」「走り蕎麦」、どれも素敵な日本語、もっともっと精通したい、そう思いました。藻六の「鉄棒にしがみつきたる残暑かな」。ふるさとの、小学校の、夕日に沈む校庭と鉄棒が思い出されました。郷愁に酔いました。9月1日の深夜、弾丸ツアーで風の盆を見てきました。その時の句、「胡弓引く手の汗みずく風の盆」、勝行先生に(汗みずく)を(汗ばみて)と添削していただきました。風の盆のイメージを大切にした、言葉への微妙な配慮、大変勉強になりました。(増田)
 
やっぱりトリはこの仁誠ですかね(エッヘン)。最近思うことは、実体験を基に具体的に句作りするのが良いということ。しかし出来上がりにはいつも不満一杯。勝行先生の添削を参考に、より精進したい。特選にしたのは評価が高かった一筋の「すいと来てすすいと去りぬ鬼やんま」。トンボはまえにしか進まない、そのイメージそのままが俳句になったようで、佳句といえます。「月白や見知らぬ路地へ遠回り」。この句、月白のもと、駅からの帰り道を変えて、路地へと遠回り。するといつしかいつもと違う風景の中に月が出て、風情のある一時でした。これで2連勝、次回は包囲網がきつくなると思いますが、必ず突破してみせます。(仁誠)
 
 
 次回の予定 
 
【日 時】 2012年10月13日(土) 18:00~
【会 場】 こどもNPOピンポンハウス
【兼 題】 『』を含む当季雑詠5句
 

↑このページのトップヘ