【日 時】 2012年1月28日(土)
【会 場】 こどもNPOピンポンハウス
【出席者】 勝行先生、小麦、沓九郎、仁誠、一筋、増田、、藻六、
本田、按庵、山田、上田(以上11名)
【投句者】 参茶、U太、木上(以上3名)
【兼 題】 「初笑」を含む当季雑詠5句
今年最初の句会。前回の増田に続き、山田さん、上田さんの2女史、有松在住の本田氏が新メンバーとして参加、新春にふさわしい賑やかで、華やいだ句会となりました。
新投句者木上さん(女性らしい)も加わって、選句はもう大変。得点争いは熾烈を極めました。果たしてその激戦を制したのは? その結果は次に見ていただくとして、選句の大切さと選句能力の無さを痛感させられた次第。そこへ勝行先生からすかさず喝、「選句もまた句なり!」。そんなん言われてもなぁ、こちとら句を作るのに手一杯、選句なんて、ようせん。
飲み会になったら、参茶が鰤大根ぎっしりの大鍋をさげて参入、なんでも母上のお手前とか。味がしみ込んで実に美味、全員有難くいただきました、深謝。
沓九郎が熟成三年の古酒を持参、日本酒なんだけど少し紹興酒に似た変わった味、三年寝かせるとこうなるのかぁとこれも美味しく飲ませていただきました、感謝。
あれっ、今頃気が付いたけど、増田以降の新メンバーの名前、全員『田』だ。う~ん、こりゃどうしたこと田、不思議田、驚い田、こんなこともあるん田なぁ。
一席
街道の標(しるべ)となりし冬木立/一筋
かざす手の生業(たつき)とりどり焚火かな/藻六
三席
さいころの六ばかり出る初笑/U太
今月の入点句
5点句
もの忘れ指摘しあって初笑/一筋
4点句
長幼の序に従ひて炉火囲む/藻六
3点句
壁の染み隠せる高さや初暦/仁誠
着ぶくれてこそしっくりと屋台酒/小麦
雪積もりポストの口が無口なり/参茶
大歳の旗のみ揺れる漁港かな/按庵
2点句
さやうなら言うためにだけ冬銀河/U太
手袋と手袋の手のすぐ離れ/U太
目薬の頬に伝へる霜夜かな/U太
冬晴れて門前に買ふ鳩の餌/沓九郎
はしゃぎ来る孫見て厳父初笑/沓九郎
嬰児(みどりご)の黒目がちなる初笑/小麦
初写真遺影の父も加わりて/小麦
春着丈伸びて少女となりにけり/仁誠
青い眼の露店冷やかし初詣/仁誠
きっかけは女房の寝言初笑/一筋
本年も半月過ぎたか小豆粥/増田
雪だるま朝日をあびてふくわらい/上田
テーマパーク閑散として二日かな/按庵
幽閉の咎人(とがにん)かくや雪ごもり/藻六
1点句
観劇の惚(ほう)けを宥(なだ)め寒灯(かんともし)/勝行
焚火して帰船を待てる漁師妻/勝行
一ッ寸の雪に乱るる都心かな/勝行
幸せの全きカタチ寒卵/小麦
前向いて後ろを向いて日向ぼこ/小麦
初刷りを受け取りこの身引き締まる/増田
去年今年湯豆腐つつき笑顔咲く/増田
終電のにぎわい着ぶくれ酒の息/一筋
北風の気まま眺むる道祖神/一筋
おふくろのブリ大根よ季語またげ/参茶
夕ぐれにからだをつつむ寒さかな/本田
復興の兆し見えつつ初笑/木上
山口賞
街道の標(しるべ)となりし冬木立/一筋
長幼の序に従ひて炉火囲む/藻六
山口勝行評
新しい方々、ようこそ。自然が折にふれ人間に呼びかけている、それに応えるのが俳句です。季語はその、応えていくための大切なキーワード。俳句を始める以上、最低一年は続けてみて、春夏秋冬正月、この日本の5季の季語を、ひととおり知ることが大切です。
さて、今回は句の数が多いので、少し駆け足で講評します。
季語の「初笑」、動詞の時は「初笑い」、名詞は「初笑」です。来月の兼題『下萌』も同様ですので、注意してください。
正月というので初のつく言葉が多く見られました。ただ「初写真」「初刷」は季語として認められていますが、山田の「初滑り」はスキーシーズン到来の初滑りとも解釈されるので、正月の季語ではありません。季重なりも散見されました。「雪だるま朝日をあびてふくわらい(上田)」の(雪だるま)と(ふくわらい)、「初夢や三日もたてば忘れ酒(参茶)」の(初夢)と(三日)、「去年今年湯豆腐つつき笑顔咲く(増田)」の(去年今年)と(湯豆腐)、季重なりが全て駄目とはいえませんが要注意です。ただ「おふくろのブリ大根よ季語またげ(参茶)」の(ブリ大根)は固有名詞ですから、季重なりではありません。助詞の使い方にも気を配ってください。本田の(夕ぐれに)は(夕ぐれて)、U太の(頬に伝へる)は(頬に伝はる)、木上の(兆し見えつつ)は(兆しの見えて)。仁誠の「壁の染み隠せる高さや初暦」の句、染みの高さと初暦の長さを詠みたかったとは思うのですが、「壁の染み隠す高さに初暦」にと添削しました。長い短いにかかわらず、暦は動かせますから。小麦の「前向いて後ろを向いて日向ぼこ」は(日向ぼこ)を(大焚火)に。日向ぼこは体を動かさないと思うので。沓九郎の「はしゃぎ来る孫見て厳父初笑」、(厳父)を孫から見ての(爺の)にと置き代えました。厳父が作者の父なのか、作者自身が厳父なのか迷ったので。藻六の「かざす手の生業(たつき)とりどり焚火かな」は、「かざす手の生活(くらし)とりどりなる焚火」に。生業は(なりわい)と読むのが一般的ですし、この句の場合体言止めの方が余韻が強いと思われるので。わたくしも点を入れた按庵の「大歳の旗のみ揺れる漁港かな」、(揺れる)を(揺るる)と添削しました。いずれの場合も、口の中で繰り返してみてください、違いが分かるはずです。参茶の「雪積もりポストの口が無口なり」の句、(口が無口)と、口、口と続くのが気になりました。推敲が必要です。
山口賞に選んだ、一筋の「冬木立」と藻六の「長幼の序」の二句、光景と家族それぞれの面から、どちらにも日本の原風景を見るような趣きがあり、懐かしさが感じられた。
句会を終えてひと言
今日はやったぜ! と思いきや、二席だとぉ~。と思いきや、藻六の集計ミスで一席同着だとぉ~、どないなっとるねん。この人、火にかけた銀杏を忘れて黒焦げにするわ、最近おかしいし、ボケてんじゃないの、要注意、みなさん気をつけましょう。同着とはいえ一席は一席、その上、推敲に推敲を重ねてきた「街道の標となりし冬木立」で山口賞も。いやぁ、オイラ、感激! 特選にしたのは参茶の「雪積もりポストの口が無口なり」、この句、ポストを人間の姿に重ね合わせたとこが愉快。「北風の気まま眺むる道祖神」が今日の自信句。真冬の冷たい風も、こんな見方をすると、楽しい、かな?(一筋)
新しい方がみえて、多くの句から選ぶのにちょっととまどいました。けど、嬉しいとまどいです。U太の「さいころの六ばかり出る初笑」を特選に。この句、説明的なところが皆無で、ひたすら感性に訴えてくる、そこが気に入りました。「かまぼこを入れるの忘れ三ヶ日」わたしのこの句に誰れも点を入れてくれませんでしたが、いいんです、今年もドジなスタートで。気楽にいこ、そう思っとります。(按庵)
初めての句会で慌しかったが、いろんな句が出されて、入門書とは一味違ってよいと思った。勝行先生の指導も、直接教えていただけるので為になりました。私は生活を詠んだ句が好きですので、藻六の「かざす手の生業とりどり焚火かな」に生活者の匂いを感じ、特選にしました。私の「初もうでひいたみくじにほほゆるめ」、大吉を喜ぶ、これもまた初笑の一つということで作った句です。(本田)
新年はじめての句会、素人ながら秀句が多いと思った。年末年始の晴れやかさの影で不況や震災など、必ずしも「晴れやかならざる」世相もあり、こうした明暗共に詠み込めるのが俳句の魅力ですね。U太の「さやうなら言うためにだけ冬銀河」に点を入れたけど、どんな「さやうなら」だったのか、興味津々、あれこれ想像させます。新聞を生業としているので、「初刷りを受け取りこの身引き締まる」が自信作、元旦号をしっかりと届けてくれた配達さんに感謝! 今年も仕事がんばります。(増田)
高度すぎるのか、理解できない句が多々あったので、自分なりに意味が分かった句を選句しました。按庵の「テーマパーク閑散として二日かな」、これ、自分の経験した光景そのものだったので特選に。時間がなくて苦し紛れに出した句、「白銀の風をまといて初滑り」、「白銀」も「初滑り」も歳時記にはないということです。まずは季語の勉強ですよね。(山田)
花火句会3年目、去年からずっと下り坂、ここらで足に力を入れて、登りに転じたい。新しい人も来て、もっと頑張らねば。藻六の「長幼の序に従ひて炉火囲む」、長幼の序という、聞かなくなって久しい、我家でも縁のない言葉に会えた。正月早々こんな風景に出会えれば、1年気持ちよく過ごせそう。俳句暦で壁の染みを隠し、ちょっと申し訳ないとも思ったが、まぁいいかと詠んだのが「壁の染み隠せる高さや初暦」。この句、3点どまりだったけど、みんな、もっと俳句暦買おうよ、トイレットペーパーにはならんけど、何かと役に立つよ。(仁誠)
初参加で、句づくりにすごく苦労しました。それでも、自信句とまでは言いませんが、「雪だるま朝日をあびてふくわらい」に点が入ったので、とても嬉しかった。特選句は一筋の「もの忘れ指摘しあって初笑」。まだその年齢? ではありませんが、すごく気持ちが分かる気がしたので(上田)
本日は5句全部に点をもらいました、エッヘン。特選にしたのは、またまたU太の「さいころの六ばかり出る初笑」。六ばかりというのはあんまり無いとは思うけど、それと初笑の組み合わせが面白い。あたしゃの「着ぶくれてこそしっくりと屋台酒」、これ、しがないおじさん達が屋台酒を飲んでいた風景。この句に藻六が特選を入れてくれた、やっぱりな、しがない同士で通じ合うんだわさ。(小麦)
新鮮ですねぇ、新しい人が三人もいて。みなさん、頑張って続けてほしい。今回の特選はほのぼのとした風景を感じて、一筋の「もの忘れ指摘しあって初笑」に。自信作は「冬晴れて門前に買ふ鳩の餌」、この句、京都の東本願寺で詠んだもの。点はあまり入らなかったけど、勝行先生が選んでくれたので、よしとします。(沓九郎)
一席同着と山口賞、今年最初の句会は絶好のスタート。今年は辰年、どうせ龍頭蛇尾だって? フン、そういう憎まれ口は勝ってから言ってほしい。あっしの場合は、始めよければ終わりよし、この勢いで連戦連勝だぁ。勝行先生が、俳句は勝ち負けじゃない、むしろ点が入らない方が自分の俳句について深く考察できて良いと仰るけど、やっぱ点が入ると嬉しいし~ィ、入らないとガックリだし~ィ。特選にしたのは小麦の「着ぶくれてこそしっくりと屋台酒」。そうなんです、これぞおじさんの美学、着ぶくれてなきゃアカンのです、この場合。山口賞をもらった「長幼の序に従ひて炉火囲む」、30年前くらいに泊まった冬の合掌村、囲炉裏の特等席にその家の長老が鎮座していました。この句について按庵が、長幼の序をいちばん弁えない奴がよく言うよ、と突っ込んできましたが、ま、その反省も込めた一句でして…。集計ミスと銀杏黒焦げ焼死事件? えっ、そんなことあったの。(藻六)
次回の予定
【日時】2012年2月11日(土) PM6:00~
【会場】こどもNPOピンポンハウス(名古屋市緑区作の山町)
【兼題】『下萌(したもえ)』を含む当季雑詠5句
飛込み参加大歓迎!!
◆参加ご希望の方は、兼題1句を含む当季雑詠5句をご用意ください。
◆事前のご連絡は不要です、当日会場に直接お越しください。
◆参加料は1000円です。
投句の受付
◆投句料は不要、投句される方は、メールにてお願いいたします。
◆作者名は本名でも俳号でもかまいません。
◆投句数は5句以内でお願いいたします。
◆締切りは2月9日(木)とさせていただきます。
◆投句いただいた作品の内、句会での入点句は、次回のブログにて発表させて
いただきます。
◆受付メールアドレス:haikuhanabikukai-aichi@yahoo.co.jp