HANABIリレーインタビュー その⑨
参茶による藻六インタビュー
参茶による藻六インタビュー
9月某日、参茶奢りの中華料理店にて
参茶「今日はよろしく」
藻六「はいな、はいな。でさ、参茶ちゃん、おすすめの星野源聴いたぞ。7泊8日のCDで」
参茶「そりゃそりゃ。よかったでしょ、あれ」
藻六「1回目は小さな音で聴いたのよね、そしたら何歌ってんだかさっぱり分からなんだ。で2回目は大音量にしたら家族に叱られた。それから3回目を中の下でかけてみたら、少し分かったような気がした。詩人だな、あの人」
参茶「そうです、メロディは単調だけど、歌詞が心に沁みてくる」
藻六「参茶ちゃんはどう引かれるの、あれに。一度聞いてみたいな、参茶ちゃんの星野源論」
参茶「あのね、今日はアタシがインタビュアー、訊ねる役なんだ。それに、その参茶ちゃんというの、どうにかならんのか、気になる」
藻六「ハハ、一度言ってみたかったのよ、茶ちゃんって。ちゃんづけで呼んじゃ嫌よと茶々が言い、チャチャチャ~ン!」
参茶「(バカだこいつ)」
参茶「じゃ藻六に対する第1問!」
藻六「ちょい待ち、その質問、いくつあるの」
参茶「ま、一応5つばかり考えてきた」
藻六「じゃその第3問からいって。俳句は省略の世界だから短くいかにゃ。さ、さ、第3問プリーズ!」
参茶「(クソッ)第3問、藻六流俳句のつくり方」
藻六「いきあたりばったり! あっしの生き方と同じ」
参茶「それじゃ身も蓋もない、少しはインタビュアーの立場も考えろ」
藻六「だよね、じゃさ、実際の句でいくか。この前の句会(9月8日)に出した5句の内で。まずさ、残暑で1句作ろうと思ったわけよ。これ秋の季語で、今年の残暑は厳しかったからなぁ」
参茶「うん、うん、それで?」
藻六「頭の中で残暑、残暑って繰り返すんだけど、一向に浮かんでこない。早く涼しくなれよとか、もういい加減にしてくれとか、そんなんばっか。そこで発想の大転換を図ったわけ」
参茶「どう転換するのよ、それ」
藻六「残暑の身になるのよ、あっしが」
参茶「そんなんなれんだろが」
藻六「そこをなるのよ、成りきるんだ。オレは残暑だ、ほら、どこから見ても、残暑ざんしょ!」
参茶「(やっぱり、バカだ)」
藻六「すると別の風景が見えてくる。オレは嫌われ者の残暑だけど、こんなオレにだって生きる権利はあるんだっ!」
参茶「はぁ~?」
藻六「何しろ一年に1回きりだからさ。残暑にしたって一日も長くこの世にとどまりたい、そうした残暑の気持ちが分かるようになる。で生き残りをかけて『しがみつく』んだ。次、どこにしがみつくか。人間だったら家族とか仕事とか趣味とかあるけど、何しろ残暑だからそんなのない。だろ?」
参茶「うん、まぁ(何のことだ、これ?)」
藻六「そんな時、たまたまバス停の鉄柱にさわったのよ。そしたら熱かった。そうか、こういう処かとピンときた。そういや、小学生の頃、逆上がりでよく鉄棒にしがみついてたよなぁ。で『鉄棒』と、こうなる」
参茶「成程ね、それで、残暑、しがみつく、鉄棒で一句か」
藻六「そう、『鉄棒にしがみつきたる残暑かな』、どう、名句ざんしょ?」
参茶「(バカ丸出し)ノーコメント、今日は」
藻六「同じ句会でこんなんもある。マンガ読んでて『まろうど』という言葉を知ったのよ。恥ずかしながら知らなかった。これ、まれに来る人という意味らしいけど、いいよね、言葉の響きが何ともいえん。すっかり気に入っちまった」
参茶「確かに柔らかい感じがする」
藻六「だろ、でこの言葉使って一句できないか、そう思った。すると、まれに来る人か、そういえば学生時代そんな奴いたよなとなる。そいつね、来ると一方的に喋りまくって、じゃサヨナラまたなって。それ思い出した。じゃ話題は何かとなると、今は秋だから政治とか哲学かなと。これが仕事とか恋愛だと、別の季節になるような気がする。で、『まろうどの政治なんぞを語る秋』。これなんか、実際に見たり聴いたり感じたりじゃなく、まろうどという言葉から生まれた。どう、名句でしょ?」
参茶「ノーコメント」
藻六「句会じゃ残暑が3点で、まろうどが0点か、もうちょっと入っていいよな。いくら何でも0点はないだろ。ね、どう思う、参茶は」
参茶「くどい! ノーコメント」
藻六「かんがえてみれば参茶もまろうどだよね、句会に顔出すの年に二、三回だろ」
参茶「(ギクッ!)」
藻六「改名したら。岡田参茶改めマロード・サンチャ!」
参茶「はい、第4問。花火句会の会員の人物評と句について」
藻六「人物評はパス。あっしは争いは好まん人やから」
参茶「(よく言うよ、トラブルメーカーのくせして)」
藻六「何か言った?」
参茶「ナンも言ってない」
藻六「もちろん興味はあるよ。この人どういう仕事してんのかなぁとか何考えてるのかなとか。どういう性格の人間だろうかとか。俳句仲間なんだから、俳句以外のことはどうでもいいんだけどね」
参茶「そりゃそうだ、関係ない」
藻六「けど興味はある、人間だからさ。それでいろいろ想像したりするんだ。例えばよ、ごく浅いつき合いだけど、あっしなりの参茶像はある、勝手なイメージで」
参茶「それ、どんなの」
藻六「聞きたい?」
参茶「聞きたい、気になる」
藻六「じゃちょっとだけ。あのさ、人間をさ、誰れもが人生劇場の演者だとするとね、人間の数だけのいろんなタイプがあるわけだ。そこをカルカチュアライズしてみると自己陶酔型もあるよね。自分は素晴らしい、こんな自分をよく見ろ、分かる奴が分かりゃいい、観客は自分についてくりゃいいんだというような」
参茶「あるだろうね、それは」
藻六「一方でさ、観客のことが気になって気になってのもいると思うのよ。舞台の上で演じながら、あのカップルはもっと寄りそった方がいいとか、あの人は退屈そうとか、後ろの方で立っている人に横の人が椅子譲ったらいいのになとか。でね、参茶はこっちの方。これ、どっちがいいということじゃなくてさ」
参茶「周りに気を使うタイプというわけか、アタシは」
藻六「そ。そいでさ、何が気になって何にどう気を使うか、そこにその人なりのこだわり、独特の味わいがある」
参茶「その独特を聞いてみたいね、アタシとしては」
藻六「う~ん、当然といや当然だけど、人間も50、60ともなるといろんな経験を経てきてるから、人間の弱さ、つらさ、痛みが分かってる。そこから生まれる気配り、優しさ、思いやり、そんな感じかな。同じ経験や苦労を重ねても、そうならない人もいる」
参茶「それ、買い被り」
藻六「モチよ、ヨイショしてんの。よいしょ! どっこいしょ!」
参茶「(クソッ)」
藻六「で、どうよ、あっしの参茶像? ご本人としては」
参茶「ノーコメント! 今日のテーマはアタシじゃなくて、アナタ」
藻六「ハハ、そりゃ分かってるけど、あっしなんかより参茶の方が面白そうだもんなぁ。でさ、参茶のこのタイプはあまり損得を考えないから、身近な人を結構ハラハラドキドキさせたり、時に顔をしかめさせたりするんだ。それでもやってけるのは、きっと奥さんとか家族の愛、支えだろね。これ、会ったことないけど、ご家族への、よいしょ! どっこいしょ!」
参茶「もういい、本題に戻れよ! 人物評はやめにして仲間の句について」
藻六「いつも感心させられてる、それぞれいい句をつくるよね。ただ誰れのどんな句って言われると、忘れっぽくなってるんで、直ぐにはでてこないけど」
参茶「じゃ最近のでいったら」
藻六「う~ん、
小指のみ繋ぐカップル春の宵(沓九郎)
冷酒を長く含みて本を読む(按庵)
かな。どっちも特選にとらせてもらった。理由はブログに載ってるはずだから、それ見てよ。ほかに憶えてるのは、
静々と屋根のつららが剣となる(参茶)
この句も特選にとらせてもらったよな、確か」
参茶「別にインタビュアーがアタシだからって、気を使わなくていい」
藻六「そんなんするか。あのさ、句会ってあとで分かることだけど、これがいいと思って特選にするだろ。それから作者が名乗ってびっくりすることが時々ある。えっ、これ、あんさんの句! ほんとにあんさん作ったの?」
参茶「あるだろね、そんなことも」
藻六「あって当然だよな。人間毎日生まれ変わってるともいえるんだから。この参茶の句なんか、その典型。自分でもそう思うだろ」
参茶「ま、少しは」
藻六「それまでの句と全然違う。思うに、これ、きっと参茶もどっかでバランスをとらにゃいかんから、時々気を使いすぎる自分が嫌になったり疲れたりして、星野源なんか聴いて自分を慰めてる。分かるよなぁ、この気持ってもんよ。あの歌、自分だけの世界にこもってるもんな、でもっとストレスが溜まると、チクショー、あのヤローなんて呟く。この句、そんな時にポコッと生まれたんじゃないのか。真夜中にひっそりと殺意を研ぐみたいな、そんなミステリアスな雰囲気があって、そこが気に入ったんだ。ね、違う?」
参茶「答える気、な~し」
藻六「意外性とか変化、こういうのも句会の面白さの一つだよな。ふ~っ、えらい寄り道をしちゃった。次、いこ」
参茶「じゃ第5問、藻六の代表句を二つ三つ紹介して」
藻六「そりゃ無理」
参茶「はぁ~?」
藻六「俳句始めて8年、その間7、8百句は作ってるだろ。全部名句ばかりだから、選ぶなんて無理」
参茶「(何が名句だ、自己陶酔型だな、こいつ)」
藻六「何か言った?」
参茶「いや。そこを何とか、でないと格好つかん。最近の、ほんの二つ、三つでいいんだから」
藻六「しゃあないなぁ。う~ん最近のねぇ、あの~、いかん、でてこん!」
参茶「はあ?」
藻六「わ、忘れた! あの、昔のでいい、年とるとさ、昔のしかでてこんのよ」
参茶「ハイ、ハイ、どうぞ、どうぞ(ふ~っ、やっとれん)」
藻六「では、俳句始めたばっかの、8年前の句で、
春は今夜行列車の一両目
ためらひを脱ぎすて恋の薄暑かな
う~ん、いい句だなぁ。あの、これ、誰れが作ったの?」
参茶「では今日はこれで」
藻六「あれ、もうおしまい? 第1問と第2問が無いけど、ま、いいか。で、それは何だったのさ」
参茶「第1問は8年前か、花火句会発足のいきさつ、第2問はこれからの花火句会について」
藻六「何だ、そんなことか。その答えなら簡単よ、第1問は忘れた、第2問は分からん、だ」
参茶「(ふ~っ)」
藻六「それより参茶さんよぉ、あっしは『エピソード』の中の『布団』が気に入ったけど、あなたの星野源論聞かせてよ。源ちゃんについて語り合おうよ、そっちの奢りで。安い焼鳥屋でいいからさぁ」
参茶「何が源ちゃんだ。あのね、そういう時は言い出した方が払うんだろが。せいぜいが割り勘!」
藻六「いいよ、飲み代くらいあっしでも払える。けど、本当にそれでいいのか。気配りはどうした。それじゃ参茶が参茶でなくなっちまうんだぞ。焼鳥屋の飲み代くらいで、自分が自分でなくなっていいのかっ、もっと自分を大事にしろっ」
参茶「(ヤレ、ヤレ、訳の分からん爺さんだぜ、困ったもんだ)」
藻六「何か言った?」
参茶「言ってない。それ考えときます。じゃ、今日はこれで」
藻六「こちらこそ、どうもありがとうございました。焼鳥屋、ヨロシク~!」
インタビューを終わって(参茶の独り言)
会話のキャッチボールが変な私、投げたつもりが届かず、気合い入れて投げれば方向違いの暴投。こんな私の力量をわかっているモロクさん。この日まずはこの参茶をキャッチャーよろしく座らせ、ストライクゾーンに投げては戻しのブーメラン投法。さらにはバッターボックスに私を立たせ、見事なボケとツッコミの、一人二役以上の名調子。おかげで笑いこけて眉間の皺がとれ、人相も良くなりました。お礼に焼き鳥で一杯おごります。
次回は原藻六が河村仁誠にインタビューします。
次回の予定
【日 時】 2012年10月13日(土) 18:00~
【会 場】 こどもNPOピンポンハウス
【兼 題】 『柿』を含む当季雑詠5句